上 下
10 / 10

第十話

しおりを挟む
ミラルカは、王妃様を見つけて、質問攻めにしようとしていた。
ところが、ミラルカが
「レディオナお姉様はどうされているのですか?」
と言うと、手紙を見せられた。
見事な筆跡だった。あの噂話が本当なのか疑うほど、美しい文字。
高い教養を伺わせる文字だった。
そして、帝国でレディオナがどれだけ大切にされているか、幸せに暮らしているかがよくわかった。
ミラルカ王女はほっとした。

「ミルは何も心配しなくていいのよ。ハルトと仲良くなって、もっといろんなことを学びなさい」
ミラルカは、レディオナお姉様のように
国のためになる王女になろうと誓った。

「レディオナ。ちょっと町に遊びに行かないか?」
皇帝の言葉とは思えない。レディオナはだんだん慣れてきたけれど、カーン皇帝はお気楽すぎる。やっぱり血にまみれた皇帝っていう感じがどこにもない。
「行きますけど、用事はありませんよ」
「デートに誘ってるのに、レオナは冷たいな」
最近たまにレオナと呼ばれる。
なんだか照れくさい。
「デートはもっとロマンチックに誘ってください」
「薔薇の花とか?」
皇帝はどこから出したのか、真っ赤な薔薇を差し出す。
レディオナは赤くなりながら、受け取った。

デートは、なんだかんだで楽しかった。
肩にいるリルディがたまに不機嫌になる。
「僕の方が先に結婚したのに、あいつ生意気じゃない?」
ふふふと笑いながら、レディオナは可愛いヤキモチがなんだかうれしかった。
「この店に用がある」
皇帝が珍しく真面目な顔をしていた。
そこは装身具店。大変女性に人気の有名店だ。
ドレスもアクセサリーもたくさん買ってもらっている。
これ以上はいらないと言いかけたところ、皇帝は店員に命じた。
「注文の品を見せてくれ」
店員が開いた箱には、お揃いの指輪。
それは、結婚指輪だった。

「まだ早いが、これは俺の誓いだ。
レディオナ。俺と人生を一緒に歩いてくれないか?」
レディオナは知らず、泣いてた。
もうずっとずっと前から探していた。
この人だったんだ。
ここが自分の居場所だったんだ。
カーンとレディオナは互いに指輪をはめ合った。

7年後、美しく育ちすぎたレディオナにまた恋に落とされる哀れで幸せな皇帝は、その後は戦争を仕掛けることなく、唯一の妃と生涯幸せに暮らしたという。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...