《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール

文字の大きさ
34 / 85

34話

しおりを挟む
 公爵邸に戻った私は、ロザリーさんにお茶を淹れてもらいながら世間話をしていた。

 今日の外出はきちんと告げて、従者もつけての外出だったので、ロザリーさんは何も言わない。
 今までは、一人でこっそりと外出していたので、その度怒られていたが、少しずつこちらでの生活にも慣れなくてはと、今ではきちんと告げるようにしていた。
 それに、殿下にもいつ何があるかわからないので慎重に行動するようにと注意もされていたので、気をつけるようにしていた。

 しばらくすると殿下が戻られたので、いつものように一緒に夕食を取っている。

「今日はエマ殿のところへ行っていたそうだか、何かあったのか?」

 思わず『何でも知っているのね』と心の中でつぶやいた。  
 そして隠す必要もないので、エマ先生との会話をそのまま伝えた。
 すると殿下は

「いつも思うのだが、エマ殿は君の母上のようだな」
 と仰った。

「はい、いつでも一番に私を心配してくださいます。エマ先生がいなかったら今の私はいないと思います」

 そう答え、先生が私の家庭教師を始めた頃の話に遡った。
 そして私が小説家になれたのも、先生が勧めてくださった一冊の本がきっかけだったと話した。

「それはどんな本なんだ?」
 
「『必然だった出会い』というタイトルの本でした」

 するととても驚いたお顔をなさった。

「その作者は〈ジャン・ポール・サルドン〉ではないのか?」
 
「殿下もご存知なのですか?」
 
「ずっと昔だが、感銘を受け、私の考えの根底となった作家だ。私が読んだ本とは違うが、同じ作家だ。もしその作家が生きていたなら、もっとたくさん、彼の作品を読んでみたかった。彼の最後の作品となってしまった本は特に素晴らしいものだった」
 
「そうですね。私が初めて読んだ時には既にお亡くなりになっていました」

「ああ、随分と昔に黒死病という当時の流行病で亡くなったと聞いている」

 そして彼の作品はきっと今の国王の元では検閲に引っかかって出版できなかっただろう。先王の時代だったから出版できたのだと言われた。 

 確かに私が読んだ作品も恋愛小説でありながらもかなり政治的要素が含まれていた。それは私が先日書いた物よりもずっと具体的な物だった。

 国王が変わっただけで読めなくなってしまう本があるなんてあまりに理不尽だと思った。
 もっと自由に思ったことが堂々と書ける国であって欲しいと心から思う。
 きっと亡くなったその作家さんも同じように思われる筈だ。
 だからこそ私は、その作家さんが引き合わせた運命のようなものを感じた。

 そういえば、いつだったか殿下とエマ先生と三人で初めて語り合った時に感じた使命を思い出した。そして私が初めて感動を覚えた小説のタイトル『必然だった出会い』そのままの意味のような気がした。
 そしてやはり戦争になりそうになっている今、止められる側の人間として私達は選ばれたのだと自覚しなくてはいけないと改めて思った。

 殿下にその気持ちを伝えると、やはり同じように思ってくれていた。
 これからどんな試練が待ち受けているのかわからないが、どんなことが起きても立ち向かえる強い自分であろうと思っていた。

 そして話をしている途中で扉が大きな音でノックされ、執事のノアさんが慌てて入ってきた。

「今、殿下の使者の方がみえて、編集長が王宮の警備隊に連行されました」

 殿下は驚きと共に

「すぐ支度を、王宮に行く。すまないが屋敷で待機するように」
 
 私は心の中で『ついに始まってしまった』
 と覚悟を決めた。そして殿下の今の気持ちを思いやって、どんなに心配なさっているのかと心が痛んだ。

 私は夜中まで起きて待っているが、今だになんの連絡もない。『ただ祈ることしかできないなんて』
 と、気持ちだけが先走る。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。 本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。 『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。 「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。 カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。 大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。

私が育てたのは駄犬か、それとも忠犬か 〜結婚を断ったのに麗しの騎士様に捕まっています〜

日室千種・ちぐ
恋愛
ランドリック・ゼンゲンは将来を約束された上級騎士であり、麗しの貴公子だ。かつて流した浮名は数知れず、だが真の恋の相手は従姉妹で、その結婚を邪魔しようとしたと噂されている。成人前からゼンゲン侯爵家預かりとなっている子爵家の娘ジョゼットは、とある事情でランドリックと親しんでおり、その噂が嘘だと知っている。彼は人の心に鈍感であることに悩みつつも向き合う、真の努力家であり、それでもなお自分に自信が持てないことも、知っていて、密かに心惹かれていた。だが、そのランドリックとの結婚の話を持ちかけられたジョゼットは、彼が自分を女性として見ていないことに、いずれ耐えられなくなるはずと、断る決断をしたのだが――。 (なろう版ではなく、やや大人向け版です)

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

処理中です...