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転生美幼女①
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人生において、どうにもならないことが一つある。それは顔だ。
整形すらも施せない私の顔に、最初から人生というものは存在しなかったのだろう。
あまりの顔の悪さに一流大学を出ても就職すらもできず、彼女を作ることなんて夢のまた夢だった。
もし叶うなら、次は美しい少女になりたい。手の届くことのない女性という存在に、私は憧れを抱いていた。
私の体は30歳を過ぎたあたりで周りを見返すことに限界を迎え、過労で命を落とすことになった。
死後の世界というものを信じてこなかった私は、自分の体から魂が離れて宙へ浮くの見て、驚きに言葉も失った。
魂となった私はぐんぐんと上へ上り、ついには雲を突き抜け、花畑の上に立つ。
一面に彼岸花が咲き乱れ、遠くの方にこの世の物とは思えないほどの”美しい花”が咲いているのを見た。
すると突然、大きな冷たい風が私の間をすり抜けた。自分の邪な気持ちがどんどんと消えていくようで、抱えてきた辛さや悲しみが外に溶けだしていくのを感じる。
見れば、背中に白い翼を生やした子供が私の元へと向かっているようだった。
しかし、私の顔を見るや否や、天使らしき子供たちは絶望しきった顔をして私を雲の縁へと立たせた。
あろうことか。天使らしき子供たちが私を下へと突き落としたのだ。
ひたすら自由落下していく私の体は、無抵抗のまま途端に地面に激突して倒れた。
しかし、私の体は無傷のまま立ち上がることができ、痛みこそあるものの、欠損一つもない自分の体を見て、驚きばかりが先行した。
「なんともまあ、罪もないのに地獄へ落されるとは酷い話もあるものだ。しかし、この顔は見るからに酷い」
起き上がってみると声のした方向を見てみると、3メートルはあろうかという髭を蓄えた大男が私を見下ろしているのが分かった。しかも、そいつは私の顔を侮辱し、憐れむどころか笑い始めたのだ。
「笑うだなんて酷いじゃありませんか! 私だって好きでこんな顔に生まれたわけではありませんよ!」
「おや、失敬した。あまりにも見ない顔だったのでつい笑ってしまった。しかし、顔の悪さを笑うという行為は罪には当たらないという不可思議なものである。して、私は閻魔大王である」
そう言って大男が笏を立てると、後ろで大きく火の粉が舞い上がった。
見れば、確かにここは地獄のようにも見えた。たまらないほどの熱気が降り注ぎ、私の顔が焼かれていく。
湿度と熱気のせいで呼吸もしづらく、私はたまらず倒れ込む。
「私はこれからどうなるのでしょうか?」
「残念ながら反省をした人間に、地獄にも居場所はない。天界からも追放された身では天にも上がることはできないだろう。しかし、それではあまりにも不憫だ。一度魂を作り変えてもらった方が良いだろう」
「魂を作り変えるとは?」
「輪廻の輪に戻り、新しい命に生まれ変わるのだ」
「それだけは止めてください。私は人生に疲れました。この醜い顔のせいで報われたことなど一度たりともありません。できれば、生まれ変わりなどしたくもないのです。ましてや人間に生まれ変わるとしたら死よりも酷い侮辱です。私にどれだけの業を背負わせるつもりなのか? まだ私の顔を笑うおつもりなのですか?」
「確かにお前の言うとおりだ。これほどの酷い話はそうそう無い。しかし、輪廻を外れるには、修行を積み、解脱をする必要がある。だが、おまえをまた修行の地へと赴かせるのはあまりに可哀そうだ。その魂は疲れ切っていて生まれ変わったところで自ら死を望んでしまうだろう。それに、おまえはその醜い顔のせいで徳を積む機会すらも与えられていなかった。生まれ変わる先がないのだ」
「では、私はどうなるのですか?」
「ゆえに、地蔵菩薩としての私がお前を救おうと言うのだ。お前を別の世界の輪廻に入れてやる。そして、一つだけ願いを叶えてやろう」
「たった一つだけなのですか? それでは自分の消滅を願うしかありません」
「転生は決定であり、消滅は認められない。お前はどんな存在に生まれ変わりたいのだ? 言うてみよ」
「私は、私は、誰もが羨む美しい外見に生まれ変わりたいのです」
「それは時として呪いとなるぞ。人の嫉妬や惚れはなによりも醜い。それに、自分の欲を抑えられなくなることもある。それでも望むのか?」
「構いません。いつだって私は呪われていました。一つ減って一つ増えるだけです」
「では、生まれ変わったら何をしたい?」
「与えられたもの以上のものを手に入れることです」
