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第五章 最後の決戦
第262話 リッチェルとの戦い
しおりを挟む「やめて!
リッチェルさん!!」
ロックとガウスが戦っている間に、魔族となったリッチェルが暴れ回っていた。
リッチェルも涅槃珠でレベルが上限の100となっており、さらにユニークスキル【スキルコピー】で★4の強力なスキルをコピーしながら攻撃してくる。
世界最高峰の戦力が集結している戦場は、リッチェルの【スキルコピー】を使うのに最もうってつけの場所だった。
イーザ・リッチェル以外の魔族も元は冒険者であり、戻せるなら人間に戻したい。
だけど、現状ではモンスターの侵攻を止めるために倒さざるを得ない。
その理屈でいけば、イーザ・リッチェルも倒すべき相手になる。
しかし、ファルクの恋人であるイーザは元より、一緒に戦ったリッチェルのことを、ティナたちは倒す相手と割り切ることはできなかった。
ティナたちの強い希望により、リッチェルを攻撃できない冒険者たち。
その隙をうまく活かしながら攻撃してくる魔族たち。
特に猛威を奮っているのが、魔王に統括役を任されたリライサだ。
彼女のスキルは非常に珍しい構成をしていた。
++++++++++++
【弓神 ★★★★★】
【拳聖 ★★★★】
【神速 ★★★★】
【無駄骨 ★】
++++++++++++
【弓神】という弓術最高峰のユニークスキルを持ちながら、接近戦の【拳聖】も所持。
武術スキルを2種類持っている冒険者はほとんどいない。
さらに【神速】により相手との距離も思いのまま。
非常に強力なスキル構成だが、彼女を知る冒険者はここにいなかった。
その原因は、4つ目のスキル【無駄骨】。
ロックが両親に殺されそうになった原因であるこのスキルは、『経験値が取得できない』という負の効果を持っている。
スキル4つ持ちの彼女は、ロックたちと同じようにバルキアに連れてこられた。
【弓神】【剣聖】【神速】と強力なスキルが発現し期待されたが、【無駄骨】スキルが最後に発現したことで、モンスター生息域の奥地で切り捨てられた。
いくら強力なスキル持ちでも、レベルが上がらなければ戦力にはならないからだ。
ところが。
このスキルには抜け道があった。
涅槃珠でレベルをあげることができたのだ。
たまたま魔族に発見され、魔王の元に連れて行かれたリライサ。
そこで彼女は自ら進んで魔族になった。
自分を見捨てた人間に復讐したかったわけではない。
無価値と切り捨てられた自分を、魔王が『価値がある』と認めてくれたからだ。
魔王としては、涅槃珠を使ってダメなら殺せばいい、その程度の考えであった。
スキル構成を聞いて試す価値があると、思ったのだ。
レベルが上がり、魔族の中でも屈指の実力を持つようになったリライサだが、自分に自信を持つことができなかった。
責任ある役目を任せられることは怖い。
だが、魔王に見捨てられることはもっと怖い。
リライサは魔王に見限られたくない一心で、冒険者たちを攻撃した。
冒険者にとって、攻撃できないリッチェルと、神出鬼没で遠近両方の攻撃を高い威力で放ってくるリライサ、その他の魔族たちの攻撃は脅威となった。
優勢だった冒険者たちが徐々に押し返される。
そこに、ガウスを倒したロックが合流する。
「リッチェルさん…!」
魔族となり、冒険者を攻撃してくるリッチェル。
人間の時の記憶はないのだろう。
イーザとリッチェルを人間に戻したいロックたち。
彼らを攻撃することはできない。
とはいえ、放置すれば人間側に被害者が出る。
どうにかするのは、ロックの役目だ。
「【スキルスナッチ】。」
1人だけ突出して攻めてきていたリッチェルのスキルを奪うことは、難しくなかった。
リッチェルのスキルは4つ。
++++++++++++
【スキルコピー ★★★★★】
【見切り ★★★】
【経験値ボーナス ★★★】
【深淵の闇 ★★★★】
++++++++++++
全てのダメージを吸収し、そのダメージを闇玉として相手への攻撃に変えられる【深淵の闇】は、【ラッキースケベ】というリッチェルやロックにとって★5スキルよりも有用なスキルを犠牲にして手に入れたスキルだ。
ロックは自ら与えた【深淵の闇】、そして【見切り】をリッチェルから奪った。
それによりリッチェルの戦力は落ちたが、ユニークスキルである【スキルコピー】は奪えない。
イーザと違い、前線で戦うよう命じたのは、このユニークスキルがあったからだろう。
だが、ロックが2つのスキルを奪ったのには理由があった。
【深淵の闇】がなくなったことで、リッチェルにダメージを与えることができるようになった。
【見切り】によって読まれていた攻撃が、当たりやすくなった。
ロックはスキルを奪い、そしてリッチェルに斬りかかった。
「くっ!」
なんとか避けるリッチェル。
いや、避けたのではなく、ロックはわざと当たらないように攻撃したのだ。
ロックの狙いは、リッチェルの「髪の毛」。
ロックは剣で切った髪の毛を、ミラに渡した。
「[カース]。」
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