虹のアジール ~ある姉妹の惑星移住物語~

千田 陽斗(せんだ はると)

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後日談

悲しむ暇もないほどの

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 複数のプロジェクトはすでに進行していた。
 悲しむ暇もないほどの忙しさがあった。
 ある者は政治的啓発を、ある者は捜索活動を、むしろこれらの活動をやり遂げることが死者への弔いになるのではないかと言う気分さえあった。

 ジャックは病室で目を覚ました。
 あの場で倒れていた自分とヒカリを発見したのはルビィとモコだった。
 ジャックは二人からありのままの話を聞いた。
 いっそ心中させてくれればよいものを──。
 ジャックは唇を噛んだ。

 混乱のなか、なんとかヒカリの葬式の日程が決まった。
 故人の信仰を尊重して葬儀は教会にて執り行われた。
 仲間たちが色とりどりの花を献花すると、棺は虹色で囲われた。
 ヒカリの双子の妹であるヤミはハイネ医師に付き添われてなんとかみんなの前に立った。
「このたびは姉のためにお集まりくださりありがとうございます……。いつも私を照らしてくれた姉は新しい旅に出ました……」
 ヤミは、言葉を詰まらせながら、やっとのことで挨拶した。
 ヤミたちはひとつの光を無くしたのだ。現世を生きる者は影を見つめながら歩み続けなければならぬ。
 葬儀が終わるとサイバーパトロールの面々は粛々と自分たちの役割を遂行する日々に帰った。

 ヒカリの手にはレーゲンボーゲンのロックを解除できる鍵が握られていた。
 この鍵のお陰で虹はシステムから解放された。
 政治的な活動はいっそう盛り上がっていくが、新たな対立を生むきっかけにもなった。
 後にルビィが市民政治派、モコが保守派のオピニオンリーダーになり仲違いしていくことになるが、この対立じたいは虹の民主主義を活性させる面と分断させる面と両面あったと評されることとなる。

 ジャックも、無念さと悲しみを振り払うため行動的にならざるを得なかった。
 葬儀のときにヤミの挨拶にあった「旅立ち」という言葉を思い出すと、少しだけあの理不尽さから距離を置けるような気がした。
 死は終わりではなく旅立ち。なるほど、そんな考えもあるのかとジャックは感心した。
 ひょんなことから、ジャックはヤミとヒカリの恩人であるメアリの手紙を預かることとなった。
 メアリは、自分が死んだら手紙を開封してほしいと告げた。
 メアリの病状も悪化していくなかで、彼女にヒカリの訃報を告げることは誰も出来なかった。
 
 システムによる管理から離れ、新たな統治機構や新サイバーパトロールが再編されるなかで、エマとヤミは離脱していくことになる。
 アイアン・サチコは暫定的に虹の最高権力者となり、淡々とこの役割をこなしていくこととなり、かつての仲間たちとは疎遠になる。 

 闇市は正式なマーケットになった。エマはエマ・ショップと言う商店を開き、そこそこの規模に展開しはじめた。
 エマ・ショップは食料品や嗜好品の他に、コンサートや歌手のマネジメント事業にも手を出し、商業ロックのバンドをいくつか成功させた。
 ヤミもエマ・ショップの音楽部門で勤務する運びとなったが、彼女自身もフォーク・シンガーとしてデビューすることとなる。
 
 陽ではモデスタ、ネオン、グフタムの三人のテロリストに無期懲役の判決が下された。
 テロ集団になってしまった善く生きる会のメンバーは散り散りになり多くはひっそりと隠居した。
 ゴメスはルビィの市民政治運動を支援する傍らで、かつての仲間だったミラグロクの捜索も行った。
 
 悪意の蠢動も依然としてあり、これがさらにいくつかの騒動を生むこととなる。
 

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