【完結】冷たい手の熱

ここ

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3歳の雪乃の世界には、狭いアパートと母1人しかいなかった。
雪乃は数日前から帰って来ない母を必死に待っていた。
お腹が空いて空いて、雪乃は何度か泣いたけれど、それで変わることは何もなかった。水道の水を飲み、なんとか意識を保っていた。でも、それも限界だ。
意識が徐々に朦朧としてきた。
そんなとき、車が止まる音がした。
母かもしれない。雪乃の予想は当たった。

アパートの鍵を開けて、母が入ってきた。疲れた顔をして、ピリピリしている。
こんなときは話しかけてはいけない、雪乃はさんざん学んだはずなのに、空腹が判断を誤らせた。
「お母さん、お腹が空いたよ」
母は、ギロリと雪乃を睨んだ。
「誰のおかげで暮らしていると思ってるの。お前みたいに悪い子に食べさせる物は何もないよ。部屋にいてぬくぬくしてたんだろ。お前にふさわしいのはここじゃない」
そう言い放った母は、雪乃をつかまえて、アパートのベランダに出した。
「反省しなさい」
そう言うと窓の鍵を閉めて、部屋からも出て行ってしまう。

「お母さん!お母さん!置いていかないで!」
最後の力を振り絞って叫んだが、無情にも母の乗った車は走り去ってしまった。
半袖短パンで、真冬の夜のベランダに放り出された雪乃は自分を抱きしめた。歯の根が合わなくてガチガチと音がする。
服は今着ている物しか持っていなかった。どの季節もこの姿だ。
汚れているし、とても臭い。でも、雪乃にはその服を着るか裸でいるかのどちらかしかない。

あまりの寒さと空腹に、雪乃の意識はどんどん遠ざかっていった。
あぁ、やっと、神様のお迎えが来るんだ。
いい子にしてたら、優しい神様が迎えに来てくれる。機嫌のいいときに母が見ていたテレビをこっそり見ていたら、そう言っていた。
雪乃は生まれてきてはいけなかった。
それは物心ついた時から、ずっと母に言われ続けていた。
だから、雪乃のいるべき場所はここではないのだ。
そう思いながら、目を閉じた。
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