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SECOND STAGE 華凰
創始祭3
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祭祀が始まると、広間に響くのは、どこか荘厳で静寂を破るような太鼓の音。僧侶や神官たちは一列に並び、青銅の器を掲げ、香の煙が天へと立ち上る。その煙は、まるで霧のように広がり、神聖な空気を作り出していた。
廊下の柵から身を乗り出すようにして、大広間を見下ろしていた。高い天井に吊られた無数の灯籠が淡い光を投げかけ、中央の大舞台では、色とりどりの衣装に身を包んだ要人たちが盃を交わし、歓声と笑いが響いていた。主賓として名を連ねる者たちはいずれも一国を背負う重鎮ばかりであり、その華やかさと裏腹に、空気の底には計り知れぬ緊張感が流れていた。
綾は、手すりに片手を置きながら、静かにその様子を見つめていた。彼にとってこの光景は、ただの宴ではなかった。戦で血を流すよりも、ここで交わされる言葉と視線のほうが、よほど鋭利な刃に思えた。
そんな思索の最中、不意に背後から声がかかった。
「そこの方。乗り上げると危険ですよ」
その声は穏やかだったが、確かな芯を持っていた。振り返ると、そこには一人の男が立っていた。年若く見えるが、目元には深い思慮が宿っている。青と白を基調とした衣を着た彼の袖口には、水の紋が織り込まれていた。
「ご挨拶が遅れました、私の名は彭。柵は決して安全ではない。怪我をしたら元も子もない」
そう言って、彼は綾に深々と一礼した。綾はわずかに驚いた。噂では耳にしていたが、この男があの穏和な統治で知られる彭だというのか。自らを「小心者」と称していたが、その佇まいには一切の迷いがなく、言葉の端々に理と礼の調和があった。
「舞を披露する前に、舞台の様子を一目見ておこうと、そっと上がらせてもらいました」
彭はそう言って、共に柵越しに舞台を見やる。彼の瞳は遠くを見つめながらも、どこか懐かしさと誇らしさを含んでいた。大広間に響く笑い声とは裏腹に、彼の胸中には、この場がいかに人心を試す場であるかを理解している者の静けさがあった。綾はその横顔を見ながら、少しだけ身を引いた。彭との会話は、静かに、しかし芯のあるやりとりだった。綾はその立ち居振る舞いに微かな警戒を解きながらも、舞台下で交錯する各国の動静を観察し続けていた。廊下の手すり越しに見下ろす景色は相変わらず賑やかで、華やかな宴の最中でありながら、言葉の端々に探り合いが隠されていることを如実に物語っていた。
ふと、その静謐な空気に一筋の違和が差し込んだ。遠くから軽やかで弾むような足音が近づいてくる。祭祀の場に不釣り合いなほど、足取りが軽い。綾が彭の隣で首を傾けると、彭の表情にわずかな苦笑が浮かんだ。
「おや、来ましたね」
「いたいた、こんなところに真面目くさって立ってるとは思わなかったよ、彭~」
その言葉に応じるように、後方から明るい声が響いた。
綾が振り返ると、そこには一人の人物が、まるで湯けむり旅館から抜け出してきたような軽い雰囲気で立っていた。場の緊張感をまるで気にする様子もなく、口元には絶えず笑みを浮かべ、手には小ぶりな煙管が揺れていた。
その姿に、周囲の空気が一瞬たゆむ。まるで濃霧の中にひととき差し込んだ陽光のように、場の気配がふっと緩んだようにも思えた。
「こんなに堅苦しい空間にいるなんて、彭も変わったねぇ。舞いの前に肩が凝るよ?」
