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校舎の幽霊
無限の階段という怪談
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薄暗い校舎の中…厳密には月明かりのような青い光で照らされ、ハッキリと写し出されている校舎の階段に俺は座っていた
無論、深夜の校舎に忍び込んでいる訳ではない。そもそも、最新技術の玉手箱であるうちの校舎に忍び込むのなんて、大怪盗でもなければ不可能だろう
そして、嬉しいことに俺は1人ではない。それも、あの怪談家の野郎ではなく、日本に留学してきた金髪蒼眼の清楚系美少女クラスメートと一緒なのだ
しかも、いまこの場には俺達以外には誰もいない
金髪清楚系美少女と、誰もいない深夜(っぽい雰囲気)の校舎の中で2人きり…何も起きないはずもなく…無事怪談に巻き込まれている
「動いた後なので、なんだか眠くなってきました。私たち、何階ぐらい上りましたっけ?」
「率先して覚えようとしていた訳ではないが、確か…20階ぐらい上っているはずだ」
「それで目立った変化は特に無し…これは、心が折れそうです。日本の超常現象は凄まじいですね」
「安心してくれ。こういうのには慣れてる」
この言葉に嘘はない。俺達が巻き込まれた異変は怪談としてはよくある話であり、誰もが聞いたことがあるような異変だからだ
今、俺達が巻き込まれている異変は3つ
『上っても変わらない階層』
『人の消えた校舎』
『外は暗いのに妙に明るい校内』
そう、俺達は今…無限階段に飲み込まれている。つまり今回は、無限階段という怪談ということだ
「私も慣れてるつもりだったんですけどね~文化圏が違うと、こうも変わるものだとは知りませんでしたよ」
そう言って、例の金髪美少女は少し困った笑顔でこちらに微笑んできた
その際、首筋からワイシャツの中へと吸い込まれる汗に目が吸い寄せられた。男として当然の行動だな
なんて考えるのは一旦止めて、ここまでの経緯を話すとしよう。といっても、怪談における経緯は対して対処法に関係しないだが…お決まりというやつだ
◇♡◇♡
chapter1
高校生活が始まるまでは、自然新しい生活に良くも悪くもドキドキするもの。しかし、1週間もすればそのドキドキは無くなる…こともなかった
入学してからの1週間は生徒同士が互いのことを知るためのレクリエーション的な授業が続いた。要は自己紹介の規模デカイ版
そして、席が近い人物とは多く関わることとなる
席に着いて最初に「これからよろしく」を言い合う相手であり、近くの人との話し合いでもその人物と話すこととなる
俺と海花のように中学からの友達がいるのなら話しは別だが、もし高校に一緒に入学した友達がいないなら、席の近い相手に話しかけるしかない
そして、俺の席は1番後ろの窓際の席…世に言う主人公ポジションという場所だ。そして、俺の隣のヒロインポジションに選ばれたのは…
「選ばれたのは、僕でした」
そう言って、我が親友、海花はニマニマと笑った。しかし、俺は全くもって美少女とかを期待していなかった…いなかった
だが、実際のところ海花と席が隣になれたのはかなり嬉しい。俺はツンデレだから口には出さないが、海花とは付き合い長いので一緒だと安心するのだ
文字通りの死線も何度も共に越えてきたのもある
今日は入学式の翌日。俺達はスマホに送られてきた専用のアプリから自分達のクラスを確認し、指定された席についた
そして、偶然お隣さんになることができた。まあ、そのことじたいは事前にアプリで確認できていたことなので当日驚きはしなかったが、気づいた当初は正直運命を感じた
しかし、俺達2人が親しく話していると周りが話しかけにくくなってしまう。そのため、普段の3割減ほどの軽いノリで俺達は話していた
しかし、俺達の心配は杞憂に終わった。俺の前の席の生徒がフランクに話しかけてきたのだ
「初めまして、わたしは『ピュ リフィエ』といいます。これからよろしくお願いしますね♪」
