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danger15
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レコーディング室に歌声が響いていた。
マイクの前で大和が真剣に歌い上げ、最後のフレーズを終えると、ゆっくりとヘッドフォンを外す。
ガラス越しに見守っていた danger15 のメンバーたち。その空気を最初に破ったのは最年少のミネだった。
「さすが大和さん。全然違う」
目を輝かせるミネに、太一も頷く。
「だな。俺、感動しちゃった」
しかし、リーダーだけは腕を組んで冷ややかに吐き捨てた。
「みんな大袈裟だな。こんなの大したことないだろ。俺たちだってできるはずだ。それに──いつまで俺たちは、アイツの曲を歌わなきゃいけないんだ?脱退してからもう何年経つと思ってんだよ」
険悪な空気の中、らいとが口を開いた。
「それ、リーダーが言います?リーダーが良い曲書けないから、大和さんに頼ってるんじゃないんですか?」
リーダーの目が鋭く光る。
「……お前、もう一回言ってみろよ」
今にも掴み合いになりそうな二人の間に、太一が慌てて割って入った。
「リーダー、やめてください!二人とも落ち着けって」
そのとき、ドアが開いて大和が作業室に姿を現す。
「……俺だって、本当は薬物容疑で捕まったやつに頼りたくないですよ」
らいとは大和に視線を投げつけながら続ける。
「でもそうしないと、俺たちの人気が危ういから。リーダーだって、大和さんが抜けてから人気が落ちてるの、気づいてますよね?」
リーダーは何も言えず、押し黙った。
らいとは深いため息をつき、視線を逸らす。
「だったら我慢してくださいよ。じゃなかったら……俺ももう我慢できません」
吐き捨てるように言い残すと、らいとは部屋を飛び出した。
「おい、らいと!待てよ!」太一が追いかける声を張るが、返事はない。
重苦しい沈黙が落ちた。
やがてリーダーが苛立ったように叫ぶ。
「なんで俺だけが悪いんだよ!お前らだっていい曲ひとつ書けねえじゃねえか。もうやってらんねえ……俺もこんなグループやめてやる!」
椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がり、部屋を出ていく。
「リーダー、待ってください!まだレコーディング終わってないですよ!」太一が必死に呼び止めるが、リーダーは振り返りざまに吐き捨てた。
「お前もいつまでも大和なんかに構うなよ。グループを捨てた奴なんかに」
その言葉に、太一は言葉を失う。
ミネは二人の顔色を交互に見て、怯えたように立ち上がった。
「おい、ミネ、行くぞ」
「は、はい……」
リーダーに促されるまま、ミネも部屋を後にした。
残されたのは大和と太一。
「……太一、ごめん。俺のせいだよな」
「いや、大和のせいじゃないよ」
太一は首を振る。
「俺が抜けてから、ずっとこんな感じなのか?」
「ああ。結果が出せなくて……曲を書ける人もいなくてさ。そのせいでリーダーが思い詰めてるんだ」
「そ、そうなのか……」
大和は苦しげに目を伏せた。
しかし太一は明るく言葉を続ける。
「でも、今回大和に曲を書いてもらって助かったよ。これでまた、俺たちも輝ける。いつかは大和も復帰するのを……俺、待ってるからな」
「いや、俺は……」大和が言いかけたそのとき、太一のスマホが鳴り響いた。
「ごめん、マネージャーからだ。行かないと」
「おう」
「じゃあ、大和。復帰の件、考えとけよ」
「……ああ。わかったから」
太一は軽く手を振って出ていった。
静寂が訪れる。大和の手元で、今度は自分のスマホが震えた。
画面には「愛」の文字。
通話ボタンを押す。
「もしもし。愛?」
『うん。曲、聞いたよ。感動した。ありがとう』
「本当?良かった。……愛、今から会える?」
『うん』
「じゃあ、いつものレコーディング室で待ってる」
『わ、わかった』
通話が切れると、大和は胸に温かいものが広がっていくのを感じた。
仲間の亀裂、失った信頼。
