弟の学費を払うために恋愛リアリティーショーに出演することになりました

むつらら

文字の大きさ
4 / 5

ep4

しおりを挟む
撮影所の薄暗い通路。雑多な機材の音と、スタッフたちの掛け声が交錯していた。
エキストラとして呼ばれた風太は、案内のADに声をかけられる。

「エキストラの方?」
「はい。僕です。」

「マネージャーの方は?」

風太は一瞬ためらい、かすかに笑って答えた。
「すみません。今日は一人なんです。」

ADは驚いたように眉を上げるが、すぐに淡々とした口調に戻った。
「そうなんですね。こちらどうぞ。」

その時、別のADが大声を張り上げる。
「主演の西条元太さん、入られます!」

スポットライトが差し込むように、空気がざわついた。スーツ姿のマネージャーに付き添われ、元太が堂々と入ってくる。かつて同じエキストラ仲間だったはずの男。その姿に、周囲が一斉に視線を注ぐ。

「見ろよ。アイツ、主演だって。」
隣にいた先輩俳優が小声で吐き捨てるように言った。

「そうですね。」と風太は穏やかに返す。

「お前、悔しくないのかよ。マネージャー、一緒だろ?小林さん、お前の現場には一切ついてきてないじゃないか。」

「まあ……いつものことなんで。」

風太の声は淡々としていた。慣れてしまった痛みは、表情には出ない。

「アイツもこの間まで俺らと一緒にエキストラしてたのにな。」
「そうですよね。風太なんて一時期セット売りされてたのに、こんなに差ができてさ。」

「先輩……」
さすがに言い過ぎだと後輩が口を挟む。

「あ……ご、ごめん。」
先輩は気まずそうに目を逸らした。

「全然大丈夫ですよ。事実なんで。」
風太は静かに笑ってみせる。その笑顔が余計に痛々しかった。

そんな中、もう一人の俳優が口を開いた。
「そういえば……アイツの噂、聞きました?」

「アイツ?」
「元太ですよ。」

「元太がどうしたんだ?」

俳優は声を潜めた。
「あいつが売れた本当の理由です。」

「……本当の理由?」

「この間までエキストラだったのに、急に連ドラの主演なんておかしいと思いませんでしたか?」

「確かに……」

「――あのパーティーですよ。」

その一言に、周囲の空気が重くなる。

「……あのパーティー?」風太は首をかしげた。

「風太、知らないのか?」先輩俳優が目を丸くする。

「はい。」

「うちの事務所の女社長いるだろ?」

「西園寺レミさんですよね。」

「そう。そのレミさんが主催するパーティーがあるんだ。お気に入りの所属タレントだけを招いて……好き放題してるって噂だ。そのパーティーに行った奴は必ず売れるって言われてる。」

言葉を濁しながらも、先輩の目は本気だった。

「俺も一度だけ行ったことがある。でも……二度と行かないって心に誓ったね。」

「なぜです?売れるかもしれないのに?」風太が思わず問い返す。

先輩は顔をしかめ、低く呟いた。
「……まあ、お前も行ってみたらわかるよ。あの女は……恐ろしいんだよ。あの女は。」

その声は震えていた。
風太の胸に、得体の知れない不安がじわじわと広がっていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...