学生鞄を机に置き、椅子を俺達の方に向けてからそれに座って、少女はそう挨拶をしてくれた
彼女を表現するなら『典型的な純粋聖女』だ…
短い髪でポニーテールを作っている金髪に、まさに青空といった蒼色の瞳…そして、俺達に向けてくる優しさに溢れた笑顔
名前的に日本人ではないだろうが、その容姿で放つこの笑顔は多くの男子にとって猛毒となるだろう
俺も海花も美少女にキョドるタイプではないので、普通に挨拶を返して、軽い自己紹介をしあった
もちろん「俺はよく異変に巻き込まれるんだよ~」みたいな変に思われるようなことは言わなかった
だだ、海花は「世界中の怪談が好きで、よく調べている」ぐらいのことは言っていた
俺の前の席なので、背後から俺達の怪談話がよく聞こえてくるだろうから、それを事前に伝えることができた
おそらく海花その布石ぐらいにしか考えていなかっただろうが、返ってきた言葉に俺達は驚いた
「わたしも、ヨーロッパの怪談話には詳しいんです。お2人とは仲良くできそうですね」
そう言い、彼女は好奇心旺盛な瞳で俺達のことを見つめてきた。そして、彼女の言葉は口八丁などではなく、ちゃんとヨーロッパの怪談に詳しかった
ヨーロッパの怪談と言っても、基本的には誰もが聞いたことがあるようなファンタジーチックなものが多い。切り裂きジャックやネッシーなどが王道らしい
だが、それとは別にヨーロッパは宗教的な神秘との結び付きが強く、自然と「魔ナル者」を払い除ける術を日常的におこなっており。無意識に異変から身を守っていることが多いらしい
そして、例に漏れずリフィエもそれらの習慣や知識を多く持っていた。それら含めて聖女様感がより増していった
海花曰く「日本の怪異の恐ろしい点は、神が多すぎるのが原因」らしいので、祈るべき神が『八百万の神』と比べて少ないのも、怖い怪談をヨーロッパで聞かない理由の1つなのかもしれない
日本人…神に祈ろうとしても、どの神に祈れば良いのかとか分からないだろうし。神を信じていない奴が多いから、どんどん怪異に巻き込まれて怪談が増えていくのだろう
実際、俺は神社で修行を初めてから怪異に巻き込まれる回数が明確に減った
幼少期は、どこかの少年探偵が事件に巻き込まれるのと同じ感覚で怪異に巻き込まれていたが、神社に預けられてからは、1週間に1回程度に減り。今では1ヶ月に1回程度まで落ち着いた
まあ、幼少期は周りの世界があまりに狂気過ぎて、記憶が曖昧なので、幻覚とか空想とか言われてらおしまいなんだけど
話がだいぶズレてしまった。まあ、話を要約すると、俺の前の席の生徒は『ヨーロッパのどこかの国から留学してきた怪談好きの聖女様』ということだ
◇♧◇♧
chapter2
これが、俺とリフィエとの出会いの話。そして、それがどう現在に繋がるかというと、特に語れることはなかったりする
怪談とは急に始まるものであり、気づいたときにはもう遅い…要は気づいたらこうなっていた
校内をスタンプラリー形式で探検し、どんな施設があるかを知る授業があった
俺達は海花の前の席の生徒含めて4人で一緒に行動することにした
気づけば、俺ら2人以外全員消えていた
怪談の当事者の感覚なんてこんなものなのだ。むしろ、途中で異変に気づけるならこうも簡単に怪談に巻き込まれてたまるか
そこからは一緒に校内を探索した。うちの校舎はビルなので横に広い訳ではなく、縦に長い構造をしている。ということで、その階の探索はすぐに終わった
そして、別の階も探索しようと階段を下りた。最初の方は違和感に気づかなかったが、何度か下の階へ降りていくうちに気がついた…探索したすべての階層が、まったくの同じ構造だということに
ちなみに、俺らが一緒に行動しているのは吊り橋効果を狙っている訳ではない。互いにこういう状況で1人になる危険性を理解しているからだ
そこからは、いつも通り怪異の性質を調べていった。リフィエもどこか異変になれているのか、焦っている様子はなかった
むしろ、ずっと俺のことを見ていたような…まさか本当に吊り橋効果が?!
