5 / 10
第五話
しおりを挟む
ソフィの力があまりに強すぎるから、みんな驚いていた。ソフィはどうしよう、と思った。
おばあさんとの約束を破ってしまった。
よくわからないまま、ギルドに来てしまったのは失敗だった。
こんなに大勢の人に魔法のことがばれてしまった。これではごまかせそうにない。
「急ぎ国王陛下にお伝えせねばならない」
騒ぎを聞きつけたのか、年配の男性が出てきた。
ギルドの受け付けのお姉さんがほっとした顔をする。ギルドのえらい人にちがいない、とソフィは思った。
「あ、あの。私はたいしたことはできません」
「私はこんな強い光魔法を見たことがない。君はおそらく聖女だ。国王陛下の保護のもと、その力を使うのだ。すでに先触れは出した。すぐに城に向かおう」
「ギルド長。出発前にソフィ様の服など、少し整えた方がよいと思います」
受け付けのお姉さんが言った。ギルド長とは、やはりえらい人なんだろう、とソフィは思った。
「それもそうだな。ミーム。風呂と服を頼む。悪いが何か貸してやってくれ」
「かしこまりました」
そこからのミームさんの行動は素早かった。
お風呂に入れられて、身体中擦られ、乾かしてからクリームを全身に塗られた。臭い服から、新しい素敵なワンピースを貸してもらった。
軽くお化粧もしてもらう。
「ソフィ様。化粧映えしますね。我ながらいい出来です」
たしかに、鏡の中の自分はまるで別人みたいにソフィには見えた。
馬車が用意され、ギルド長とふたり、王宮へと出発した。
「ソフィ様はどこの出身でいらっしゃいますか?」
ギルド長の口調が丁寧すぎて、ソフィはかえって怖くなった。
「カタルゴ村です。でも、1人助けることができませんでした。私は聖女なんかじゃないです。人殺しです」
「ソフィ様。あなたの力は他の誰にもないものです。そのあなたが助けられなかったのなら、どうしようもなかったのです」
ソフィは涙が出てきた。泣いてもマークは帰ってこないのに。思っていたよりマークの死はソフィの心を深く傷つけていた。
おばあさんとの約束を破ってしまった。
よくわからないまま、ギルドに来てしまったのは失敗だった。
こんなに大勢の人に魔法のことがばれてしまった。これではごまかせそうにない。
「急ぎ国王陛下にお伝えせねばならない」
騒ぎを聞きつけたのか、年配の男性が出てきた。
ギルドの受け付けのお姉さんがほっとした顔をする。ギルドのえらい人にちがいない、とソフィは思った。
「あ、あの。私はたいしたことはできません」
「私はこんな強い光魔法を見たことがない。君はおそらく聖女だ。国王陛下の保護のもと、その力を使うのだ。すでに先触れは出した。すぐに城に向かおう」
「ギルド長。出発前にソフィ様の服など、少し整えた方がよいと思います」
受け付けのお姉さんが言った。ギルド長とは、やはりえらい人なんだろう、とソフィは思った。
「それもそうだな。ミーム。風呂と服を頼む。悪いが何か貸してやってくれ」
「かしこまりました」
そこからのミームさんの行動は素早かった。
お風呂に入れられて、身体中擦られ、乾かしてからクリームを全身に塗られた。臭い服から、新しい素敵なワンピースを貸してもらった。
軽くお化粧もしてもらう。
「ソフィ様。化粧映えしますね。我ながらいい出来です」
たしかに、鏡の中の自分はまるで別人みたいにソフィには見えた。
馬車が用意され、ギルド長とふたり、王宮へと出発した。
「ソフィ様はどこの出身でいらっしゃいますか?」
ギルド長の口調が丁寧すぎて、ソフィはかえって怖くなった。
「カタルゴ村です。でも、1人助けることができませんでした。私は聖女なんかじゃないです。人殺しです」
「ソフィ様。あなたの力は他の誰にもないものです。そのあなたが助けられなかったのなら、どうしようもなかったのです」
ソフィは涙が出てきた。泣いてもマークは帰ってこないのに。思っていたよりマークの死はソフィの心を深く傷つけていた。
22
あなたにおすすめの小説
聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います
菜花
ファンタジー
ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。
木山楽斗
恋愛
平民であるフェルーナは、類稀なる魔法使いとしての才を持っており、聖女に就任することになった。
しかしそんな彼女に待っていたのは、冷遇の日々だった。平民が聖女になることを許せない者達によって、彼女は虐げられていたのだ。
さらにフェルーナには、本来聖女が受け取るはずの報酬がほとんど与えられていなかった。
聖女としての忙しさと責任に見合わないような給与には、流石のフェルーナも抗議せざるを得なかった。
しかし抗議に対しては、「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」といった心無い言葉が返ってくるだけだった。
それを受けて、フェルーナは聖女をやめることにした。元々歓迎されていなかった彼女を止める者はおらず、それは受け入れられたのだった。
だがその後、王国は大きく傾くことになった。
フェルーナが優秀な聖女であったため、その代わりが務まる者はいなかったのだ。
さらにはフェルーナへの仕打ちも流出して、結果として多くの国民から反感を招く状況になっていた。
これを重く見た王族達は、フェルーナに再び聖女に就任するように頼み込んだ。
しかしフェルーナは、それを受け入れなかった。これまでひどい仕打ちをしてきた者達を助ける気には、ならなかったのである。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
召喚された聖女はこの世界の平民ですが?家に帰らせていただきます!
碧井 汐桜香
ファンタジー
召喚された聖女は、この世界の平民でした。
バレないように異世界から召喚された聖女のふりをしながら、家に帰る機会を見計らって……。
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる