虹のアジール ~ある姉妹の惑星移住物語~

千田 陽斗(せんだ はると)

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緊張と緩和

天岩戸隠れ

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 ヤミは指を鳴らした。
「岩戸に隠れたお姉ちゃんを外に連れ出す方法思い付いた!」 
「なんだ?鏡でも見せるのか?」
 ミラグロスはぴんと来てない。
「鏡じゃないんだな。鏡なんかなくてもお姉ちゃんは自分が美人だって知ってますよ」
「ナルシスト?」
 モデスタが梟みたいに首を傾げる。
「鏡じゃないとしたら何が必要なんだい?」
 ミラグロスが問う。
「あのチャラそうな人ですよ」
 
 ピリリ、ピリリ。ミラグロスの携帯電話が鳴った。
「すまん、人と会う用事ができた。そのチャラそうな人の連絡先はモデスタに聞いてくれ」
 ミラグロスは、早足で出ていった。
 
 チャラそうな人こと、ジャックと連絡がついたのは午後四時ころだった。
 ヤミはずっと思考していた。
 なぜあのタイミングで姉は元の姿に戻ったのか?
 あのタイミングとは、ジャックが二人の前に現れたあのときだ。
 猫の姿だったヒカリはジャック目掛けて本能のまま飛び込んでいったではないか。
 あの伝説が本当だったら?
 猫に姿を変えた人が恋人の愛の抱擁で元に戻ったと言うあの伝説だ。
「伝説に当てはめて考えると、猫がお姉ちゃんで恋人があのチャラい人?趣味はまあまあだけど、そんな人ができたとすればお姉ちゃんも幸せね。彼が来たら押し入れから飛び出してくるかしら?あるいは裸で?」
 
「お姉ちゃん、ジャックさんが訪ねてきますよ」
 ヤミは襖ごしに姉に話しかけた。
 物音がした。ヒカリが押し入れの中で身動きしたようだ。
「お姉ちゃん、ごめんなさい。言い過ぎたわ。出てきて。そしておめかしをしなきゃ。恋人が来るんでしょ」   
 数分の沈黙を挟み、襖が少しだけ開いた。
 ヒカリの目が薄暗い押し入れのなかからこっちを覗いた。
「そんなんじゃないよ……」
 か細い声だったが、久しぶりに聞く姉の声だった。
「あ、あの、申し訳ないけど、ジャックさんには日を改めてもらえないかしら……」
 ジャックとは一度会ったきりとは言え不貞腐れて閉じ籠るだなんて子供じみたことをしている自分を見られたくはなかったのだ。
「うんうん。お姉ちゃん。そこからちゃんと出てきてくれたらそうしましょう」
「もう意地悪なんだから」
 ヒカリが面倒くさそうに押し入れから這い出してきた。
 なにはともあれ姉を岩戸から表に出すと言うヤミの作戦は成功である。
「押し入れのなかは真っ暗で寂しい。昔のヤミちゃんもこうだったの?」
 ヤミは、姉の目に光るものを見た。

 
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