それでも「愛」という存在が、彼にまだ希望を与えていた。
マイクの前で大和が真剣に歌い上げ、最後のフレーズを終えると、ゆっくりとヘッドフォンを外す。
ガラス越しに見守っていた danger15 のメンバーたち。その空気を最初に破ったのは最年少のミネだった。
「さすが大和さん。全然違う」
目を輝かせるミネに、太一も頷く。
「だな。俺、感動しちゃった」
しかし、リーダーだけは腕を組んで冷ややかに吐き捨てた。
「みんな大袈裟だな。こんなの大したことないだろ。俺たちだってできるはずだ。それに──いつまで俺たちは、アイツの曲を歌わなきゃいけないんだ?脱退してからもう何年経つと思ってんだよ」
険悪な空気の中、らいとが口を開いた。
「それ、リーダーが言います?リーダーが良い曲書けないから、大和さんに頼ってるんじゃないんですか?」
リーダーの目が鋭く光る。
「……お前、もう一回言ってみろよ」
今にも掴み合いになりそうな二人の間に、太一が慌てて割って入った。
「リーダー、やめてください!二人とも落ち着けって」
そのとき、ドアが開いて大和が作業室に姿を現す。
「……俺だって、本当は薬物容疑で捕まったやつに頼りたくないですよ」
らいとは大和に視線を投げつけながら続ける。
「でもそうしないと、俺たちの人気が危ういから。リーダーだって、大和さんが抜けてから人気が落ちてるの、気づいてますよね?」
リーダーは何も言えず、押し黙った。
らいとは深いため息をつき、視線を逸らす。
「だったら我慢してくださいよ。じゃなかったら……俺ももう我慢できません」
吐き捨てるように言い残すと、らいとは部屋を飛び出した。
「おい、らいと!待てよ!」太一が追いかける声を張るが、返事はない。
重苦しい沈黙が落ちた。
やがてリーダーが苛立ったように叫ぶ。
「なんで俺だけが悪いんだよ!お前らだっていい曲ひとつ書けねえじゃねえか。もうやってらんねえ……俺もこんなグループやめてやる!」
椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がり、部屋を出ていく。
「リーダー、待ってください!まだレコーディング終わってないですよ!」太一が必死に呼び止めるが、リーダーは振り返りざまに吐き捨てた。
「お前もいつまでも大和なんかに構うなよ。グループを捨てた奴なんかに」
その言葉に、太一は言葉を失う。
ミネは二人の顔色を交互に見て、怯えたように立ち上がった。
「おい、ミネ、行くぞ」
「は、はい……」
リーダーに促されるまま、ミネも部屋を後にした。
残されたのは大和と太一。
「……太一、ごめん。俺のせいだよな」
「いや、大和のせいじゃないよ」
太一は首を振る。
「俺が抜けてから、ずっとこんな感じなのか?」
「ああ。結果が出せなくて……曲を書ける人もいなくてさ。そのせいでリーダーが思い詰めてるんだ」
「そ、そうなのか……」
大和は苦しげに目を伏せた。
しかし太一は明るく言葉を続ける。
「でも、今回大和に曲を書いてもらって助かったよ。これでまた、俺たちも輝ける。いつかは大和も復帰するのを……俺、待ってるからな」
「いや、俺は……」大和が言いかけたそのとき、太一のスマホが鳴り響いた。
「ごめん、マネージャーからだ。行かないと」
「おう」
「じゃあ、大和。復帰の件、考えとけよ」
「……ああ。わかったから」
太一は軽く手を振って出ていった。
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通話ボタンを押す。
「もしもし。愛?」
『うん。曲、聞いたよ。感動した。ありがとう』
「本当?良かった。……愛、今から会える?」
『うん』
「じゃあ、いつものレコーディング室で待ってる」
『わ、わかった』
通話が切れると、大和は胸に温かいものが広がっていくのを感じた。
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それでも「愛」という存在が、彼にまだ希望を与えていた。
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