《完結》財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり

ヴァンドール

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1話(此処は何処?)

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 目を覚ますとそこは、見たこともない豪華なお部屋で、私の周りには見知らぬ顔の人達が涙を浮かべて騒ついている。

「美優が目を開けたわ、誰か早く先生を!」

「今、ナースコールをした!」

「美優! 大丈夫か、どこか痛むところはない
か?」

「お嬢様、何か、何か飲まれますか?」

 『誰だろう?   この方達は。それにここは何処?   まるで今までとは全く違う世界だわ。皆さんの着ている服から髪型、そして何よりお部屋の雰囲気、私がいた世界にはない物ばかりだわ』

 ステーシアはそう、全く別の時代の世界に来てしまった。
 そしてまた、もう一人の少女、美優も今までいた世界とは別の時代の世界で目を覚ました。

『あら?   ここはどこなの?   随分と汚いお部屋ね。なんだか頭は痛いし、身体も重いわ』

 わたくしは扉の外に向かって声を発した。

「誰か、いないの?」

 すると一人の女性が入って来てた。

「あー! お嬢様、良かった。あのまま目を覚まさないのではと心配しました。本当に良かった」

 彼女は目からは大粒の涙が零れている。そしてわたくしは彼女に向かって聞いてみた。

「貴方は誰なの?」

「お嬢様、私のことがお分かりにならないのですか?」

 そう言いながら驚いている。

「三日も高熱が続いていたので、もしかしたらまだ意識がはっきりとしないのかもしれません、もう少しお休みになられてください。今、白湯をお持ちしますので」
 
 彼女は一旦、出て行った。
 そしてわたくしは心の中で『わたくしも汚い格好だけど今の彼女の格好も汚いわね。
 確かわたくしのことをお嬢様と呼んでいたけれど何故、お嬢様と呼ばれているわたくしがこんな汚い格好なのかしら?  それにここはいつの時代?   わたくしのいた世界とは全く違う世界だわ』と考えていたら、思いっきり音を立てて扉が開いた。

「ステーシア、目が覚めたのならとっとと仕事をしなさい」

 女性が仁王立ちして叫んでいる。そして後ろから白湯を持った先ほどの彼女が入って来た。

「奥様、お嬢様は高熱を出されてやっと目が覚めたばかりなのでまだ無理です。お嬢様の仕事は私がやりますからどうか今日はお許しください」

 そう泣きながら頼んでいる。それを見兼ねたわたくしは口を開いた。

「偉そうに、このわたくしに向かって何を言っているの?  だいたい貴方は誰なのよ」

「は?   ステーシア、頭までおかしくなったのかしら?」

 その女はいきなりわたくしに向かって拳を振り上げた。
 わたくしはその拳を軽く手で振り払った。するとその女性はものすごい勢いで今度はわたくしの胸ぐらを掴んできたので、その手を思いっ切り捻り上げた。

 わたくしは小さな頃から護身術を教え込まれていたので反射的に体が動いていた。
 するとその女性は勝手に悲鳴を上げている。

「い、痛い! 後で覚えておきなさいよ!」

 そして、それを見ていた彼女が慌てて駆け寄る。  

「お嬢様、大丈夫ですか?   まだ病み上がりなのに、それにあんなことをなさっては、あとでどんな仕返しをされるか心配です」 

 わたくしは彼女にしおらしい態度をとった。

「ごめんなさい、本当に何も思い出せなくて、思わず手が出てしまったわ。だけどあの女性は誰なのかしら?」

「お嬢様、やはりあまりにもお辛かったせいで記憶を無くされてしまったのですね」

 わたくしは『これはちょうどいい機会だから一通り周りの状況を聞き出しましょうか』と思い尋ねることにした。

「ええ、そのようだわ。簡単に説明してくださる?」

 彼女は話し始めた。
 それによると、どうやらわたくしはステーシアという伯爵令嬢だけど、お母様はわたくしが小さい時にご病気で亡くなってしまい、その後、優しいお父様と何不自由なく暮らし、父はわたくしが五才の時に男爵令嬢の先ほどの女性と再婚してすぐに男の子が生まれ、その子の名前はレオンと言う。そしてわたくしは何人もの家庭教師に教えてもらいながら完璧な淑女教育を受けていたが、昨年父が流行病で亡くなると継母のナタリーの態度がガラリと変わり、わたくしの物は全て取り上げて、この使われていなかった物置のような部屋へと移し、朝から晩まで働かせていたという。そして彼女の名前はアンといい、十八才のわたくしより四つ上の二十二才で父が存命の頃はわたくしの侍女を務めていたと聞いた。
 そしてわたくしの異母弟のレオンは若干十六才でこのメイソン伯爵家を継ぎ、継母と同様に、わたくしに辛く当たっているという。
 一通り聞き終えたわたくしはアンに告げた。

「それではこれから復讐といきますか」

 彼女は驚いた顔を向けた。
 
「お嬢様、まるで別人のようになられて、本当にあの大人しかったお嬢様なのですか?」
 
「そう、わたくしはそんなに大人しかったのね」

 ニヤリと笑い、そして心の中で『今に見てなさい、必ず後悔させてあげますわ』と呟いていた。

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