なんて考えるのは止めて。俺達が突き止めた異変の性質をまとめていこう
No.1 無限は無限でもループではない
この異変における無限はループではなく無限(推定)に続いているタイプのものだった
調査方法は簡単。ボールペンで印を付けて階段を降りた。下の階にその印はなかった。上の階に戻ると印がちゃんと書かれていた
つまり、俺達が無限と思い込んでいるだけで、実際は有限だという可能性もあるということだ
しかし、窓から下を覗いてみると底が見えないほど高かったので、少なくとも膨大な長さであることは確定している
だが、怪異に長さや距離はあまり関係ない。トリガーとなる何かをすれば、勝手に場所が変わるものだ。まあ、それがいいものであったためしはないが
No.2 存在感が皆無
この怪異…実はまったく怖い気配を感じないのだ
これは前、入学式に向かう途中に巻き込まれた『春の幽霊』のときもそうだったのだが、人の気配どころか魑魅魍魎の禍々しい気配も感じないのだ
要は、怪談的な恐怖ではないということ。日本の怪談的な恐怖ではなく、海外のリミナル的なホラーに近い感覚だ
他にも色々と試してみた。上の階からまったく同じ消火器を持ってきて、対消滅させられるか試してみたり。窓を割って消火器を外に投げてみたり…結果はすべて失敗。現実通りのことしか起こらなかった
俺達が特定した性質はこの程度。正直、他に特徴となるような性質はなかった
ちなみに、俺達は下へ下へと階段を降りるのではなく上へ上へと昇ることにした。なんか下がり過ぎると地獄に落ちそうだったからだ
まあ、上りすぎても天国に辿り着きそうだから、正直、停滞が正解な気がする
◇♤◇♤
chapter3
「回復しましたけど…これ以上昇るのは怖いですね」
怪異では物理的な常識よりも神話や宗教的な常識の方が信用できる。上は天国、下には地獄…この常識が適用されていた場合、俺達はだいぶ危ないことをしていることになる
「なら、やっぱり横の探索に力を入れるしかないな。少なくとも、天に昇る危険はないだろう」
「天に昇るのは善人の証拠ですよ」
「俺は生きていたいんだ」
『天国』に行くのも『地獄』に行くのも、もちろん他の異界に行くのだってごめんだ。今を生きるための最低条件は2つ…『生きること』と『現世にいること』なんだ
「けど、下に降りれば地獄です。これからどうします? また横の探索に戻りますか?」
「その前に確認したいことがあるんだ。それに付き合ってくれないか?」
「はい、もちろん付き合いますよ♪」
彼女からの笑顔の返事に、俺もほくそ笑みを返す。それからスマホを取り出して、あるアプリを起動する
ちなみに、異界よろしく電波は圏外だったのだが、ある程度の機能はオフラインでも使用できるアプリだったので、問題なく起動できた
起動したのは学園の専用アプリ。欠席や時間割の確認、校則や課題提出などができるアプリだ
欠席報告や課題提出は電波がなければできないが、俺の確認したい情報はオフラインでも見ることができた
(海花)曰く、怪談はあくまでも『怪異』の『談』であり、それは物語の側面も持ち合わせている
異常には巻き込まれるとして、異常の発生には必ず理由が伴っている。こじつけでもいいからそれを見つければ、あとは勝手にそれに落とし込まれる
必要なのは、物語を作ること。そのための情報を今から集める…収集先は専用アプリに入っていた『学園の起源と歴史について』の項目からだ
無論、深夜の校舎に忍び込んでいる訳ではない。そもそも、最新技術の玉手箱であるうちの校舎に忍び込むのなんて、大怪盗でもなければ不可能だろう
そして、嬉しいことに俺は1人ではない。それも、あの怪談家の野郎ではなく、日本に留学してきた金髪蒼眼の清楚系美少女クラスメートと一緒なのだ
しかも、いまこの場には俺達以外には誰もいない
金髪清楚系美少女と、誰もいない深夜(っぽい雰囲気)の校舎の中で2人きり…何も起きないはずもなく…無事怪談に巻き込まれている
「動いた後なので、なんだか眠くなってきました。私たち、何階ぐらい上りましたっけ?」
「率先して覚えようとしていた訳ではないが、確か…20階ぐらい上っているはずだ」
「それで目立った変化は特に無し…これは、心が折れそうです。日本の超常現象は凄まじいですね」
「安心してくれ。こういうのには慣れてる」
この言葉に嘘はない。俺達が巻き込まれた異変は怪談としてはよくある話であり、誰もが聞いたことがあるような異変だからだ
今、俺達が巻き込まれている異変は3つ
『上っても変わらない階層』
『人の消えた校舎』
『外は暗いのに妙に明るい校内』
そう、俺達は今…無限階段に飲み込まれている。つまり今回は、無限階段という怪談ということだ
「私も慣れてるつもりだったんですけどね~文化圏が違うと、こうも変わるものだとは知りませんでしたよ」
そう言って、例の金髪美少女は少し困った笑顔でこちらに微笑んできた
その際、首筋からワイシャツの中へと吸い込まれる汗に目が吸い寄せられた。男として当然の行動だな
なんて考えるのは一旦止めて、ここまでの経緯を話すとしよう。といっても、怪談における経緯は対して対処法に関係しないだが…お決まりというやつだ
◇♡◇♡
chapter1
高校生活が始まるまでは、自然新しい生活に良くも悪くもドキドキするもの。しかし、1週間もすればそのドキドキは無くなる…こともなかった
入学してからの1週間は生徒同士が互いのことを知るためのレクリエーション的な授業が続いた。要は自己紹介の規模デカイ版
そして、席が近い人物とは多く関わることとなる
