【完結】《今世は、彼と出会わない》何度死んでも愛してる

のんびり歩く

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彼女の話

これから

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「伯祖母様、やっぱり無理かしら?」

すっかり存在を忘れていた軽やかな声の主・・・テレサ。
心配そうにこちら見ているテレサに、一瞬だけ彼を押し付け・・・任せてしまおうかと思ってしまった。
だって、どう考えても今世で彼を夫として迎えるのは無理。

今世の彼に出会う前であれば、間違い無く私は胸を張って、彼がどんな姿をしてようとも私は彼を愛している、と言えただろう。それが悲惨な最後を迎えると分かっていても、出会ってしまえば離れる事など考えられず、彼を愛しただろう。

けれど今の彼の姿は・・・私の精神を削っていく。
艶やかな皺の無い張りのある肌が、声変わりのしていない軽やかな声が、小さくて守ってあげたくなる様な姿が、老婆の姿をした私の精神を地味に削っていく・・・
こんなに若々しい彼の隣に妻とし立つ・・・流石に無理です。

かと言ってテレサにその気持ちをぶつけるわけにもいかず、言葉を濁した。

「あのねテレサ、彼はああ言っているけれど、流石にねぇ・・・。」

「あの・・・伯祖母様、私には、伯祖母様とベルがどんな話をしていたか、全く分からなかったのですけれど。」

あっ・・・やってしまった。
多分だけれど、彼に出会って『何で・・・』と声を漏らしてからずっと、他の世界の言葉で話していのだと思う。

「ごめんなさいね、彼が異国の言葉を流暢に話していたから、つい私もつられて異国の言葉で返事をしていたわ。」

異国というか異世界の言葉だし、異世界の言葉を話し始めたのは、多分私が先だったけれど、全てを説明出来るはずが無い。説明したところで、とても信じられる話しでは無い。

そんな事を思っている間に、彼が不安そうな表情り作り、テレサに話しかけていた。

「奥様、シルビア様は私と一緒に暮らしても良いと言って下さったのですが、私が幼い事を気にしてらっしゃる様で、同年代の子供の多い奥様の屋敷の方が良いのではないかと・・・」

え?
待って、私そんな事、一言も言っていないのだけれど。
これは・・・多分、いやほぼ間違いなく、彼はテレサに援護をさせる気だ。

「まあ、そうなの?それなら、何の心配もいりませんわ伯祖母様。さっきも言いましたが、この子は、大人顔負けの頭脳と、身体能力を持っているの。それに随分と大人びていて、息子や娘達の良きお手本になっているのよ。ただ、私の屋敷では子供達が多過ぎて、この子が休めないの。だから、伯祖母様が良いと言ってくださるなら、この子の為にもお願いいたします。」

テレサ・・・貴女、伯爵夫人だったわよね?
うっかり孤児を拾ってくるのもどうかと思うけれど、その子を伯祖母である私に簡単に預けて良いの?
ペットを飼うとは、わけが違うのよ。

そんな私の心の声が聞こえたかの様に、テレサは言葉を続ける。

「それに孤児と言っても、この子は知り合いの商家の息子さんで、身元ははっきりしているの。ただちょっと、大変な事に巻き込まれて、ご両親を亡くしてしまって・・・勿論、その辺の処理は全て済ませてますから、伯祖母様に迷惑がかかる様な事にはなりませんわ。だった大変な思いをしたこの子には、少し落ち着ける場所が必要だと思うの・・・だから、ね?」

幼子の様に、ウルウルとした視線を私に向け、懇願するテレサ。
その横で、同じように懇願する様な表情をしている彼。
そんな二人を拒絶なんて出来ない・・・

『言っておくけれど、私の側にいるのなら約束して。絶対に私が死ぬまでは、他の女性の元へは行かないって。』

彼だけに分かる様に、今度は意識してこの世界では使われない言葉でそう言うと、彼は首を傾げ心底不思議そうな表情を浮かべる。

『何を当たり前の事を言っているんだ?君が側にいるのに、他の者など目に入るはずが無いだろう?それに、この世界を去る時は私も共に行くに決まっている。』

『・・・は?まだ、少年と言われる歳で、何を言っているの?』

『そうだな、この身体は確かに少年だったな。だが来世で共に転生する為には、やはりこの世を去るのは、同じにした方が良いだろう。来世では、産まれた瞬間に婚約者となり、10代で結婚する予定だからな。時間がずれると、どちらかが待たされることになってしまう。今世では随分と待たせてしまったが、来世では夫婦として幸せになろうな。ああ勿論、今世も君と居られれば幸せだが、来世はもっと夫婦としての触れ合いをだなぁ・・・』

頬を赤らめ、モジモジとしている少年・・・
その歳で来世の話って、本当にもう何なんでしょう。
まさかとは思いますが、彼が少年の姿で私の前に現れる事となった野暮用って、来世に関係してませんよね??
いや、やめておこう。考えたら駄目な気がします。

はああああぁぁぁぁ・・・・

「テレサ、分かりました。この子はウチで引き取ります。」

「本当ですか伯祖母様。」

瞳を輝かせながら、嬉しそうにしているテレサ。
その横で、テレサ以上に嬉しそうにしている彼。

「ええ。だけど私も若くはないわ。だから、私に何かあった時には、彼の事をお願いね。」

『俺は、ララベルと一緒にこの世を去るのに・・・』

ボソリと漏らす彼の声が聞こえたけれど、聞こえないふりをする。人生何が起きるか分からない。
多分、分からないはず。分かっている人がいる気がするけど・・・分からないはず!!

「はい、勿論です伯祖母様。ありがとうございす。ベルも良かったわね。」

「奥様のおかげです。ありがとうございます。」

二人して嬉しそうにしている姿を見ながら。私は、嬉しい様な、悔しい様な、複雑な気分を抱え、苦笑いを浮かべてた。

結局、形だけ彼を拒絶してみたものの、こんな老婆の姿になっても、私に愛を向けてくれる彼を拒絶できるはずなんてなかった。

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