「ならば分かった。それではまず私から賛辞を贈ろう。その醜い顔のせいで酷い仕打ちを受けながらも決して自分本位な行動には走らなかった。その辛さは解脱の修行にも及ぶことだろう。よくぞここまで生きていた。次は報われるための人生を送るのだ。しかし、心せよ。お前の望みは呪いでもあるのだ」
整形すらも施せない私の顔に、最初から人生というものは存在しなかったのだろう。
あまりの顔の悪さに一流大学を出ても就職すらもできず、彼女を作ることなんて夢のまた夢だった。
もし叶うなら、次は美しい少女になりたい。手の届くことのない女性という存在に、私は憧れを抱いていた。
私の体は30歳を過ぎたあたりで周りを見返すことに限界を迎え、過労で命を落とすことになった。
死後の世界というものを信じてこなかった私は、自分の体から魂が離れて宙へ浮くの見て、驚きに言葉も失った。
魂となった私はぐんぐんと上へ上り、ついには雲を突き抜け、花畑の上に立つ。
一面に彼岸花が咲き乱れ、遠くの方にこの世の物とは思えないほどの”美しい花”が咲いているのを見た。
すると突然、大きな冷たい風が私の間をすり抜けた。自分の邪な気持ちがどんどんと消えていくようで、抱えてきた辛さや悲しみが外に溶けだしていくのを感じる。
見れば、背中に白い翼を生やした子供が私の元へと向かっているようだった。
しかし、私の顔を見るや否や、天使らしき子供たちは絶望しきった顔をして私を雲の縁へと立たせた。
あろうことか。天使らしき子供たちが私を下へと突き落としたのだ。
ひたすら自由落下していく私の体は、無抵抗のまま途端に地面に激突して倒れた。
しかし、私の体は無傷のまま立ち上がることができ、痛みこそあるものの、欠損一つもない自分の体を見て、驚きばかりが先行した。
「なんともまあ、罪もないのに地獄へ落されるとは酷い話もあるものだ。しかし、この顔は見るからに酷い」
起き上がってみると声のした方向を見てみると、3メートルはあろうかという髭を蓄えた大男が私を見下ろしているのが分かった。しかも、そいつは私の顔を侮辱し、憐れむどころか笑い始めたのだ。
「笑うだなんて酷いじゃありませんか! 私だって好きでこんな顔に生まれたわけではありませんよ!」
「おや、失敬した。あまりにも見ない顔だったのでつい笑ってしまった。しかし、顔の悪さを笑うという行為は罪には当たらないという不可思議なものである。して、私は閻魔大王である」
そう言って大男が笏を立てると、後ろで大きく火の粉が舞い上がった。
見れば、確かにここは地獄のようにも見えた。たまらないほどの熱気が降り注ぎ、私の顔が焼かれていく。
湿度と熱気のせいで呼吸もしづらく、私はたまらず倒れ込む。
「私はこれからどうなるのでしょうか?」
「残念ながら反省をした人間に、地獄にも居場所はない。天界からも追放された身では天にも上がることはできないだろう。しかし、それではあまりにも不憫だ。一度魂を作り変えてもらった方が良いだろう」
「魂を作り変えるとは?」
「輪廻の輪に戻り、新しい命に生まれ変わるのだ」
「それだけは止めてください。私は人生に疲れました。この醜い顔のせいで報われたことなど一度たりともありません。できれば、生まれ変わりなどしたくもないのです。ましてや人間に生まれ変わるとしたら死よりも酷い侮辱です。私にどれだけの業を背負わせるつもりなのか? まだ私の顔を笑うおつもりなのですか?」
「確かにお前の言うとおりだ。これほどの酷い話はそうそう無い。しかし、輪廻を外れるには、修行を積み、解脱をする必要がある。だが、おまえをまた修行の地へと赴かせるのはあまりに可哀そうだ。その魂は疲れ切っていて生まれ変わったところで自ら死を望んでしまうだろう。それに、おまえはその醜い顔のせいで徳を積む機会すらも与えられていなかった。生まれ変わる先がないのだ」
「では、私はどうなるのですか?」
「ゆえに、地蔵菩薩としての私がお前を救おうと言うのだ。お前を別の世界の輪廻に入れてやる。そして、一つだけ願いを叶えてやろう」
「たった一つだけなのですか? それでは自分の消滅を願うしかありません」
「転生は決定であり、消滅は認められない。お前はどんな存在に生まれ変わりたいのだ? 言うてみよ」
「私は、私は、誰もが羨む美しい外見に生まれ変わりたいのです」
「それは時として呪いとなるぞ。人の嫉妬や惚れはなによりも醜い。それに、自分の欲を抑えられなくなることもある。それでも望むのか?」
「構いません。いつだって私は呪われていました。一つ減って一つ増えるだけです」
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