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事件
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僕たちは言葉にしなかったが、美由紀と丈はアンドロイドかもしれないと思った。
美由紀は僕の理想どおりの少女だった。理想だったのは外見だけではなかった。健康的でおおらかな性格な性格のせいだろう。彼女と一緒にいると穏やかな気持ちになった。あんなに気分屋で扱いにくかったさくらも丈が現れてすっかり愛らしい少女に変った。2人は僕たちにとって理想的な存在だった。
あまりにも出来過ぎているような気がして、2人がアンドロイドかもしれないという考えを振り払うことができなかった。僕は、アンドロイドを愛する男の映画を見てひどく落ち込んだりした。
今まで疑わなかった世界が足元から崩れていく。ごんぞう夫婦はおそらくアンドロイドだろう。母はオリジナルの人間なのだろうか。佐藤はどうだろう。先生達はなどといちいち気になった。
僕は愛犬のベルと庭で遊ぶふりをしたり、馬で敷地内を走ったりして嵐の夜の手掛かりをつかもうとした。
その日はまだ暗いうちに目が覚めた。夜明け前だった。僕は着替えて外に出るとようやく東の空が白み始めていた。外は少し肌寒く僕はパーカーを羽織って正解だと思った。僕が出てくるとベルは喜んでしっぽを振って近づいてきた。
僕は馬に乗ろうと思ったから、ベルの頭をなぜるだけにして家を後にした。ごんぞうの家はひっそりしていた。僕が馬小屋に向かった時だった。
突然、ドアが開くと少年が飛び出してきた。僕は、彼と対峙した。驚いたのは彼も同じだった。嵐の夜男たちに追われていた少年に違いない。僕たちは一瞬だが顔を合わせていた。たがいに似ているとわかっていたことで2人とも警戒心が薄れていたかもしれない。
「あの、君は?」
「ああ、とにかく、助けて。時間がないんだ。気づかれないうちに助けてくれ。」
少年は哀願するように言った。
「一体、どうしたんだ。馬で逃げるか?」
緊迫した彼の様子を見て僕は馬屋に案内した。少年は本当に僕によく似ていた。ただ、僕より少し小柄で痩せていた。大きな違いといえば彼の大きな瞳はややつり上がっているところぐらいをだろう。僕は少し目じりが下がっていて彼より少し唇が厚かった。その他は双子と言ってもいいくらい僕たちは似ていた。
「馬に乗れるかい?」
「乗ったことはないけれど、やってみるよ。」
大きいが足の速いデスペラードは気難しくて、父しか乗りこなせなかった。僕はいつも自分で名付けたドラゴンにのっている。となると、残りは優しい気性のメラニーしかいなかった。メラニーは3匹の中で一番小さく遠出には不安があった。
穏やかな性格のメラニーだったら初めてでも乗れるかもしれない。僕はメラニーに鞍をつけた。
「メラニー、この人を頼むよ。」
優しく馬の首筋をさすってやる。そして少年にもメラニーをなぜさせた。
「いいかい、僕の様子を見て真似するんだ。早く走らせたいときは少し腹を足でたたくんだが。とにかく、信頼関係が大切なんだ。」
「ああ、やってみるよ。」
出来るだけ早く遠くに離れる必要があったけれど、少し馬に慣れる必要があった。
始めはゆっくり歩かせた。次に駆け足をさせる。少年はどうやら馬の扱いになれたようだ。
15分ほどすると雑木林の手前まで来た。馬を止めて、僕は少年に尋ねた。
「僕はここまでしか来たことが無いんだ。これからどうする?」
「先に行ってみるよ。」
「これから先は行かないように言われている。危険なことがあるかもしれないから慎重に進もう。」
雑木林を過ぎると小さな小川が流れていた。ここを過ぎれば、犬も追ってこれないだろう。犬に後をつけられないようにシャバシャバと水音を立てながら、小川に沿って僕たちは上流に進んだ。
「君は戻ったほうが良い。ここまで、ありがとう。」少年は言った。
「何かこれからの当てがあるのか。」と聞くと、
「いや、結局は見つかるかもしれない。その時、君は僕の事知らないことにした方がいいんだ。」
「嵐の夜に庭にいたよな。僕に似てる君は何者なんだ?」
少年はふうとため息をついた後吐き捨てるように言った。
「まあ、兄弟みたいなものさ。」
「兄弟?」
僕は次の言葉を見つけられなかった。この少年をこのままにしておけない。このままほってはおけない。
