あの日の約束のために私は貴方の婚約者でいる

ミクリ21 (新)

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1◆アンセス視点

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僕はアンセス、記憶喪失だとつい最近気づいた。

何も思い出せないなと思って考えていたら、記憶喪失じゃないかと気づいたんだよ。

そんな僕にはカッコいい婚約者がいるんだ。

何も覚えていないけれど、セシルという素敵な男の人。

僕も男だけど同性でも何も問題ないんだって言われて、記憶のない僕はそうなんだって納得した。

セシルは偉い人らしくて、城に住んでいる。

僕も一緒にその城に住んでいるんだ。

セシルは王様という仕事をしているらしい。

城には使用人がいっぱいいて、皆いい人達ばかり。

シェフの作るご飯はとっても美味しくて、庭師が整える庭はとっても綺麗なんだ。

この城は全体的に暗くて、壁も黒くて絨毯は赤くて、なんだか不思議だけれどそういうものなんだって言われたら、記憶がない僕はやっぱりそうなんだって納得する。

周りにいる人達も不思議なんだ。

でもこの場合、多分不思議なのは僕なんだと思う。

だって、僕だけが周りと違うんだから………。

「ねぇ、セシル。どうして僕だけ角もないし、もふもふしてる部分もないし、羽もないし、尻尾もないの?」

「貴方は私の婚約者だからですよ」

そういうものだと言われてしまえば、やっぱり僕は納得するしかなかった。

だって記憶がないのだから、それが正しいのか間違ってるのかなんてわからない。

分からないから納得するしかないんだ。

セシルは皆よりもとても筋肉がムキムキのマッチョで大きくて、角もとっても太くて、羽もすごく立派で、尻尾もモフモフなんだよ。

どこをどう見てもかっこよくて堪らないよね!

そして、セシルはとても優しいんだ。

城では皆に慕われて誰よりも人気者の素敵なセシル。

僕は記憶がないけれど、それでも毎日が幸せだった。



だけど、僕は気づいていることがある。

セシルは僕に何かを隠している。

それが何かは分からない。

もしかしたら、僕の気のせいかもしれない。

でも、気になるんだ。



………好奇心というのは、猫をも殺すという言葉を本で読んだことがある。

きっと僕は、好奇心を持ってしまった猫なんだろう。



何度も僕は、間違ってしまったんだ………。

そんな感情を持ってしまったがために、セシルがどんな気持ちでいたかなんて知る由もなく、僕は何度も何度もセシルを傷つけ続けてしまったんだ。

そしてそれを毎回毎回忘れてしまう。

………僕は、今もそれを覚えていない。



終わりと共に思い出す。

そして全てを忘れてしまう。

何度も何度も繰り返す。

優しい嘘は、誰のための嘘なのか?
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