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語り手は最後でわかるよ!

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とあるところに、天堂ゴンサレスという男がいた。

ゴンサレスは平凡な毎日をまあまあ幸せに長生きして、寿命まで生きてから天に召される。

さて、ゴンサレスを神は異世界に行かせることを決めていた。

これは決定事項だったから、ゴンサレスが死ぬ日を神は待っていたのさ。

ゴンサレスはラノベが好きだったから喜んだ。

何かチートはあるのかと訊けば不老不死と、ゴンサレスのための土地と、若くて美しい妻と、ある程度成長している子供がいるらしい。

ゴンサレスは喜んだ。

不老不死なんて夢みたいだと、自分のための土地があるなんてと、若くて美しい妻がいるだなんてと、ある程度成長している子供なら面倒がなくていいと………。

神はニコニコと笑顔だった。………不自然なほどに。

そうして、ゴンサレスは異世界に行った。



あれから数年が過ぎた。

ゴンサレスは、確かに異世界に行った。

不老不死になり、ゴンサレスの土地があり、若くて美しい妻がいて、ある程度成長している子供がいる。

だが………。

歳が前世そのままだがら98歳だったのだ。

その歳で不老不死だったから、ゴンサレスは一人でろくに動けなくて、毎日介護されて生きている。

ちなみに、不老不死だからか食事は必要なものではなく嗜好品という感じになった。



ゴンサレスのための土地というのは、ゴンサレスを閉じ込めるための結界が張られている土地だった。

土地という名の檻だったのは、土地から出ようとして初めて知ることになる。

その時にさらに知ったのは、この土地は特別に用意された土地だから、誰も出入りはできないというもの。



若くて美しい妻は、確かに若くて美しい人で時が止まったように不老不死。

その妻は………昔、ゴンサレスが監禁して拷問した後に殺して、遺体を山に捨てた……ゴンサレスの元カノだった。

ちなみに、その事件の犯人としてゴンサレスはバレることなくぬくぬくと生きていた。

最初は気のせいかなと思っていたゴンサレスだが、妻は介護という建前でゴンサレスにされた拷問をして言ったのだ。

「あら、痛いの?でも、貴方こういうのが好きなのよね。私にいっぱいしたじゃない。だから………これからいっぱいしてあげるわね」

それはそれは美しく微笑んだのに、妻の瞳は一切笑っていない。

ゴンサレスが土地から出られないと知ったのは、この時這いずりながら逃げて知ったことだったりする。



ある程度成長している子供というのは、正確には子供達だった。

年齢は皆10歳で、数は68人。

ちなみに、住んでいる屋敷は異常に広いからそんな大勢でも生活していける。

そして、子供達も不老不死だった。

この68が何を意味しているか………それは、ゴンサレスが無差別に痛めつけて殺した子供の被害者の数だ。

ゴンサレスは、やはりこの事件の犯人としてバレることなくぬくぬくと生きていた。

ここにいるのは全て、ゴンサレスの被害者達。

子供達は、無邪気を装いゴンサレスに報復する。

ここが学校ならば、学級問題になりそうなイジメのオンパレードをしてゴンサレスを苦しめる。

ゴンサレスがやめてと言っても子供達は言うのだ。

「アンタは僕達を痛めつけて殺した。僕達だってやめてって言ったよね。アンタは止めなかったし、僕達を殺したよね。僕達はアンタを怨んでいるんだ。止めるわけないよ」

子供達は皆ゴンサレスを睨んでいた。



昔の悪逆非道な行いを反省しても、ゴンサレスの地獄は終わらない。



「神様!お仕事の時間ですわ」

「もうそんな時間なんだね」

「あの罪人をみていたんですか?」

「あぁ、あの罪人の被害者達が満足しないと、被害者達の浄化ができなかったからね。それほど、被害者達の怨念が強かった」

「そのために罪人が寿命で死ぬのを待ってから不老不死にして、異空間に用意した土地……つまり異世界で、被害者達に罪人を差し渡す。浮かれていた罪人が滑稽でしたわ」

「そうだね」

私は困ったように笑って、部下の天使と仕事に向かった。
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