「見つかったら、どこに行くんだ。」
「当分の間はさっきの家の地下室さ。」
「また、会えるかな。話をしたいんだ。」
美由紀は僕の理想どおりの少女だった。理想だったのは外見だけではなかった。健康的でおおらかな性格な性格のせいだろう。彼女と一緒にいると穏やかな気持ちになった。あんなに気分屋で扱いにくかったさくらも丈が現れてすっかり愛らしい少女に変った。2人は僕たちにとって理想的な存在だった。
あまりにも出来過ぎているような気がして、2人がアンドロイドかもしれないという考えを振り払うことができなかった。僕は、アンドロイドを愛する男の映画を見てひどく落ち込んだりした。
今まで疑わなかった世界が足元から崩れていく。ごんぞう夫婦はおそらくアンドロイドだろう。母はオリジナルの人間なのだろうか。佐藤はどうだろう。先生達はなどといちいち気になった。
僕は愛犬のベルと庭で遊ぶふりをしたり、馬で敷地内を走ったりして嵐の夜の手掛かりをつかもうとした。
その日はまだ暗いうちに目が覚めた。夜明け前だった。僕は着替えて外に出るとようやく東の空が白み始めていた。外は少し肌寒く僕はパーカーを羽織って正解だと思った。僕が出てくるとベルは喜んでしっぽを振って近づいてきた。
僕は馬に乗ろうと思ったから、ベルの頭をなぜるだけにして家を後にした。ごんぞうの家はひっそりしていた。僕が馬小屋に向かった時だった。
突然、ドアが開くと少年が飛び出してきた。僕は、彼と対峙した。驚いたのは彼も同じだった。嵐の夜男たちに追われていた少年に違いない。僕たちは一瞬だが顔を合わせていた。たがいに似ているとわかっていたことで2人とも警戒心が薄れていたかもしれない。
「あの、君は?」
「ああ、とにかく、助けて。時間がないんだ。気づかれないうちに助けてくれ。」
少年は哀願するように言った。
「一体、どうしたんだ。馬で逃げるか?」
緊迫した彼の様子を見て僕は馬屋に案内した。少年は本当に僕によく似ていた。ただ、僕より少し小柄で痩せていた。大きな違いといえば彼の大きな瞳はややつり上がっているところぐらいをだろう。僕は少し目じりが下がっていて彼より少し唇が厚かった。その他は双子と言ってもいいくらい僕たちは似ていた。
「馬に乗れるかい?」
「乗ったことはないけれど、やってみるよ。」
大きいが足の速いデスペラードは気難しくて、父しか乗りこなせなかった。僕はいつも自分で名付けたドラゴンにのっている。となると、残りは優しい気性のメラニーしかいなかった。メラニーは3匹の中で一番小さく遠出には不安があった。
穏やかな性格のメラニーだったら初めてでも乗れるかもしれない。僕はメラニーに鞍をつけた。
「メラニー、この人を頼むよ。」
優しく馬の首筋をさすってやる。そして少年にもメラニーをなぜさせた。
「いいかい、僕の様子を見て真似するんだ。早く走らせたいときは少し腹を足でたたくんだが。とにかく、信頼関係が大切なんだ。」
「ああ、やってみるよ。」
出来るだけ早く遠くに離れる必要があったけれど、少し馬に慣れる必要があった。
始めはゆっくり歩かせた。次に駆け足をさせる。少年はどうやら馬の扱いになれたようだ。
15分ほどすると雑木林の手前まで来た。馬を止めて、僕は少年に尋ねた。
「僕はここまでしか来たことが無いんだ。これからどうする?」
「先に行ってみるよ。」
「これから先は行かないように言われている。危険なことがあるかもしれないから慎重に進もう。」
雑木林を過ぎると小さな小川が流れていた。ここを過ぎれば、犬も追ってこれないだろう。犬に後をつけられないようにシャバシャバと水音を立てながら、小川に沿って僕たちは上流に進んだ。
「君は戻ったほうが良い。ここまで、ありがとう。」少年は言った。
「何かこれからの当てがあるのか。」と聞くと、
「いや、結局は見つかるかもしれない。その時、君は僕の事知らないことにした方がいいんだ。」
「嵐の夜に庭にいたよな。僕に似てる君は何者なんだ?」
少年はふうとため息をついた後吐き捨てるように言った。
「まあ、兄弟みたいなものさ。」
「兄弟?」
僕は次の言葉を見つけられなかった。この少年をこのままにしておけない。このままほってはおけない。
「見つかったら、どこに行くんだ。」
「当分の間はさっきの家の地下室さ。」
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