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第二章 美少女とはじめる、むっつりスケベの冒険

第50話 馬車の旅にトラブル発生

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今までと違い、バルキア帝国の首都では後味の悪い旅立ちとなった。

2人は気を取り直して、馬車の旅を楽しんだ。

初めての長旅。

馬車は乗合馬車で、他にも数人のお客さんが乗っている。

商人、恋人に会いに行くという冒険者、武者修行の旅をしている人…。

いろんな人の話を聞くことができて、楽しい時間を過ごすことができた。


レベル上げはできないが、鍛錬は欠かさなかった。


馬車はおよそ10日ごとに町に立ち寄る。

そこで乗客が入れ替わることもある。



順調に旅をしていたが、5つ目の町でトラブルが起こった。


乗客が御者と揉めている。

揉めているのは、イーザという女性。

恋人に会いにフォーレンまでいくと話していた冒険者だ。


「なんでだよ!
 お金はもう払ってあるはずだろ!?」

「ですから、首都にある本部から連絡がありまして、この町までの分しか支払われてないとのことなんです。」

「そんなはずはない!
 もう1度確認してみてくれ!
 ハイケという者がフォーレンまで行けるように手配をしてくれたんだ!」

イーザとは道中話をしたが、確かにそんなことを言っていた。

パーティを組んでいた恋人がフォーレンへ出兵した。

なんとしてもそばにいたくて、フォーレンまで行くことにしたそうだ。

ただ、C級冒険者である彼女にとって必要な旅費である250万ゴルを1人で貯めるのは時間がかかる。

そこでハイケという人に相談したら、彼女の健気な行動にいたく感心して、協力してくれたというのだ。

馬車の運営に知り合いがいるから、便宜をはかってくれ、しかも旅費も貸してくれたとか。

「はい。
 そのハイケ様が変更の手続きをされたようなんです。
 伝言を預かっていまして、
 
 「初めて融資する冒険者からは最初に利子分を徴収している。
  利子分を徴収し忘れていた。
  恋人への想いに感銘を受けたので利子はかなり負けておいた。
  100万は利子として徴収したので、帰ってきたら元金の150万返済よろしく。」
 
 とのことでした。

「利子が100万!?
 感心したから特別に利率は5%で返済は1年後でいいよって…。
 馬車の費用も交渉して安くしてくれるって言ってたのに…。」

「フォーレンまでの馬車代は確かに割引されています。
 うちの代表とハイケ様はお知り合いだったようで。

 イーザ様が納得いかないようであれば契約内容をもう一度伝えてくれ、とのことでしたが、聞かれますか?」 

「…ああ、頼む。」

「元金150万ゴル、月利5%で1年後が2,693,784ゴル、冒険者はリスクが高いから特別な対応をすることがあると明記してある、とのことです。」

「月利!?
 そんなバカな…。」

「…イーザ様。
 確かにひどい対応ではありますが、金貸が冒険者に5%などという金利で貸すことはありえません。  
 冒険者は死んでしまうリスクが他の人より高いですから。
 感心して、と言われたそうですが、金貸を営む人は同情するような人種ではありません。
 差し出がましいですが、無用心であったのかと。

 …余計なことを言いました。
 申し訳ございません。」

「…いや、ありがとう…。
 しかし、引き返すわけにはいかないんだ…。
 
 ここで行かないければ、ファルクにもう会えないかもしれない…。」


出兵した冒険者が魔族に殺されてしまうことは少なくない。

ゴルドさんがそう言っていた。


「ティナ、放って…おけないよね?」

「ふふ。
 ロックは女の人に甘いんだから。」

「い!?
 いや、別に女の人だからってわけじゃ…。」

「冗談よ。
 声かけてみたら?」

「ティナはすぐからかうんだから…。」

いつものやりとりをしながら、ロックとティナは揉めている2人の所へ。

「あのー。」

「…なんだ?
 今取り込んでるところなんだが…。」

「はい。
 聞こえていました。
 
 それで力になれないかと思って…。
 よかったら僕たちが馬車代を立て替えましょうか?」

「え!?
 いや、それで今痛い目をみたばかりなんだ…。

 それに、馬車が一緒だったくらいの冒険者に簡単に貸せるような金額じゃ…。」

「イーザさんの恋人はたしか有名な冒険者さんなんですよね?」

「ああ。
 S級冒険者だからな。」

「万が一の時はその方を訪ねていけば、イーザさんもいるということですよね?」

「そうだが…、それを証明するものなど何もないぞ?」

「そうですけど…、お2人の境遇が僕と似ていたもので…。」

旅の途中で話をしていてわかったのだが、実はイーザとその恋人のファルクも孤児だったのだ。

「それだけで出会って間もない他人に大金を貸すのか?
 100万ゴルだぞ?」

「私たちも出会ってばかりの人たちにとてもお世話になって、ここまで来れたの。
 だから、それこそ無用心かもしれないけど、困ってる人がいたら私たちも助けてあげたい。」

ティナは口数は少ないが、ここぞというときにいいことを言ってくれる。

「…とても申し訳ないが…、


 貸してもらえると助かる…!
 
 私はなんとしてもファルクの所へ行きたい…!」

「どうぞ!
 一緒にフォーレンへ行きましょう!」

「…すまない。
 この恩と借りたお金は…、必ず返す。」


ロックとティナは嬉しそうに微笑みあった。

そして、旅が再開された。
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