彭は微かに息を吐きながら、それでも柔らかく相手を迎えた。綾は、会話のやり取りに割って入ることはせず、一歩引いた位置で様子を見守っていた。舞台の華やかさが揺らぐ一瞬、綾の視線はただ一点に釘付けとなった。和服に煙管、あまりに異質で、あまりにも記憶の中のままの姿。あれは、白蓮だった。鼓動がひときわ強くなる。喧騒の海のなかで、彼の姿だけが現実味を帯び、他のすべてが夢のように遠のいた。言葉では形容できない感情が、胸の奥底からせり上がってくる。
「……白蓮……?」
かすかに漏れた声は、誰の耳にも届かぬような微音だった。しかし白蓮は、それに反応したのか、しなかったのか。気怠げに片眉を上げると、薄く笑みを浮かべて紫煙をくゆらせた。
「やぁ、まさかこんなところで君に会うとはねぇ。運命ってやつかな?」
まるで通りすがりの知人にでも声をかけるような、軽薄な口ぶりだった。再会の重みを一身に背負った綾とは対照的に、その態度には一片の感情も読み取れなかった。綾は胸の内に広がる虚無をどうすることもできず、言葉を探すように口を動かす。
「……本当に、おまえなのか……」
問いに返るのは沈黙。白蓮の視線はもう綾に向けられていなかった。代わりに傍らの彭に目配せをすると、顎を僅かに動かして階下を示す。
「さてと、楽しいものは見尽くしたし、次へ行くとしようか。」
「お待ちを……!」
綾は一歩踏み出しかけたが、その足は宙を彷徨い、地を踏みしめることはなかった。白蓮は一言も発さず、軽やかな足取りで階段を降りていく。その背中には、再会の余韻も名残惜しさも、何ひとつ宿していなかった。
舞台の照明が強まり、歓声が再び耳に届く。だが綾の内には、白蓮が残した余波だけが鮮明に残っていた。
「……これが、あの白蓮なのか……?」
指先の震えが止まらなかった。過去が今と交わるその刹那、綾の世界にひび割れが走った。それは再会ではない。再確認にすらならない。ただ、あるひとつの幻のような存在が、己の人生を過ぎ去っただけだった。
綾の足が、無意識に階段へと向かっていた。白蓮の後ろ姿が、まるで夢の続きのように視界に焼き付いている。追わなければならない――その衝動に突き動かされるまま、足音を抑えず、階段の縁に手をかけた瞬間、鋭い声が背中を打った。
「おい!そこは関係者以外、立ち入り禁止だ!」
警告が届いた。しかしその言葉は、綾の耳に届いた時点でもう遅かった。全身が火照り、血が沸騰するような感覚のまま、彼は一段を飛び越えるように駆け降りていった。まるで、自らの理性すら斬り捨てるような勢いで。
「止まれッ!」
警備が軽く震えた気配があった。が、それすらも綾の動きには及ばなかった。彼の視線はただ、白蓮の後ろ姿に吸い寄せられていた。しかし、次の瞬間だった。足が止まったわけではない。止められたのだ。何もない空間から、喉元に冷気が這い上がってきた。
「……!」
刃はない。だが、確かに“そこ”にあった。風すら感じぬ一閃の気配。視線を落とすと、喉元に浮かんでいるはずの“見えない刃”が、ありもしないのに明確に知覚された。
「もう一歩、踏み出してたら……」
白蓮の声が、階段の途中から響いた。振り返らずに、背中越しに語るその声は、いつも通りの軽口のようでありながら、どこか底冷えするような重みを帯びていた。
「君の大事な喉、なくなってたかもねぇ?」
綾は言葉を返せなかった。体が、意思とは別に硬直していた。視界が細くなるほどの緊張が首筋に絡みつく。それは、記憶の中の白蓮ではなかった。あの頃の笑顔も、無邪気さも、今の彼にはなかった。
「何をしてるの!」
ルナが駆け下りてくる音が背後から迫った。だが綾は、その場に釘付けのまま動けない。目の前にいるのは、白蓮だった。ただの懐かしき過去の亡霊ではない。“今”の、何か別の存在だった。
「またね、綾坊」
白蓮はその一言だけを残して、紫煙の尾を揺らしながら再び階段を下りていった。まるで何事もなかったかのように、悠然と。
