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第一話

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王妃様のお茶会は特別なものだ。選ばれた令嬢だけが招待される。高位貴族が中心だが、中には特技を持っているために声をかけられた中位貴族も混ざっている。
「さぁ、みなさん、お茶会を始めましょう」
王妃様は、王子を3人王女を3人生んだが、若々しくて、いくつになっても美しかった。
王妃様は最近悩みがあった。それは王女の婚約についてだ。上2人はそれぞれふさわしい相手と結婚している。問題は、末の王女ミラルカだ。まだ幼く、4歳になったばかり。
親の贔屓目ではなく、美しい娘で、物覚えもいい。
将来が楽しみでしかたなかった。
その王女の婚約者を王妃様は探していた。
上2人は外国に嫁いだため、末の王女は国内で相手を探すつもりでいた。
そのためもあり、王妃様のお茶会は普段より回数が増えていた。

「王妃様のお茶会かぁ」
レディオナは、会場も見えはしない、王宮の広大な庭の目立たぬ場所にある小屋の中で、お茶会を想像していた。
「一回くらい間違いでいいから、行ってみたいな」
レディオナは、自分に与えられた昼ご飯と格闘中だった。パンとスープなのだが、カビくさいパンはやたら固いのだ。なかなか噛み切れない。
スープは何の味もしないが、パンを浸すにはちょうどいい。
レディオナは物心ついたときから、この小屋で1人だったし、三食与えられる食事もずっと同じものだった。

不満はない。なぜなら、レディオナはみんなが同じような食事をしていると思っていたし、自分は、この小屋に住んでいた庭師の娘だと思っている。誰も教えてくれないから、推測なのだが、庭師が亡くなった後も行く当てのない自分をお情けでここに置いてくれていると思っていた。
ただ、毎日1人で話し相手が1人もいないのはさみしかった。
王妃様のお茶会に参加できるなんて思っていなかったが、憧れはあった。

レディオナはもうすぐ7歳になる地味な娘だ。
髪はよくいるミルクティー色、瞳は灰色。その上、栄養状態が悪いため、少女らしい丸みはなかった。
着ている服は、庭師の古着で
ブカブカな上、ひどく汚れていた。
洗濯しても汚れは取れなかった。

小屋の中にはそんな服しかなかった。
あとは3冊の絵本があった。
レディオナのために用意されたものではなさそうだった。レディオナが3歳のときにはもうボロボロだった。
でも、その3冊はレディオナの宝物だった。妖精の絵本、王子様の絵本、冒険の絵本。
レディオナは誰にも教わらないから、文字が読めない。絵本の絵から内容を想像して楽しんでいた。

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