彼が浮気相手と逮捕されたので復讐することにしました

むつらら

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交差する思い

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レコーディング室の扉を開けると、懐かしい匂いが漂った。機材の冷たい光と、壁一面に貼られた吸音材。愛は思わず目を丸くする。

「うわ……久しぶりだなあ、この部屋。」

「だよな。」大和が笑う。「愛、来るのいつぶりだっけ?」

「三年前かな。大和が曲作ってくれた時。」一瞬ためらってから口にする。「……大和が逮捕される前。あ……ごめん。」

言った瞬間、後悔の色が顔に広がる。だが大和は首を振った。
「いいよ。謝るのは僕の方だから。」

空気が重くなった。互いに言葉を探せず、数秒の沈黙が流れる。

やがて大和が声をかける。
「……歌ってみる?」

「え?」愛が目を瞬かせる。

「僕の曲、聞いてくれたんだよね?」

「……うん。歌ってみようかな。」

大和はそっと歌詞カードを差し出した。愛は受け取り、ブースへ入る。マイクの前に立ち、深呼吸を一つ。音楽が流れ出し、声を乗せる。

——あれ?なんだろう。この感覚……。
胸の奥に広がるのは、不思議な解放感。ステージで歌うときよりものびやかで、心が震えるような響き。

ブース越しに大和の表情が見えた。驚いたように、そして嬉しそうに。

「愛……めっちゃ良いよ。」

マイク越しに聞こえたその言葉に、思わず頬が熱くなる。
「あ、ありがとう。」

レコーディングを終えてブースを出ると、大和がまっすぐに告げた。
「もう一度、愛と一緒に仕事がしたい。この曲で。」

その真剣さに心が揺れた。けれど、すぐに首を横に振る。
「ありがとう。気持ちはすごく嬉しい。でも……今の私、ヤングさんにすごくよくしてもらってる。だから、彼を裏切ることはできない。ごめん。」

大和はほんの一瞬だけ寂しげな表情を浮かべ、すぐに笑顔を作った。
「そ、そうだよね。」

愛は視線を落としながら、それでも心からの言葉を口にした。
「でも……今日、大和と久しぶりにこうやって歌えて、本当に嬉しかった。ありがとう。」

「こちらこそ。嬉しかったよ。」

その時、愛のスマホが鳴り響いた。画面には「マネージャー」の文字。

「……マネージャーさんからだ。もう行かないと。」

「じゃあな。」

扉を閉めて振り返った時、大和の姿はスタジオの灯りの中に静かに溶けていた。
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