席に着いて最初に「これからよろしく」を言い合う相手であり、近くの人との話し合いでもその人物と話すこととなる
俺と海花のように中学からの友達がいるのなら話しは別だが、もし高校に一緒に入学した友達がいないなら、席の近い相手に話しかけるしかない
そして、俺の席は1番後ろの窓際の席…世に言う主人公ポジションという場所だ。そして、俺の隣のヒロインポジションに選ばれたのは…
「選ばれたのは、僕でした」
そう言って、我が親友、海花はニマニマと笑った。しかし、俺は全くもって美少女とかを期待していなかった…いなかった
だが、実際のところ海花と席が隣になれたのはかなり嬉しい。俺はツンデレだから口には出さないが、海花とは付き合い長いので一緒だと安心するのだ
文字通りの死線も何度も共に越えてきたのもある
今日は入学式の翌日。俺達はスマホに送られてきた専用のアプリから自分達のクラスを確認し、指定された席についた
そして、偶然お隣さんになることができた。まあ、そのことじたいは事前にアプリで確認できていたことなので当日驚きはしなかったが、気づいた当初は正直運命を感じた
しかし、俺達2人が親しく話していると周りが話しかけにくくなってしまう。そのため、普段の3割減ほどの軽いノリで俺達は話していた
しかし、俺達の心配は杞憂に終わった。俺の前の席の生徒がフランクに話しかけてきたのだ
「初めまして、わたしは『ピュ リフィエ』といいます。これからよろしくお願いしますね♪」
学生鞄を机に置き、椅子を俺達の方に向けてからそれに座って、少女はそう挨拶をしてくれた
彼女を表現するなら『典型的な純粋聖女』だ…
短い髪でポニーテールを作っている金髪に、まさに青空といった蒼色の瞳…そして、俺達に向けてくる優しさに溢れた笑顔
名前的に日本人ではないだろうが、その容姿で放つこの笑顔は多くの男子にとって猛毒となるだろう
俺も海花も美少女にキョドるタイプではないので、普通に挨拶を返して、軽い自己紹介をしあった
もちろん「俺はよく異変に巻き込まれるんだよ~」みたいな変に思われるようなことは言わなかった
だだ、海花は「世界中の怪談が好きで、よく調べている」ぐらいのことは言っていた
俺の前の席なので、背後から俺達の怪談話がよく聞こえてくるだろうから、それを事前に伝えることができた
おそらく海花その布石ぐらいにしか考えていなかっただろうが、返ってきた言葉に俺達は驚いた
「わたしも、ヨーロッパの怪談話には詳しいんです。お2人とは仲良くできそうですね」
そう言い、彼女は好奇心旺盛な瞳で俺達のことを見つめてきた。そして、彼女の言葉は口八丁などではなく、ちゃんとヨーロッパの怪談に詳しかった
ヨーロッパの怪談と言っても、基本的には誰もが聞いたことがあるようなファンタジーチックなものが多い。切り裂きジャックやネッシーなどが王道らしい
だが、それとは別にヨーロッパは宗教的な神秘との結び付きが強く、自然と「魔ナル者」を払い除ける術を日常的におこなっており。無意識に異変から身を守っていることが多いらしい
そして、例に漏れずリフィエもそれらの習慣や知識を多く持っていた。それら含めて聖女様感がより増していった
海花曰く「日本の怪異の恐ろしい点は、神が多すぎるのが原因」らしいので、祈るべき神が『八百万の神』と比べて少ないのも、怖い怪談をヨーロッパで聞かない理由の1つなのかもしれない
日本人…神に祈ろうとしても、どの神に祈れば良いのかとか分からないだろうし。神を信じていない奴が多いから、どんどん怪異に巻き込まれて怪談が増えていくのだろう
実際、俺は神社で修行を初めてから怪異に巻き込まれる回数が明確に減った
幼少期は、どこかの少年探偵が事件に巻き込まれるのと同じ感覚で怪異に巻き込まれていたが、神社に預けられてからは、1週間に1回程度に減り。今では1ヶ月に1回程度まで落ち着いた
まあ、幼少期は周りの世界があまりに狂気過ぎて、記憶が曖昧なので、幻覚とか空想とか言われてらおしまいなんだけど
話がだいぶズレてしまった。まあ、話を要約すると、俺の前の席の生徒は『ヨーロッパのどこかの国から留学してきた怪談好きの聖女様』ということだ
◇♧◇♧
chapter2
これが、俺とリフィエとの出会いの話。そして、それがどう現在に繋がるかというと、特に語れることはなかったりする
怪談とは急に始まるものであり、気づいたときにはもう遅い…要は気づいたらこうなっていた
校内をスタンプラリー形式で探検し、どんな施設があるかを知る授業があった
俺達は海花の前の席の生徒含めて4人で一緒に行動することにした
気づけば、俺ら2人以外全員消えていた
怪談の当事者の感覚なんてこんなものなのだ。むしろ、途中で異変に気づけるならこうも簡単に怪談に巻き込まれてたまるか
そこからは一緒に校内を探索した。うちの校舎はビルなので横に広い訳ではなく、縦に長い構造をしている。ということで、その階の探索はすぐに終わった
そして、別の階も探索しようと階段を下りた。最初の方は違和感に気づかなかったが、何度か下の階へ降りていくうちに気がついた…探索したすべての階層が、まったくの同じ構造だということに
ちなみに、俺らが一緒に行動しているのは吊り橋効果を狙っている訳ではない。互いにこういう状況で1人になる危険性を理解しているからだ
そこからは、いつも通り怪異の性質を調べていった。リフィエもどこか異変になれているのか、焦っている様子はなかった
むしろ、ずっと俺のことを見ていたような…まさか本当に吊り橋効果が?!
なんて考えるのは止めて。俺達が突き止めた異変の性質をまとめていこう
No.1 無限は無限でもループではない
この異変における無限はループではなく無限(推定)に続いているタイプのものだった
調査方法は簡単。ボールペンで印を付けて階段を降りた。下の階にその印はなかった。上の階に戻ると印がちゃんと書かれていた
つまり、俺達が無限と思い込んでいるだけで、実際は有限だという可能性もあるということだ
しかし、窓から下を覗いてみると底が見えないほど高かったので、少なくとも膨大な長さであることは確定している
だが、怪異に長さや距離はあまり関係ない。トリガーとなる何かをすれば、勝手に場所が変わるものだ。まあ、それがいいものであったためしはないが
No.2 存在感が皆無
この怪異…実はまったく怖い気配を感じないのだ
これは前、入学式に向かう途中に巻き込まれた『春の幽霊』のときもそうだったのだが、人の気配どころか魑魅魍魎の禍々しい気配も感じないのだ
要は、怪談的な恐怖ではないということ。日本の怪談的な恐怖ではなく、海外のリミナル的なホラーに近い感覚だ
他にも色々と試してみた。上の階からまったく同じ消火器を持ってきて、対消滅させられるか試してみたり。窓を割って消火器を外に投げてみたり…結果はすべて失敗。現実通りのことしか起こらなかった
俺達が特定した性質はこの程度。正直、他に特徴となるような性質はなかった
ちなみに、俺達は下へ下へと階段を降りるのではなく上へ上へと昇ることにした。なんか下がり過ぎると地獄に落ちそうだったからだ
まあ、上りすぎても天国に辿り着きそうだから、正直、停滞が正解な気がする
◇♤◇♤
chapter3
「回復しましたけど…これ以上昇るのは怖いですね」
怪異では物理的な常識よりも神話や宗教的な常識の方が信用できる。上は天国、下には地獄…この常識が適用されていた場合、俺達はだいぶ危ないことをしていることになる
「なら、やっぱり横の探索に力を入れるしかないな。少なくとも、天に昇る危険はないだろう」
「天に昇るのは善人の証拠ですよ」
「俺は生きていたいんだ」
『天国』に行くのも『地獄』に行くのも、もちろん他の異界に行くのだってごめんだ。今を生きるための最低条件は2つ…『生きること』と『現世にいること』なんだ
「けど、下に降りれば地獄です。これからどうします? また横の探索に戻りますか?」
「その前に確認したいことがあるんだ。それに付き合ってくれないか?」
「はい、もちろん付き合いますよ♪」
彼女からの笑顔の返事に、俺もほくそ笑みを返す。それからスマホを取り出して、あるアプリを起動する
ちなみに、異界よろしく電波は圏外だったのだが、ある程度の機能はオフラインでも使用できるアプリだったので、問題なく起動できた
起動したのは学園の専用アプリ。欠席や時間割の確認、校則や課題提出などができるアプリだ
欠席報告や課題提出は電波がなければできないが、俺の確認したい情報はオフラインでも見ることができた
(海花)曰く、怪談はあくまでも『怪異』の『談』であり、それは物語の側面も持ち合わせている
異常には巻き込まれるとして、異常の発生には必ず理由が伴っている。こじつけでもいいからそれを見つければ、あとは勝手にそれに落とし込まれる
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