刃の気配は、彼の足取りと共に霧散していった。残された綾の喉には、冷たくも鮮烈な“実在しない痛み”だけが残った。ジットの手が肩に触れる頃には、綾の胸中は、怒りとも恐怖ともつかぬ感情で渦を巻いていた。
その日を境に、綾の中の何かが変わった。白蓮は、もはや懐かしさで語れる存在ではなかった
廊下の柵から身を乗り出すようにして、大広間を見下ろしていた。高い天井に吊られた無数の灯籠が淡い光を投げかけ、中央の大舞台では、色とりどりの衣装に身を包んだ要人たちが盃を交わし、歓声と笑いが響いていた。主賓として名を連ねる者たちはいずれも一国を背負う重鎮ばかりであり、その華やかさと裏腹に、空気の底には計り知れぬ緊張感が流れていた。
綾は、手すりに片手を置きながら、静かにその様子を見つめていた。彼にとってこの光景は、ただの宴ではなかった。戦で血を流すよりも、ここで交わされる言葉と視線のほうが、よほど鋭利な刃に思えた。
そんな思索の最中、不意に背後から声がかかった。
「そこの方。乗り上げると危険ですよ」
その声は穏やかだったが、確かな芯を持っていた。振り返ると、そこには一人の男が立っていた。年若く見えるが、目元には深い思慮が宿っている。青と白を基調とした衣を着た彼の袖口には、水の紋が織り込まれていた。
「ご挨拶が遅れました、私の名は彭。柵は決して安全ではない。怪我をしたら元も子もない」
そう言って、彼は綾に深々と一礼した。綾はわずかに驚いた。噂では耳にしていたが、この男があの穏和な統治で知られる彭だというのか。自らを「小心者」と称していたが、その佇まいには一切の迷いがなく、言葉の端々に理と礼の調和があった。
「舞を披露する前に、舞台の様子を一目見ておこうと、そっと上がらせてもらいました」
彭はそう言って、共に柵越しに舞台を見やる。彼の瞳は遠くを見つめながらも、どこか懐かしさと誇らしさを含んでいた。大広間に響く笑い声とは裏腹に、彼の胸中には、この場がいかに人心を試す場であるかを理解している者の静けさがあった。綾はその横顔を見ながら、少しだけ身を引いた。彭との会話は、静かに、しかし芯のあるやりとりだった。綾はその立ち居振る舞いに微かな警戒を解きながらも、舞台下で交錯する各国の動静を観察し続けていた。廊下の手すり越しに見下ろす景色は相変わらず賑やかで、華やかな宴の最中でありながら、言葉の端々に探り合いが隠されていることを如実に物語っていた。
ふと、その静謐な空気に一筋の違和が差し込んだ。遠くから軽やかで弾むような足音が近づいてくる。祭祀の場に不釣り合いなほど、足取りが軽い。綾が彭の隣で首を傾けると、彭の表情にわずかな苦笑が浮かんだ。
「おや、来ましたね」
「いたいた、こんなところに真面目くさって立ってるとは思わなかったよ、彭~」
その言葉に応じるように、後方から明るい声が響いた。
綾が振り返ると、そこには一人の人物が、まるで湯けむり旅館から抜け出してきたような軽い雰囲気で立っていた。場の緊張感をまるで気にする様子もなく、口元には絶えず笑みを浮かべ、手には小ぶりな煙管が揺れていた。
その姿に、周囲の空気が一瞬たゆむ。まるで濃霧の中にひととき差し込んだ陽光のように、場の気配がふっと緩んだようにも思えた。
「こんなに堅苦しい空間にいるなんて、彭も変わったねぇ。舞いの前に肩が凝るよ?」
彭は微かに息を吐きながら、それでも柔らかく相手を迎えた。綾は、会話のやり取りに割って入ることはせず、一歩引いた位置で様子を見守っていた。舞台の華やかさが揺らぐ一瞬、綾の視線はただ一点に釘付けとなった。和服に煙管、あまりに異質で、あまりにも記憶の中のままの姿。あれは、白蓮だった。鼓動がひときわ強くなる。喧騒の海のなかで、彼の姿だけが現実味を帯び、他のすべてが夢のように遠のいた。言葉では形容できない感情が、胸の奥底からせり上がってくる。
