まずは、あなたから幸せになる?

千田 陽斗(せんだ はると)

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不安をごまかす日々

俺の叫びが聞こえないのか? 一

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 皆が口々に自分の心霊観を喋り出した。
 ケメコはまったく霊感がないという。
 「なんか、トンネルとかで幽霊が見えやすいとかいうじゃない?よく通るトンネルがあるけど変質者しかみたことないわー」
「でもさ、ケメコも墓参りは律儀に行くだろ?」 
「そうなのよー。ミムラさんは分かってるわー。でもおじいちゃんとかは生前に遊んでもらったりしてるから。忘れちゃいけないなって思ってお墓にお供えするの。おじいちゃんの好きだったサイダーを」
 それを聞いてビジュアル系ロックが好きなトヨムラがはっとした。
 「そうなんすよ。お墓参りみたいなのって死んだ人を忘れないために行くんですよね。俺が応援してたバンドのメンバーがメジャーデビューする前に死んじゃって……。で彼に縁があったライブハウスに毎年花を持って行くんですよ」
「そこまで聞いてねーし」
 ケメコがごく小さな声で突っ込んだ。
「アユは金縛りとかはありますー」
 アユがとつぜん媚びた口調で割り込む。
 好だったバンドメンバーのため花を手向けに行くと言うトヨムラがアユには光って見えたのだ。ただし一瞬だけ。
 アユの弾んだ声に気をよくしたトヨムラはなにを思ったのか、周りに客がいるなかでメロディを口ずさみだした。
「これはさっき言ったバンドの曲で、おれが一番好きな曲なんですよ。絶望にー♪溺れそうなお前をー♪抱きしめてー♪」
 あまりにも場違いで自分に酔ったトヨムラの歌唱は、アユの心に寒風を吹かせるだけの威力があった。
 アユはトイレに駆け込んだ。
 ルカも思わずついていった。

 アユは思い切り吹き出した。



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