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7話
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いよいよ王宮での舞踏会の日がやって来た。
私の支度はメイド長と他の使用人も手伝って、念入りに仕上げられた。
これは偶然かもしれない。いや、ただの偶然に違いない。なぜか私のドレスの色は公爵様の瞳の色と同じブルーのドレスだった。
ドレスからアクセサリーまで全ては公爵様が選んでくださったと、メイド長に聞かされた。
私はそんなことに照れている自分に苦笑してしまった。
しばらくすると、支度が終わった公爵様が私の元へとやって来た。
「私の思っていた通り、その色は君にとても良く似合っている」
と褒めてくださった。私は敢えてドレスの色については何も聞かないことにした。
「公爵様もとても素敵です」
そう言うと公爵様は少し照れていらした。
そしてこれも偶然なのかしら? 公爵様はポケットチーフなど所々に私の瞳の色をあしらっていらした。
公爵様はそっと手を差し出し、私をエスコートをしてくださった。
こうして私たちは馬車に乗り、王宮へと向かった。
私はこちらに来てから、初めて舞踏会に参加する。
元いた国の社交界では正直、王家の血を引く公爵令嬢として割と目立つ存在ではあったが、こちらの国の社交界とはどういうものなのか、全く想像もつかない。
社交界の中でも今日の舞踏会は王家主催なのでそれなりの上位貴族も参加するはずだから、伯母である侯爵夫人も参加してくれることを期待している。
王宮に着くと着飾った大勢の紳士淑女たちが次々と会場の中へと入っていく。
『こんなに大勢の中から伯母様を見つけ出すことは出来るのかしら?』
少し不安に思ったが、どんなことをしてでも探さなければと気合いを入れた。
人混みに押されながら、公爵様と私が会場の入り口に立った瞬間、なぜか人並みが左右に分かれて注目を集めた。
そして彼方此方で人々が囁いている声が聞こえてきた。その声に耳を傾けた。
「見て見て、あちらはウエスタント公爵家のランガー様よ」
「公爵様が参加なさるなんてお珍しいわね」
「公爵様と一緒にいるご令嬢は誰なのかしら?」
「お二人共お似合いだわ」
などなど、様々な声が聞こえてきた。
そしてそんな中、バーデン辺境伯が近づいて来た。
「これは公爵様、さすがに目立っておられますな」
「バーデン殿、先日も申したように、くれぐれも余計なことは口にしないように」
公爵様が、釘を刺したにもかかわらず話しかけて来る。
「陛下に領地の件は執り成すと約束しておきながら昨日、謁見したらその話は却下された。
どういうことか説明して頂きたい」
それを聞き、公爵様は怒った。
「こんなところでする会話ではないだろう!」
すると、辺境伯が今度は私の方を見て何か合図を送っていたが私はそれを無視した。するとそれに腹を立てた辺境伯は怒鳴っている。
「《戦利品》のくせにこの俺を無視するとは少々、図に乗っているようだな」
「いい加減にしろ! とにかくそのような話、今、ここで話すことではない。場をわきまえるべきだ」
しかし、辺境伯はなかなか引き下がらない。
すると周りが騒ぎ出した。
「聞きました? 《戦利品》ですって」
「もしかして敵国の人間なのかしら?」
あちらこちらで囁かれる。
すると、大勢の人が集まってしまった。
居たたまれず私がその場を去ろうとしたその瞬間
「アリシア! よく無事で」
そう言って抱きつく一人のご夫人がいた。よく見ると、その方は私が会いたかった伯母様だった。
私は思わず涙を流して
「伯母様、どれほどお会いしたかったか」
と言って伯母様の背中に腕を回して縋り付いた。
すると伯母様のすぐ後ろには私の従兄のジェフリーお兄様がいた。
お兄様も涙ぐまれていた。
「アリシア、会えて良かった」
そう言って、私の後ろから抱きつかれた。私たちは暫く言葉を発せず再会を喜んでいた。
そして突然、伯母様が皆の注目を集めるように大きな声で言った。
「アリシア、貴女の家族の亡命は教皇様がお認めになったのに、手紙があちらの国の検閲に引っかかって届かなかったの」
そして伯母様は続けて言う。
「貴女は隣国の王家の血を引いた公爵令嬢だけど、貴女の家族は既にあちらの王家に見切りをつけていたのよ。だから今回の戦争を回避しようと動いている最中にあんなことになって、間に合わなかったの、ごめんなさい」
そう、謝られた。すると周りが囁き出した。
「隣国の公爵令嬢ですって」
「教皇様がお認めになったのですって」
などなど様々な声が聞こえてきた。
その言葉に呆気に取られた辺境伯は苦々しい顔でその場を去って行った。
そして公爵様が伯母様に尋ねた。
「確か貴女はリンドバーグ侯爵夫人でしたね」
「ええ、そうです、貴方はウエスタント公爵家の確かランガー様だったかしら?」
すると今度は従兄のジェフリーお兄様が私の手を引いた。
「さあアリシア、今日から我が家で暮らすといい」
そう言って引き寄せると、公爵様がもう片方の手を取った。
「いいや、君が帰るのは我が屋敷だ」
どうしたらいいのか分からず、戸惑っている私に伯母様が声をかけた。
「取り敢えず今日はうちにいらっしゃい、家族のことも色々と聞きたいから」
すると公爵様が言う。
「だったら今からうちの屋敷で話し合いをしませんか?」
ついには伯母様が折れた。
「分かりました。ではそちらで話し合うことにいたしましょう」
