49 / 85
49話
しおりを挟む
王宮にて
「オリビア王女殿下、アカデミーの方はいかがですかな?」
「そんな畏まらずにオリビアと名前で呼んで下さい」
彼女は軽く会釈をしてから答えた。
「ありがとうございます。とても素晴らしい先生方ばかりで、皆様、音楽に造詣が深く、とても勉強になります」
「それは良かった。では失礼して、オリビア嬢と呼ばせてもらいます。それでピアノの方はお気に召しましたかな? オリビア嬢の姉上が使われていた物を調律させたのですが」
「一音一音がはっきりと聞こえ、にごりのない透明感のある音で、とても気に入りました」
と満足げに返してくれた。
「よかったら是非、今度の舞踏会でその腕前をご披露なさってみてはいかがですかな?」
「よろしいのですか? わたくし、人前でピアノを弾くのが大好きですの」
「それではそのように手配いたしましょう」
「ではわたくしも頑張ってレッスンに励みますわ」
そう言って彼女は微笑んだ。
それからしばらくして、王宮では次回の舞踏会に向けた準備が進められていた。
そんな時、私は考えていた。
『アンリ嬢にも招待状を送ったが、来てくれるだろうか』念のため、エマ殿にも送っておいたので、きっと、一緒になら来てくれるのではないかと。
彼女とは、先日の王女の歓迎パーティー以来、会っていなかった。
あの日の彼女はひどく疲れているように見え、その様子がずっと気にかかっていた。だが、王女が王妃候補だという噂が想像以上に広まっていると聞き、アンリ嬢に会うことを、どこかためらってしまっていた。
それに加えて、疲れていたとはいえ、彼女があの男とは踊ったのに、私のダンスの誘いは断ったことが、思いのほか心にこたえていた。
だから今回、本当に彼女は来てくれるのだろうか……そんな不安が胸をよぎっていた。
いよいよ舞踏会当日を迎えた。
ほどなくして、いつもと変わらず美しいアンリ嬢が、エマ殿とともに姿を現した。
彼女が来てくれたことに、私は胸をなで下ろす。
するとエマ殿は、アンリ嬢を伴って私のもとへ挨拶に来てくれた。
先に口を開いたのは、アンリ嬢だった。
彼女は私の隣に立つ王女殿下に向かって、優雅にカーテシーをしながら挨拶をする。
「お初にお目にかかります。エリーヌ家のアンリ・カーティスと申します。以後お見知りおきいただければ幸いです」
続いて、彼女は私に対しても同じように深くカーテシーをし、改まった口調で言った。
「陛下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。本日はお目にかかれて、大変光栄でございます」
そのあまりに他人行儀な態度に、私は居たたまれない気持ちになった。
ほどなくして二人は挨拶を終え、エマ殿とともにその場を離れていった。
その後、大勢の人達からの挨拶を受け、やっと終わる頃にはオリビア嬢のピアノ演奏の披露が始まった。
皆、静かに演奏に耳を傾けて聞いていたが、やがてその曲でダンスをする者達もいて、かなりリラックスした雰囲気となった。そして最後の曲を弾き終えると拍手喝采となって、会場中が沸いた。
そして、それを遠くから見ていたアンリ嬢とエマ殿はいつの間にか王宮から姿が消えていた。
「オリビア王女殿下、アカデミーの方はいかがですかな?」
「そんな畏まらずにオリビアと名前で呼んで下さい」
彼女は軽く会釈をしてから答えた。
「ありがとうございます。とても素晴らしい先生方ばかりで、皆様、音楽に造詣が深く、とても勉強になります」
「それは良かった。では失礼して、オリビア嬢と呼ばせてもらいます。それでピアノの方はお気に召しましたかな? オリビア嬢の姉上が使われていた物を調律させたのですが」
「一音一音がはっきりと聞こえ、にごりのない透明感のある音で、とても気に入りました」
と満足げに返してくれた。
「よかったら是非、今度の舞踏会でその腕前をご披露なさってみてはいかがですかな?」
「よろしいのですか? わたくし、人前でピアノを弾くのが大好きですの」
「それではそのように手配いたしましょう」
「ではわたくしも頑張ってレッスンに励みますわ」
そう言って彼女は微笑んだ。
それからしばらくして、王宮では次回の舞踏会に向けた準備が進められていた。
そんな時、私は考えていた。
『アンリ嬢にも招待状を送ったが、来てくれるだろうか』念のため、エマ殿にも送っておいたので、きっと、一緒になら来てくれるのではないかと。
彼女とは、先日の王女の歓迎パーティー以来、会っていなかった。
あの日の彼女はひどく疲れているように見え、その様子がずっと気にかかっていた。だが、王女が王妃候補だという噂が想像以上に広まっていると聞き、アンリ嬢に会うことを、どこかためらってしまっていた。
それに加えて、疲れていたとはいえ、彼女があの男とは踊ったのに、私のダンスの誘いは断ったことが、思いのほか心にこたえていた。
だから今回、本当に彼女は来てくれるのだろうか……そんな不安が胸をよぎっていた。
いよいよ舞踏会当日を迎えた。
ほどなくして、いつもと変わらず美しいアンリ嬢が、エマ殿とともに姿を現した。
彼女が来てくれたことに、私は胸をなで下ろす。
するとエマ殿は、アンリ嬢を伴って私のもとへ挨拶に来てくれた。
先に口を開いたのは、アンリ嬢だった。
彼女は私の隣に立つ王女殿下に向かって、優雅にカーテシーをしながら挨拶をする。
「お初にお目にかかります。エリーヌ家のアンリ・カーティスと申します。以後お見知りおきいただければ幸いです」
続いて、彼女は私に対しても同じように深くカーテシーをし、改まった口調で言った。
「陛下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。本日はお目にかかれて、大変光栄でございます」
そのあまりに他人行儀な態度に、私は居たたまれない気持ちになった。
ほどなくして二人は挨拶を終え、エマ殿とともにその場を離れていった。
その後、大勢の人達からの挨拶を受け、やっと終わる頃にはオリビア嬢のピアノ演奏の披露が始まった。
皆、静かに演奏に耳を傾けて聞いていたが、やがてその曲でダンスをする者達もいて、かなりリラックスした雰囲気となった。そして最後の曲を弾き終えると拍手喝采となって、会場中が沸いた。
そして、それを遠くから見ていたアンリ嬢とエマ殿はいつの間にか王宮から姿が消えていた。
108
あなたにおすすめの小説
虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。
専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】
幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。
そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。
クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
王妃候補は、留守番中
里中一叶
恋愛
貧乏伯爵の娘セリーナは、ひょんなことから王太子の花嫁候補の身代りに王宮へ行くことに。
花嫁候補バトルに参加せずに期間満了での帰宅目指してがんばるつもりが、王太子に気に入られて困ってます。
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる