上 下
1 / 4

竜と姫が、月を仰ぎ見る。その1

しおりを挟む
「ここは……一体どこなんだ……?」

 見渡す限りの木々の中で、俺は呆然と呟いた。

 一瞬の出来事であった。
 不登校で引きこもりの俺は、不登校で引きこもりのくせに健康を維持しようと散歩に出かけた。
 世界的にも類を見ない、健康的な不登校の引きこもりになりたかったんだ……。

 家の玄関を開けたところまでは覚えている。
 そして気がつくと森にいた。

「草」

 口頭で草を生やしたが実のところ真顔だった。

 唐突すぎてついていけない。
 なんか見たことのない形をした植物が生えているところを見ると、どうにも単純に森に転送されたわけでもなさそうだ。

「つまり異世界か……」

 俺はIQが2000000ある史上初の生物なので超高速で理解できてしまう。
 うーん、これは異世界転生!
 スマホもポケットに入ってるし間違いない。これでなんやかんや無双しろという思惑が透けて見える。
 
 いや今さら現代知識で無双系かよ、トレンド追えてなさ過ぎだろ、十年くらい実刑喰らってた?
 と思わなくもないが、そういうのは嫌いじゃない。全然嫌いじゃない。むしろ任せてくれよなって感じだ。

 おまえら、俺とスマホで気持ちよくなれ……。俺も気持ちよくなるからよ……。
しおりを挟む

処理中です...