「……白蓮……?」
かすかに漏れた声は、誰の耳にも届かぬような微音だった。しかし白蓮は、それに反応したのか、しなかったのか。気怠げに片眉を上げると、薄く笑みを浮かべて紫煙をくゆらせた。
「やぁ、まさかこんなところで君に会うとはねぇ。運命ってやつかな?」
まるで通りすがりの知人にでも声をかけるような、軽薄な口ぶりだった。再会の重みを一身に背負った綾とは対照的に、その態度には一片の感情も読み取れなかった。綾は胸の内に広がる虚無をどうすることもできず、言葉を探すように口を動かす。
「……本当に、おまえなのか……」
問いに返るのは沈黙。白蓮の視線はもう綾に向けられていなかった。代わりに傍らの彭に目配せをすると、顎を僅かに動かして階下を示す。
「さてと、楽しいものは見尽くしたし、次へ行くとしようか。」
「お待ちを……!」
綾は一歩踏み出しかけたが、その足は宙を彷徨い、地を踏みしめることはなかった。白蓮は一言も発さず、軽やかな足取りで階段を降りていく。その背中には、再会の余韻も名残惜しさも、何ひとつ宿していなかった。
舞台の照明が強まり、歓声が再び耳に届く。だが綾の内には、白蓮が残した余波だけが鮮明に残っていた。
「……これが、あの白蓮なのか……?」
指先の震えが止まらなかった。過去が今と交わるその刹那、綾の世界にひび割れが走った。それは再会ではない。再確認にすらならない。ただ、あるひとつの幻のような存在が、己の人生を過ぎ去っただけだった。
綾の足が、無意識に階段へと向かっていた。白蓮の後ろ姿が、まるで夢の続きのように視界に焼き付いている。追わなければならない――その衝動に突き動かされるまま、足音を抑えず、階段の縁に手をかけた瞬間、鋭い声が背中を打った。
「おい!そこは関係者以外、立ち入り禁止だ!」
警告が届いた。しかしその言葉は、綾の耳に届いた時点でもう遅かった。全身が火照り、血が沸騰するような感覚のまま、彼は一段を飛び越えるように駆け降りていった。まるで、自らの理性すら斬り捨てるような勢いで。
「止まれッ!」
警備が軽く震えた気配があった。が、それすらも綾の動きには及ばなかった。彼の視線はただ、白蓮の後ろ姿に吸い寄せられていた。しかし、次の瞬間だった。足が止まったわけではない。止められたのだ。何もない空間から、喉元に冷気が這い上がってきた。
「……!」
刃はない。だが、確かに“そこ”にあった。風すら感じぬ一閃の気配。視線を落とすと、喉元に浮かんでいるはずの“見えない刃”が、ありもしないのに明確に知覚された。
「もう一歩、踏み出してたら……」
白蓮の声が、階段の途中から響いた。振り返らずに、背中越しに語るその声は、いつも通りの軽口のようでありながら、どこか底冷えするような重みを帯びていた。
「君の大事な喉、なくなってたかもねぇ?」
綾は言葉を返せなかった。体が、意思とは別に硬直していた。視界が細くなるほどの緊張が首筋に絡みつく。それは、記憶の中の白蓮ではなかった。あの頃の笑顔も、無邪気さも、今の彼にはなかった。
「何をしてるの!」
ルナが駆け下りてくる音が背後から迫った。だが綾は、その場に釘付けのまま動けない。目の前にいるのは、白蓮だった。ただの懐かしき過去の亡霊ではない。“今”の、何か別の存在だった。
「またね、綾坊」
白蓮はその一言だけを残して、紫煙の尾を揺らしながら再び階段を下りていった。まるで何事もなかったかのように、悠然と。
刃の気配は、彼の足取りと共に霧散していった。残された綾の喉には、冷たくも鮮烈な“実在しない痛み”だけが残った。ジットの手が肩に触れる頃には、綾の胸中は、怒りとも恐怖ともつかぬ感情で渦を巻いていた。
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