その後は、王家主催の舞踏会だったので陛下のお言葉を聞き終えてから、私たちは場所を公爵邸へと移すことになった。
私の支度はメイド長と他の使用人も手伝って、念入りに仕上げられた。
これは偶然かもしれない。いや、ただの偶然に違いない。なぜか私のドレスの色は公爵様の瞳の色と同じブルーのドレスだった。
ドレスからアクセサリーまで全ては公爵様が選んでくださったと、メイド長に聞かされた。
私はそんなことに照れている自分に苦笑してしまった。
しばらくすると、支度が終わった公爵様が私の元へとやって来た。
「私の思っていた通り、その色は君にとても良く似合っている」
と褒めてくださった。私は敢えてドレスの色については何も聞かないことにした。
「公爵様もとても素敵です」
そう言うと公爵様は少し照れていらした。
そしてこれも偶然なのかしら? 公爵様はポケットチーフなど所々に私の瞳の色をあしらっていらした。
公爵様はそっと手を差し出し、私をエスコートをしてくださった。
こうして私たちは馬車に乗り、王宮へと向かった。
私はこちらに来てから、初めて舞踏会に参加する。
元いた国の社交界では正直、王家の血を引く公爵令嬢として割と目立つ存在ではあったが、こちらの国の社交界とはどういうものなのか、全く想像もつかない。
社交界の中でも今日の舞踏会は王家主催なのでそれなりの上位貴族も参加するはずだから、伯母である侯爵夫人も参加してくれることを期待している。
王宮に着くと着飾った大勢の紳士淑女たちが次々と会場の中へと入っていく。
『こんなに大勢の中から伯母様を見つけ出すことは出来るのかしら?』
少し不安に思ったが、どんなことをしてでも探さなければと気合いを入れた。
人混みに押されながら、公爵様と私が会場の入り口に立った瞬間、なぜか人並みが左右に分かれて注目を集めた。
そして彼方此方で人々が囁いている声が聞こえてきた。その声に耳を傾けた。
「見て見て、あちらはウエスタント公爵家のランガー様よ」
「公爵様が参加なさるなんてお珍しいわね」
「公爵様と一緒にいるご令嬢は誰なのかしら?」
「お二人共お似合いだわ」
などなど、様々な声が聞こえてきた。
そしてそんな中、バーデン辺境伯が近づいて来た。
「これは公爵様、さすがに目立っておられますな」
「バーデン殿、先日も申したように、くれぐれも余計なことは口にしないように」
公爵様が、釘を刺したにもかかわらず話しかけて来る。
「陛下に領地の件は執り成すと約束しておきながら昨日、謁見したらその話は却下された。
どういうことか説明して頂きたい」
それを聞き、公爵様は怒った。
「こんなところでする会話ではないだろう!」
すると、辺境伯が今度は私の方を見て何か合図を送っていたが私はそれを無視した。するとそれに腹を立てた辺境伯は怒鳴っている。
「《戦利品》のくせにこの俺を無視するとは少々、図に乗っているようだな」
「いい加減にしろ! とにかくそのような話、今、ここで話すことではない。場をわきまえるべきだ」
しかし、辺境伯はなかなか引き下がらない。
すると周りが騒ぎ出した。
「聞きました? 《戦利品》ですって」
「もしかして敵国の人間なのかしら?」
あちらこちらで囁かれる。
すると、大勢の人が集まってしまった。
居たたまれず私がその場を去ろうとしたその瞬間
「アリシア! よく無事で」
そう言って抱きつく一人のご夫人がいた。よく見ると、その方は私が会いたかった伯母様だった。
私は思わず涙を流して
「伯母様、どれほどお会いしたかったか」
と言って伯母様の背中に腕を回して縋り付いた。
すると伯母様のすぐ後ろには私の従兄のジェフリーお兄様がいた。
お兄様も涙ぐまれていた。
「アリシア、会えて良かった」
そう言って、私の後ろから抱きつかれた。私たちは暫く言葉を発せず再会を喜んでいた。
そして突然、伯母様が皆の注目を集めるように大きな声で言った。
「アリシア、貴女の家族の亡命は教皇様がお認めになったのに、手紙があちらの国の検閲に引っかかって届かなかったの」
そして伯母様は続けて言う。
「貴女は隣国の王家の血を引いた公爵令嬢だけど、貴女の家族は既にあちらの王家に見切りをつけていたのよ。だから今回の戦争を回避しようと動いている最中にあんなことになって、間に合わなかったの、ごめんなさい」
そう、謝られた。すると周りが囁き出した。
「隣国の公爵令嬢ですって」
「教皇様がお認めになったのですって」
などなど様々な声が聞こえてきた。
その言葉に呆気に取られた辺境伯は苦々しい顔でその場を去って行った。
そして公爵様が伯母様に尋ねた。
「確か貴女はリンドバーグ侯爵夫人でしたね」
「ええ、そうです、貴方はウエスタント公爵家の確かランガー様だったかしら?」
すると今度は従兄のジェフリーお兄様が私の手を引いた。
「さあアリシア、今日から我が家で暮らすといい」
そう言って引き寄せると、公爵様がもう片方の手を取った。
「いいや、君が帰るのは我が屋敷だ」
どうしたらいいのか分からず、戸惑っている私に伯母様が声をかけた。
「取り敢えず今日はうちにいらっしゃい、家族のことも色々と聞きたいから」
すると公爵様が言う。
「だったら今からうちの屋敷で話し合いをしませんか?」
ついには伯母様が折れた。
「分かりました。ではそちらで話し合うことにいたしましょう」
その後は、王家主催の舞踏会だったので陛下のお言葉を聞き終えてから、私たちは場所を公爵邸へと移すことになった。
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