【完結】偏愛ラビリンス

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第四話

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アルトは今日こそ、セリンダに本当の気持ちを話そうと決めた。そうしないとセリンダは他の誰かと結婚してしまう。そんなの絶対嫌だ。猶予はないのだ。けれど、最近の美しすぎるセリンダにちゃんと話せる自信がなかった。
「あら、リスト公爵令息よ。ため息も絵になるわね」
「やだ、玉の輿ねらい?」
「そんなわけないじゃない。リスト公爵令息アルト様は、セリンダ妖精姫が意中の方なのよ」
こそこそとアルトを遠巻きに見ている貴族の令嬢たちが噂話に興じていた。
セリンダ本人以外はみんな知ってる。アルトがセリンダを好きなこと。そのために公爵家の力を使って、セリンダを慕う男性を近づけないようにしていること。
セリンダは鈍いのだ。

「セリ、話があるんだ」
呼び出すのではなく、バンダー伯爵家にやって来たアルトは顔色が悪い。
「アルト、どうしたの?具合が悪いんじゃない?」
「そりゃ、セリの顔見たら具合悪くもなるさ」
セリンダは傷ついた顔をする。アルトは下を向いた。なんでだろう。なんでこう思ってもない悪口しか言えないんだろう。9歳から全然成長していない。どんなに頭と身体を鍛えても、アルトはセリンダに素直になれない。
「これ、お土産」
セリンダは気を取り直して、アルトからのお土産を受け取った。いつものお菓子だと思って。
「見てもいい?」
セリンダが袋の中を開けると、コロンと出てきたのはペンダント。意匠はリスト公爵家の鷲の紋様、金に輝く王族の血を引くものだけが身につけられる凝った細工だ。
「え?これは‥」
「セリ、結婚してください」
アルトは必死だった。やっと言えた。セリンダの前に跪き、手を差し伸べる。この手を取ってもらえたら、自分は天国にだって行けるだろう。

「え?え?」
セリンダは大混乱した。アルトは嫌いな私と結婚したいの?うちは伯爵よ?しかも富裕でもない。貧しくもない。普通の貴族だ。
「ごめん。いつも素直になれなくて。セリのこと大好きだし、綺麗だなっていつも思ってた」
やっと言えたアルトの口はどんどん滑らかになる。セリンダは赤面した。
「セリが美味しいって顔するの大好きだし、だからいつも甘いものを探してて、詳しくなったし、セリが望むなら、なんでもする」
セリンダはどうやら聞き間違えたわけではなさそうだ、とアルトの気持ちを信じた。
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