春嵐

イチモンジ

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MC1

脈動

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荒い呼吸を繰り返す細い首に唇を寄せる。血管の脈打つ動きが伝わるその経路に舌を這わせた。
「まだ耳に聴かせて、腹を圧したくらいなのにな」
彼女の半開きになった口から露わになっている舌が、呼吸の度に上下し、糸を引くような唾液が揺れる。
首筋に強く吸いついて痕を付けたいという欲は一旦押さえ込み、じっとりと舐め回しながら腹に宛てがった手と、先程まで咥えさせていた手をそれぞれ胸部に当てる。先端は鬱血して、位置を誇示するかのように張っているが、そこには触れないようにしながら柔肌に指を食い込ませた。
左胸に当てた手に伝わる、首筋の脈よりも直接的な鼓動。
腰を燻らすだけでは足りなくなったのか、内腿を擦り合わせるようにして淫らな体勢に崩れた彼女を、後ろから抱え直す。
「刺激が足りなくて辛いか?」
「たり、ない…?うん…たりない」
復唱と刷り込みを繰り返した成果は、無意識に働きかける。
「足りないときは、どうするんだ?」
「…さわり、たい…させて、ください…」
自らの発言だ、といくらでもやり込められる誘導の道を敷いてやれば、思ったとおりに動く。零れそうになる笑いを噛み殺して、要求には許可を与えた。
だらりと下がったままだった彼女の手を、自らの胸を触れるように乗せ、上から手を重ねる。
「好きにするといい」
細い指先が胸の輪郭をなぞるように動き自ら求めた場所へ到達する。後ろから支えながら、熟れ硬くなった箇所を弄っては恍惚の表情を浮かべる彼女を見つめた。
「そうか、ここ、が好きか?」
弄っている場所を強めに弾いてやれば、身を震わせて、自分でも同じように繰り返す痴態を晒す。
「すき、そこ…ッ…んっ…ぅぁ」
「おっと」
急に脱力した身体を預けて、愁いた目で見上げられる。
「そんな物欲しそうな目で見てくれるな。今のは自分でやっただろう?」
首筋にキスを落とせば、先程舌を這わせたときよりも早い脈動が唇に伝わってきた。
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