124 / 283
第三章 魔王の真実
第122話 アルカトル防衛戦⑧
しおりを挟む
【見切り】でモンスターの群勢による攻撃を効率的に捌きながら進むリッチェル。
多少のダメージは【深淵の闇】に吸収されるので、とにかくスピードを優先していく。
ただ、囲まれた状態では闇球をなかなか発動できないので、必要以上のダメージは受けないようにしなければならない。
モンスターたちも目的の鵺には近づけたくないようで、リッチェルの行く手を必死に阻む。
少し進んだところで、リッチェルの足は止まってしまった。
闇球を発動しようとするが、さっきのように他のメンバーにモンスターたちが気を取られているわけでなく、全員が自分に意識を向けている中ではやはり発動できない。
バフがかかっているため通常攻撃でも戦えているが、先へは進めない。
「[ダークネス]!」
リッチェルの周りの敵数体が暗闇状態となり、鵺を守るため一枚岩となっていたモンスターたちに綻びが生まれた。
「リッチェルさん、お願い!」
MPが回復してきたマーチの状態異常魔法が突破口を開く。
「ありがとう!
後でデートしよう!」
リッチェルは隙の生まれたモンスターたちに的確に急所攻撃を繰り出しながら、前へと進んだ。
ちなみに、コピーするスキルを変えたときに、武器を1番得意な剣に持ち替えている。
あえて暗闇状態のモンスターは残しながら倒していく。
これだけ密集した状態での[ダークネス]は効果抜群だ。
さして遠くない場所に、鵺はいた。
光を失ったモンスターが暴れて、周りが混乱している中、微動だにしていない。
「お前か!」
モンスターたちの混乱の隙をついて、闇球を発動するリッチェル。
鵺を倒せるだけのダメージは蓄積しているはず。
闇球が鵺を襲う。
「シャァぁア!」
しかし、鵺は倒れない。
【我慢強い】スキルによりダメージが10%軽減された上、異常個体でレベルが高かったため、想定よりダメージを与えられなかった。
「チッ!
思ったよりレベルが高かったか!」
すぐにトドメを刺そうと体を動かすリッチェル。
その目前に数体のマンティコアが!
「どけーー!!」
早くしなければ、鵺は【再生】により回復してしまう。
焦るリッチェルのマンティコアへの攻撃は、空を切る。
マンティコアの【影分身】だ。
分身体を囮として、本体がリッチェルに噛み付いてくる。
【深淵の闇】によりまだダメージは受けていないが、鵺を攻撃できない。
剣でマンティコアを振り払う。
マンティコアの本体がわかっているうちに追撃をしようとするリッチェル。
別のマンティコアが襲いかかってくるが、分身体と判断して意識をマンティコア本体に向ける。
「ぐあっ!?」
マンティコアの噛み付きがリッチェルの首に食い込んだ。
急所攻撃となり、急速にダメージの蓄積が増える。
影分身だと思わせて、別個体が潜んでいたのだ。
さらに、もう1体のマンティコアもリッチェルの腹部に噛み付いてきた。
振り払えず、声も出せない。
(これは…、やばい…っ!)
「リッチェル!!」
ダメージ蓄積量が限界を迎える寸前、リッチェルに食い込んでいたマンティコアたちの牙が力を失い、そして離れていった。
「グリゴ…リー…、アッサール、みんな!」
「おお。
首に噛みつかれても傷にならねえのか。
すげえな、【深淵の闇】。」
グリゴリーが緊張感なく、感想をもらす。
「おおおお!!」
アッサールが範囲攻撃の[武技]で鵺周辺の敵を蹴散らす。
「サンキュー!」
リッチェルが貯めていたダメージを闇球にかえ、鵺に放つ。
先ほどより大きな威力を秘めた闇球に鵺は耐えられず、爆散して消え去った。
「アッサール、鵺は倒せてなかったのに、【乗り移り】は!?」
息つく間も無くモンスターを相手しながら、問いかけるリッチェル。
「…突然、正気に戻った。
お前が倒してくれたのかと思った。」
「瀕死のダメージでも与えたんじゃねえか!?
倒さなくても使用者が危険を感じたら解除できるからな!」
「よかった…!
じゃあ急いで敵を倒そう!
実は、結構やばいことになってるんだ。」
「どうしたんだ!?」
「本陣がもう持たなそうなんだ!
ロックたちが本陣近くに戻って守ってるが、A級モンスターが集まってるからヤバいかもしれない!」
「…戻ろう。」
「…!
しかしアッサール!
君の【バーサーカー】は…!」
【バーサーカー】状態のアッサールは敵味方関係なく攻撃してしまう。
味方が近くにいる状態では発動できない。
かといって、発動しないと戦力は大幅に落ちる。
「…俺も、スキルを入れ替えてもらう。」
「アッサール…!
