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コンビニ転生はあるのか?
地縛霊の逆?
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さてさて、それからまた数日後。
アメとハレのもとに再びテルミから連絡が来た。
ふたりに’いい話’があるというのだ。
それで、実家で日本の社会人を横目に夏休みを満喫していたはずのテルミが、張り切って研究所を訪れた。
「ふたりとももうすぐ夏休みよね?一日だけわたしのとこでバイトしてみない?」
「バイトっすか?そういえばいまのテルミ姉さんの仕事ってなぞなんですケド。夏休みが自由にとれる特殊な社会人っていったい」
「あれ、ハレちゃんにゆったことなかったっけ?あたしね、フリーランスなんだわ」
テルミがふつうのミルクティー片手にもったいぶる。
タピオカ入りはもう飽きてしまったようだ。
「フリー……ランス?ランスって槍?まさかテルミさんモンハン的な世界で?」
「フフ。知識豊富なくせして、ハレちゃんったら……」
「フリーランスって私だってなんとなくわかるよ。独立して自由に働いてるんでしょ?フリーランサーとかじゃなくて」
アメは、ネットで収集した異世界転生エピソードを類型ごとにまとめる作業をしながら、ぼそっとツッコむ。
「そう。私はフリーランスのジャーナリストをしてるの。二人みたいに自分が気になったことを調べて取材するお仕事です」
アメとハレは息がぴったり合った感嘆の声を上げた。
ハレがテンション上げ気味に手を上げる。
「ハイ、ハイ!取材なら私ぜひ行きたいとこがあって。青森の恐山でイタコの取材なんか……」
ハレの案は秒で却下された。
なぜならテルミの取材先はすでに決まっていたからだ。
でも、とテルミは思った。
「ある意味イタコだよな。あたしが今回やりたいことって」
テルミは、ふたりがコンビニ転生の話を調査していると聞いて、とても強く興味を抱いたのであった。
と言ってもテルミの着眼点は異世界転生よりも、転生したとされる店長の死因についてである。
テルミは自身の体験から、日本の労働問題に強く興味を持つようになり、小泉改革以降の企業の変化や年越し派遣村やアベノミクス以降の労働者の実態などをずっと取材してきたのである。
テルミの予想では、店長は九割がた過労死だろうとみているが、過労死した人の遺族からこの社会がどう見えるか知りたくなったのだ。
それにアメとハレを取材に同行させることでふたりに伝えたいこともある。
テルミはふたりの研究内容にあわせて、こう言った。
「異世界転生。とても興味深い現象だね。この現象を科学的に分析したりするのも面白いと思うわ。
あたしは、こんな視点もあると思うな。亡くなった人のすべてが異世界転生するわけじゃない。なぜ限られた人のみにそれが可能なのか?
たとえばそこには、亡くなった人本人の気持ちが関係していたりしないかしら?」
「ハレちゃん。そういえば地縛霊っているよね」
「うん。アメちゃん。地縛霊はこの世につよい未練を残して成仏できずに一ヶ所の場所に縛られてるかわいそうな幽霊のことだね」
「そうね。異世界転生は、もしかしたら地縛霊の逆パターンで、たとえば亡くなった人が現世で叶えれなかった願いがあったりしてさ、その後悔が魂を異世界に導くのかもよ?
遺族の方からお話しを聞ければ故人のどんな思いが異世界転生に影響を与えたのか、読み解けたりしないかしら?」
アメとハレはいつになく引き締まった顔になり、その場で直立した。
そして、声を合わせて言った。
「テルミさん、よろしくお願いします」
アメとハレのもとに再びテルミから連絡が来た。
ふたりに’いい話’があるというのだ。
それで、実家で日本の社会人を横目に夏休みを満喫していたはずのテルミが、張り切って研究所を訪れた。
「ふたりとももうすぐ夏休みよね?一日だけわたしのとこでバイトしてみない?」
「バイトっすか?そういえばいまのテルミ姉さんの仕事ってなぞなんですケド。夏休みが自由にとれる特殊な社会人っていったい」
「あれ、ハレちゃんにゆったことなかったっけ?あたしね、フリーランスなんだわ」
テルミがふつうのミルクティー片手にもったいぶる。
タピオカ入りはもう飽きてしまったようだ。
「フリー……ランス?ランスって槍?まさかテルミさんモンハン的な世界で?」
「フフ。知識豊富なくせして、ハレちゃんったら……」
「フリーランスって私だってなんとなくわかるよ。独立して自由に働いてるんでしょ?フリーランサーとかじゃなくて」
アメは、ネットで収集した異世界転生エピソードを類型ごとにまとめる作業をしながら、ぼそっとツッコむ。
「そう。私はフリーランスのジャーナリストをしてるの。二人みたいに自分が気になったことを調べて取材するお仕事です」
アメとハレは息がぴったり合った感嘆の声を上げた。
ハレがテンション上げ気味に手を上げる。
「ハイ、ハイ!取材なら私ぜひ行きたいとこがあって。青森の恐山でイタコの取材なんか……」
ハレの案は秒で却下された。
なぜならテルミの取材先はすでに決まっていたからだ。
でも、とテルミは思った。
「ある意味イタコだよな。あたしが今回やりたいことって」
テルミは、ふたりがコンビニ転生の話を調査していると聞いて、とても強く興味を抱いたのであった。
と言ってもテルミの着眼点は異世界転生よりも、転生したとされる店長の死因についてである。
テルミは自身の体験から、日本の労働問題に強く興味を持つようになり、小泉改革以降の企業の変化や年越し派遣村やアベノミクス以降の労働者の実態などをずっと取材してきたのである。
テルミの予想では、店長は九割がた過労死だろうとみているが、過労死した人の遺族からこの社会がどう見えるか知りたくなったのだ。
それにアメとハレを取材に同行させることでふたりに伝えたいこともある。
テルミはふたりの研究内容にあわせて、こう言った。
「異世界転生。とても興味深い現象だね。この現象を科学的に分析したりするのも面白いと思うわ。
あたしは、こんな視点もあると思うな。亡くなった人のすべてが異世界転生するわけじゃない。なぜ限られた人のみにそれが可能なのか?
たとえばそこには、亡くなった人本人の気持ちが関係していたりしないかしら?」
「ハレちゃん。そういえば地縛霊っているよね」
「うん。アメちゃん。地縛霊はこの世につよい未練を残して成仏できずに一ヶ所の場所に縛られてるかわいそうな幽霊のことだね」
「そうね。異世界転生は、もしかしたら地縛霊の逆パターンで、たとえば亡くなった人が現世で叶えれなかった願いがあったりしてさ、その後悔が魂を異世界に導くのかもよ?
遺族の方からお話しを聞ければ故人のどんな思いが異世界転生に影響を与えたのか、読み解けたりしないかしら?」
アメとハレはいつになく引き締まった顔になり、その場で直立した。
そして、声を合わせて言った。
「テルミさん、よろしくお願いします」
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