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一章
宿
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近づいてみるとまた圧巻な大木をぐるりと半周した、根元に近い幹にその宿屋はあった。
木のサイズ感からして当然というべきか根は呆れる程太く、露出している範囲でも相当な高さだった。
幹にある宿屋に上がる為に、根を這い上がり登る相当な運動が要求され、結果俺はぜぇぜぇと息を切らして、そのドアを開けた。
「ただいま!」
「あら、お帰りナーミア。そちらの、ローブの方はどちら様かしら。フードで顔がよく見えないのだけれど……」
おっと、そうだった。
日陰が頻繁にあるとはいえ日光が当たると弱ってしまう性質上俺は屋外ではフードを常につけているが、流石にそのまま宿に入るのは失礼だろう。
ぱさりとフードを下ろし、カウンターに立っているおっとりとした雰囲気の女性と顔を合わせる。
髪の色がナーミアと同じで、エルフであることから多分彼女がナーミアの母親なんだろう。
「こんにちは、俺はフィリアと言います。しがない旅人で、今日この街に入ったのですが寝床を探していまして。宜しければこの宿に宿泊させていただいてもよろしいでしょうか」
「あら、あらあら。それはそれは。んー、空き部屋はあったかしら。それに此処は立地条件もサービスの良さも街で最高峰。結構な金額をお支払いいただかないといけないのですが、大丈夫ですか?」
うぐ、と俺は唸った。
俺の手持ちの金は、あの老人から貰った銀貨15枚。そこから馬車代に銀貨1枚と、スープで半分消し飛んだから今は銀貨7枚だ。
銀貨7枚がどれほどの価値かは知らないが、果たしてこれでそんな高級な宿に泊まれるだろうか。
というか、宿の場所がが街のシンボルなのだとか、代々続く由緒ある宿であるのだとか考えたらそりゃ高級宿に決まってるのにホイホイついてきた俺は、ひょっとして馬鹿じゃなかろうか。
一日くらいなら泊まれたとしても、街自体が結構な広さであるし、長期滞在を望むならもっと安宿の方がいいんじゃないか……?
眉間に皺を寄せて険しい顔をしている俺をみて、その女の人はくすりと慎ましやかに笑った。
「なんて、ごめんなさいね。冗談です。ナーミアがわざわざ連れてきたんだもの。きっと何かお世話になってしまったんでしょう? お代は結構ですから、好きなだけこの街を堪能していってくださいね」
それを聞いて、俺はほっとした。こんなにも情けは人の為ならずってマジだなぁとしみじみと感じ入ったのは今日が初めてだ。
ナーミアがカウンターの方に回り、こしょこしょと小さな声で母親と話し始める。
聞かれたら不味い事なのだろうか。だったらあえて聞いたりはしないけど。
「ほうほう……では、フィリアさん。この子を暫く宜しくお願いしても良いのかしら」
「あ、はい! っつーか、俺の方がお願いしますって感じなんですけど」
頭を低くしながらそう返答すると、母親は俺を、ちょいちょいと手招きした。
それにつられてカウンターに近づくと、母親が手を差し出して俺の手に何かを握らせる。
「これは貴女の部屋の鍵です。夕飯時には帰ってきて下さいね。まぁ、ナーミアがいるなら大丈夫でしょうけど」
「っと、ありがとうございます」
凄く至れり尽くせりだ。
本当に大したことはやってないのに。
「じゃあ、行ってらっしゃいナーミア。フィリアさん。此処はとても、本当にとても良いところですから存分に楽しんできてくださいね」
「うん! 行きましょうフィリアさん」
「……よし、行こうか!」
フードを被り直し、鍵を金の入れている小袋に一緒に入れて、踵を返し、俺はドアを開けて外に出た。
木のサイズ感からして当然というべきか根は呆れる程太く、露出している範囲でも相当な高さだった。
幹にある宿屋に上がる為に、根を這い上がり登る相当な運動が要求され、結果俺はぜぇぜぇと息を切らして、そのドアを開けた。
「ただいま!」
「あら、お帰りナーミア。そちらの、ローブの方はどちら様かしら。フードで顔がよく見えないのだけれど……」
おっと、そうだった。
日陰が頻繁にあるとはいえ日光が当たると弱ってしまう性質上俺は屋外ではフードを常につけているが、流石にそのまま宿に入るのは失礼だろう。
ぱさりとフードを下ろし、カウンターに立っているおっとりとした雰囲気の女性と顔を合わせる。
髪の色がナーミアと同じで、エルフであることから多分彼女がナーミアの母親なんだろう。
「こんにちは、俺はフィリアと言います。しがない旅人で、今日この街に入ったのですが寝床を探していまして。宜しければこの宿に宿泊させていただいてもよろしいでしょうか」
「あら、あらあら。それはそれは。んー、空き部屋はあったかしら。それに此処は立地条件もサービスの良さも街で最高峰。結構な金額をお支払いいただかないといけないのですが、大丈夫ですか?」
うぐ、と俺は唸った。
俺の手持ちの金は、あの老人から貰った銀貨15枚。そこから馬車代に銀貨1枚と、スープで半分消し飛んだから今は銀貨7枚だ。
銀貨7枚がどれほどの価値かは知らないが、果たしてこれでそんな高級な宿に泊まれるだろうか。
というか、宿の場所がが街のシンボルなのだとか、代々続く由緒ある宿であるのだとか考えたらそりゃ高級宿に決まってるのにホイホイついてきた俺は、ひょっとして馬鹿じゃなかろうか。
一日くらいなら泊まれたとしても、街自体が結構な広さであるし、長期滞在を望むならもっと安宿の方がいいんじゃないか……?
眉間に皺を寄せて険しい顔をしている俺をみて、その女の人はくすりと慎ましやかに笑った。
「なんて、ごめんなさいね。冗談です。ナーミアがわざわざ連れてきたんだもの。きっと何かお世話になってしまったんでしょう? お代は結構ですから、好きなだけこの街を堪能していってくださいね」
それを聞いて、俺はほっとした。こんなにも情けは人の為ならずってマジだなぁとしみじみと感じ入ったのは今日が初めてだ。
ナーミアがカウンターの方に回り、こしょこしょと小さな声で母親と話し始める。
聞かれたら不味い事なのだろうか。だったらあえて聞いたりはしないけど。
「ほうほう……では、フィリアさん。この子を暫く宜しくお願いしても良いのかしら」
「あ、はい! っつーか、俺の方がお願いしますって感じなんですけど」
頭を低くしながらそう返答すると、母親は俺を、ちょいちょいと手招きした。
それにつられてカウンターに近づくと、母親が手を差し出して俺の手に何かを握らせる。
「これは貴女の部屋の鍵です。夕飯時には帰ってきて下さいね。まぁ、ナーミアがいるなら大丈夫でしょうけど」
「っと、ありがとうございます」
凄く至れり尽くせりだ。
本当に大したことはやってないのに。
「じゃあ、行ってらっしゃいナーミア。フィリアさん。此処はとても、本当にとても良いところですから存分に楽しんできてくださいね」
「うん! 行きましょうフィリアさん」
「……よし、行こうか!」
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