完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール

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20話

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 王制が崩壊し、マイヤー王国からマイヤー共和国へと移行したことを対外的に示したデイビスは、新たな国の再建に忙殺されていた。

 デイビスは他国との関税に関する規約の見直しに追われ、そしてルナは、学校の数を増やす為、創立場所の選定や教師の増員に力を注いでいた。

 そんな時、エマの父ブラバント公爵からデイビスに先触れがあった。
 それは二日後、スペンサー邸にて話をしたいので、ルナ嬢とその父アンダーソン公爵にもお越し頂きたいと。

 二日後、デイビスとルナ、そして二人の父達が待っていると、ブラバント公爵がお一人でお見えになった。
「お呼び立てして済まないね」
 と仰り、エマから預かったと言って一通の手紙を広げた。
 
「この手紙は皆さんに読んでもらいたい」

 そう言われ、まずデイビスから読み始めた。

  デイビス様 ルナ様へ

 お二人がこの手紙を読まれている頃には、私はきっとリンドバーグに着いた頃だと思います。やはり私にはマイヤー国よりリンドバーグの方が性に合っています。いつかマイヤー国を、私が永住したいと思えるような魅力のある国にしてください。
女性も男性と同じように活躍ができ、子供達も皆平等に学べる、そんな環境が整うことを期待しています。お二人で力を合わせれば必ず実現出来ると信じています。
お二人の間にあった壁は今はもう取り除かれたのです。
お二人はもう十分、国の為、そして人々の為にご自分達を犠牲にしてこられたではないですか、一度くらい自分達の為の選択をしてもバチは当たらないと思います。私もこちらの国から応援してます。ですから、これからの未来の為に共に支え合い、歩んでいってください。
お二人の幸せを心より祈っています。 

                 エマより

 四人共読み終えたが、皆言葉を発することができずにいる。
 するとブラバント公爵が口を開いた。

「娘の気持ちを汲(く)んでやって、どうか二人共、一緒になってくださらんか。もし娘に遠慮なんかしたら、あの子の気持ちを踏みにじることになりますからな」

 とも仰った。

 この時のルナはデイビスとの恋はとっくに諦めていたので、どうしていいのか分からない。
 それが本音だった。
 そしてエマに対し、こんなにも辛い決断をさせてしまったのが自分なのだと、初めて気づかされた。
 そのうえで、エマがどんな気持ちでリンドバーグへと向かったのだろうかと、心が締め付けられ、
 いつかの王命によって引き裂かれたあの日の自分と重ねていた。

 一方のデイビスは、先日エマ嬢を食事に誘った時に言われた言葉を思い出していた。

 そして二人の父達は顔を見合わせて言った。

「大きな借りを作ってしまいましたな」
 

 その後、デイビスとエマの婚約解消の手続きも終わり、デイビスとルナの婚約が結ばれたのだった。
 二人はあれほど苦しい別れをしたのに、こんなにも簡単に婚約できたことに戸惑いを覚えていた。
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