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闇と光の姉妹
ゼリーフライ
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数日後、赤道直下の居住区「陽」に出向するヤミとヒカリをサイバーパトロールの面々が見送った。
「メアリさんは具合がわるいみたいで、今日は顔を出していないわ」
「さいきん貧血がひどいみたいね。惑星病かしら」
メアリだけは体調不良が理由で二人を見送れなかった。
虹から陽へ。ヒカリはローバーのハンドルを握りながらぼやいた。
「はあ、赤道直下なんて。日焼けが心配ね」
ヤミはヒカリの独語を聞き流しながら外をぼんやり見ている。
まずは虹と陽のちょうど中間地点に位置する中継ポイントをめざす。
中継ポイントは海に面した港にもなっている。
そこでローバーごと船に乗り込み陽に向かうのだ。
「どっか寄り道したいね」
こんどはヤミが独語する。こんな岩だらけの路に寄り道するところなんかないだろうとヒカリはおもう。
仮に寄り道できたとして、本部のエマから定時連絡が入る。時計女と評されるエマからの連絡は必ず毎日正午きっかり同じタイミングでやって来るのだ。
虹から五〇キロほど走った地点で、二人は長い休憩タイムに入った。
ローバーはキャンピングカーのように後部に宿泊ルームを備えている。
ヤミは、タブレットコンピュータの画面でお気に入りの古い映画を見始めた。
「カワシマ・ゴロー最高」
もちろんバグスターへの適度な餌やりも忘れていない。バグスターはヤミの膝の上で丸くなっている。
栄養バーで簡単な食事を済ませたヒカリはなんとなしに丸窓から外を見た。
「あ、ゼリーフライ」
窓の外にはゼリーフライの群れが漂っている。五〇匹ほどが群れになってゆったり流れていく。
ゼリーフライとはこの惑星固有の生物で、楕円形の形をした体長一〇センチほどの軟体動物である。
重力が小さく大気の薄いこの惑星では、ゼリーフライは空中にプカプカ浮いている。詳しい生態は謎に包まれている。
「ゼリーフライって埼玉県で食べられてるおかずじゃなかった?」
ヒカリの独語にヤミが聞き返す。
「そう。それよ。埼玉県の人が発見して、ゼリーフライって名付けたんだって」
「ゼリーフライは気楽だね。あんなふうに漂っていたいよ」
「そう?」
「お姉ちゃんはなにになりたい?アンドロイド?」
「私は…フランケンシュタインみたいになりたいかな?怪物だぞー、わー」
ヒカリとヤミはけたけた笑った。
「メアリさんは具合がわるいみたいで、今日は顔を出していないわ」
「さいきん貧血がひどいみたいね。惑星病かしら」
メアリだけは体調不良が理由で二人を見送れなかった。
虹から陽へ。ヒカリはローバーのハンドルを握りながらぼやいた。
「はあ、赤道直下なんて。日焼けが心配ね」
ヤミはヒカリの独語を聞き流しながら外をぼんやり見ている。
まずは虹と陽のちょうど中間地点に位置する中継ポイントをめざす。
中継ポイントは海に面した港にもなっている。
そこでローバーごと船に乗り込み陽に向かうのだ。
「どっか寄り道したいね」
こんどはヤミが独語する。こんな岩だらけの路に寄り道するところなんかないだろうとヒカリはおもう。
仮に寄り道できたとして、本部のエマから定時連絡が入る。時計女と評されるエマからの連絡は必ず毎日正午きっかり同じタイミングでやって来るのだ。
虹から五〇キロほど走った地点で、二人は長い休憩タイムに入った。
ローバーはキャンピングカーのように後部に宿泊ルームを備えている。
ヤミは、タブレットコンピュータの画面でお気に入りの古い映画を見始めた。
「カワシマ・ゴロー最高」
もちろんバグスターへの適度な餌やりも忘れていない。バグスターはヤミの膝の上で丸くなっている。
栄養バーで簡単な食事を済ませたヒカリはなんとなしに丸窓から外を見た。
「あ、ゼリーフライ」
窓の外にはゼリーフライの群れが漂っている。五〇匹ほどが群れになってゆったり流れていく。
ゼリーフライとはこの惑星固有の生物で、楕円形の形をした体長一〇センチほどの軟体動物である。
重力が小さく大気の薄いこの惑星では、ゼリーフライは空中にプカプカ浮いている。詳しい生態は謎に包まれている。
「ゼリーフライって埼玉県で食べられてるおかずじゃなかった?」
ヒカリの独語にヤミが聞き返す。
「そう。それよ。埼玉県の人が発見して、ゼリーフライって名付けたんだって」
「ゼリーフライは気楽だね。あんなふうに漂っていたいよ」
「そう?」
「お姉ちゃんはなにになりたい?アンドロイド?」
「私は…フランケンシュタインみたいになりたいかな?怪物だぞー、わー」
ヒカリとヤミはけたけた笑った。
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