それなら、行こう!!」
仲間を殺めてしまった過去があり、贖罪のように1人で戦ってきたアッサール。
アッサールは【バーサーカー】を使い傷つきながらも1人で戦うことを、手放すことが怖かった。
スキルを入れ替えた方がいいことはわかっていても、罪を償っていると思える状況から変化することを受け入れられなかったのだ。
でも、自分でもわかっていた。
1人で戦っている状況は、罪を償っている「つもり」なだけだと。
本当に償う気があるなら、仲間と力を合わせて戦った方が良いのだと。
危機を脱した一行は、本陣へと急いだ。
多少のダメージは【深淵の闇】に吸収されるので、とにかくスピードを優先していく。
ただ、囲まれた状態では闇球をなかなか発動できないので、必要以上のダメージは受けないようにしなければならない。
モンスターたちも目的の鵺には近づけたくないようで、リッチェルの行く手を必死に阻む。
少し進んだところで、リッチェルの足は止まってしまった。
闇球を発動しようとするが、さっきのように他のメンバーにモンスターたちが気を取られているわけでなく、全員が自分に意識を向けている中ではやはり発動できない。
バフがかかっているため通常攻撃でも戦えているが、先へは進めない。
「[ダークネス]!」
リッチェルの周りの敵数体が暗闇状態となり、鵺を守るため一枚岩となっていたモンスターたちに綻びが生まれた。
「リッチェルさん、お願い!」
MPが回復してきたマーチの状態異常魔法が突破口を開く。
「ありがとう!
後でデートしよう!」
リッチェルは隙の生まれたモンスターたちに的確に急所攻撃を繰り出しながら、前へと進んだ。
ちなみに、コピーするスキルを変えたときに、武器を1番得意な剣に持ち替えている。
あえて暗闇状態のモンスターは残しながら倒していく。
これだけ密集した状態での[ダークネス]は効果抜群だ。
さして遠くない場所に、鵺はいた。
光を失ったモンスターが暴れて、周りが混乱している中、微動だにしていない。
「お前か!」
モンスターたちの混乱の隙をついて、闇球を発動するリッチェル。
鵺を倒せるだけのダメージは蓄積しているはず。
闇球が鵺を襲う。
「シャァぁア!」
しかし、鵺は倒れない。
【我慢強い】スキルによりダメージが10%軽減された上、異常個体でレベルが高かったため、想定よりダメージを与えられなかった。
「チッ!
思ったよりレベルが高かったか!」
すぐにトドメを刺そうと体を動かすリッチェル。
その目前に数体のマンティコアが!
「どけーー!!」
早くしなければ、鵺は【再生】により回復してしまう。
焦るリッチェルのマンティコアへの攻撃は、空を切る。
マンティコアの【影分身】だ。
分身体を囮として、本体がリッチェルに噛み付いてくる。
【深淵の闇】によりまだダメージは受けていないが、鵺を攻撃できない。
剣でマンティコアを振り払う。
マンティコアの本体がわかっているうちに追撃をしようとするリッチェル。
別のマンティコアが襲いかかってくるが、分身体と判断して意識をマンティコア本体に向ける。
「ぐあっ!?」
マンティコアの噛み付きがリッチェルの首に食い込んだ。
急所攻撃となり、急速にダメージの蓄積が増える。
影分身だと思わせて、別個体が潜んでいたのだ。
さらに、もう1体のマンティコアもリッチェルの腹部に噛み付いてきた。
振り払えず、声も出せない。
(これは…、やばい…っ!)
「リッチェル!!」
ダメージ蓄積量が限界を迎える寸前、リッチェルに食い込んでいたマンティコアたちの牙が力を失い、そして離れていった。
「グリゴ…リー…、アッサール、みんな!」
「おお。
首に噛みつかれても傷にならねえのか。
すげえな、【深淵の闇】。」
グリゴリーが緊張感なく、感想をもらす。
「おおおお!!」
アッサールが範囲攻撃の[武技]で鵺周辺の敵を蹴散らす。
「サンキュー!」
リッチェルが貯めていたダメージを闇球にかえ、鵺に放つ。
先ほどより大きな威力を秘めた闇球に鵺は耐えられず、爆散して消え去った。
「アッサール、鵺は倒せてなかったのに、【乗り移り】は!?」
息つく間も無くモンスターを相手しながら、問いかけるリッチェル。
「…突然、正気に戻った。
お前が倒してくれたのかと思った。」
「瀕死のダメージでも与えたんじゃねえか!?
倒さなくても使用者が危険を感じたら解除できるからな!」
「よかった…!
じゃあ急いで敵を倒そう!
実は、結構やばいことになってるんだ。」
「どうしたんだ!?」
「本陣がもう持たなそうなんだ!
ロックたちが本陣近くに戻って守ってるが、A級モンスターが集まってるからヤバいかもしれない!」
「…戻ろう。」
「…!
しかしアッサール!
君の【バーサーカー】は…!」
【バーサーカー】状態のアッサールは敵味方関係なく攻撃してしまう。
味方が近くにいる状態では発動できない。
かといって、発動しないと戦力は大幅に落ちる。
「…俺も、スキルを入れ替えてもらう。」
「アッサール…!
それなら、行こう!!」
仲間を殺めてしまった過去があり、贖罪のように1人で戦ってきたアッサール。
アッサールは【バーサーカー】を使い傷つきながらも1人で戦うことを、手放すことが怖かった。
スキルを入れ替えた方がいいことはわかっていても、罪を償っていると思える状況から変化することを受け入れられなかったのだ。
でも、自分でもわかっていた。
1人で戦っている状況は、罪を償っている「つもり」なだけだと。
本当に償う気があるなら、仲間と力を合わせて戦った方が良いのだと。
危機を脱した一行は、本陣へと急いだ。
28
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる