虹のアジール ~ある姉妹の惑星移住物語~

千田 陽斗(せんだ はると)

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惑星動乱

ジャック捕まる?!

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 自由に生きたいと思う者ほど、不自由という壁に悩まされるものである。
 サイバーパトロールの面々による会議の数日後にある人物が捕まった。
 その人物は統治管理システムが集約された無人施設であるレーゲンボーゲン(ドイツ語で虹の意)の敷地近くに立ち寄ったところで、運悪く施設の自動通報システムに捕捉されて任意で同行を求められたのだ。
 ヒカリはその人物に心当たりがあるということで、彼の取り調べをガラス越しに見ることになった。
 この機械任せの街も地球のある島国よりは司法の透明性が確保されていた。
「え?ジャックさんですか?いちおうお話くらいはしたことありますけど……」
 そう、捕まったのはジャックだったのだ。この惑星でひとりなにかを探ってさ迷ってきた彼のほんとうのところは誰も知らない。 

「カメラに残ってる映像を確認してくださいよ。あくまで敷地には入ってませんよ」 ジャックは取調官にこう弁解した。
「彼はあくまであちこちを散歩していただけ。それをたまたま監視装置に見つかっただけで法はおかしていません」
 さらに弁護士が念を押した。
 取り調べ時における弁護士同伴という、地球の近代国家がリベラルだった時代の知恵を活かしてよかったな、とジャックは胸を撫でおろした。
 こういうとき、あくまで推定無罪の原則のもとで公正に話が進むのはよいことだ。
「あなたが、この惑星でいろんなことを嗅ぎ回ってるなんてウワサもあります。レーゲンボーゲンはこの居住区にとって生命線のようなもの。ほんとうになにもしていないんですか!?」 
 取調官は少し強気に質問してきた。
「待ってくれよ。とりあえずカメラの映像を調べるのが先じゃないか?だいたいあんな機械を生命線としてアテにするなんて……」
 ついジャック感情的になってしまった。
 取調官も眉をしかめる。
弁護士がジャックの話を遮る。
「とにかくだ。ジャック氏はあの施設周辺で何も不法行為はしていないはずだ。彼の言う通りカメラの映像の確認を先にしていただきたい」
 数時間後、取調官や弁護士、専門家らが集まり監視カメラの映像をチェックすることになった。
 カメラには旅行用のリュックを背負ったジャックが建物と建物の間の路地になっているところに入り込み、辺りを見回したり、ポケットから菓子のようなものを取り出し口に含む様子が撮影されていた。
 あくまで(大袈裟にも)厳密な検証の結果、ジャック氏は施設の敷地にも侵入しておらず、その他の不法行為もしていないことが判明し、ジャック氏の身柄は半日足らずで解放された。
「まったく、慣れない土地でキョロキョロするなんて誰でもあるだろう。ポケットの中の飴まで鑑定するとはめんどくせぇな、司法ってやつは」
 サイバーパトロール本部を出て、大通りをホテルがある南へ歩くジャックだった。
「そう司法はめんどくせぇものだよ。わかる。でもそれをちゃんとやらないと人権を守れないからな」
 ジャックの行く手を巨体が塞いだ。
「その制服はサイバーパトロールの人?数時間とは言えおれの人権を制限していたくせにまだなにかあるんですか?」  
「おっと、失礼。名乗るのを忘れていた。私はアイアン・サチコ。サイバーパトロールの一員ではなく個人としてあなたに協力していただきたいことがあるのだが……」
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