ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

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大蛇の少女

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 女の子という言葉に反応して魔力が緩む。

 その一瞬の隙に大蛇は逃げ出し、森の奥へと逃がしてしまった。

「女の子と言ったな? どういうことだ?」

「ノロイを受けたんだ。だから、ダレも手出しができない」

「だが、拘束するくらいはできるはずだ。どうして誰も助けようとはしない?」

 私の言葉にバーサーカーが口ごもる。

「ミンナそんなに強くないから……」

 バーサーカー。その巨体は飾りか? と一瞬考えてしまうが、それは酷いことだと思い直す。

「なら、呪いを解除する方法はないのか?」

「ここのみんなはそんなに頭が良くないから……」

「それなら私が大蛇を止める」

 バーサーカーが再度、私を呼び止めようとするも、大鷲の姿に変えた私は一気に空に飛びだす。


ーーーーーーーー


 いた!

 木々が倒され、大きく円を描くように、山肌が露になっている場所がある。その真ん中に、大蛇は苦しそうにもがいていた。

 大蛇に向けて滑空をするが──。


 気づかれた!!


 急降下で飛び込む私に向かって、大蛇の頭が大口を開けて飛び上がってきた。


 私は大鷲の姿をとき、空中で落下するまま召喚陣のスクロールを敷く。


「押し留めろ! 武者!」


 スクロールから現れた武者が、二本の刀を抜いて、大蛇の口に斬りかかる。
 牙を押し留め、それ以上開かなくさせた。

「絶対に殺すなよ! それは人間の女の子だ!」

「御意!」


 私は再び大鷲の姿になって、地面に着地する。


 私の呪文で木々が生え、落ちてきた大蛇を受け止める。そのまま、大蛇の体に木々が絡まり、動きを拘束する。
 木々が全身を覆い、ようやく動きが止まった。


 呪いを解くためにも、大蛇の様子を観察するが、専門的な知識が必要である以上、私の知識にも限界がある。
 ここは、アデ先生を呼んだ方が良いかもしれない。

 武者に命令してアデ先生を呼び寄せる傍ら、私は呪いに関する教科書を思い出す。

 呪いという一般的なものは、魔方陣を直接対象者に刻印し、刻印された人間の魔力を自動的に消費して発動するもので、単純な呪いであれば、魔方陣を消してしまえば良いはずだ。

 問題はその魔方陣の解析にかかる時間と、不可逆性の有無だ。

 例えば、遺伝子単位で呪いによる改造が行われ、完全な竜へと人が変貌を遂げた時、これは、もとに戻すことはできない。

 しかし、完全な変貌というものは基本的に存在しえない。なぜなら、人間が神になるのと同義で、完全な創造などありえないからだ。どこかに、必ず痕跡というものが見つかる。

 この蛇の体にしても、遺伝子を剥がすようにして、表層の変貌を剥がせばもとに戻るはずだ。

 あと、問題になるのは、時間だろう。
 この蛇が何を食べて生きていたのか知らないが、およそ、食事をとらなければ、呪いを解く前に死んでしまう。
 まあ、そんなことはおそらくないだろうが。


 私は大蛇の体を隅々まで見回し、さっそく、魔方陣の刻印を探すことにした。

 しかし、表層には見当たらず、内蔵に刻印されている可能性があった。

 私が中に入るにしても、消化液などで溶かされてしまうだろう。

 そんな困っている状況で、ようやくアデ先生がやってきた。

 アデ先生を担ぎ上げた武者が、ものすごい勢いで飛び上がってここまでやってきた。


「早かったな」

「死ぬう! しんじゃう! ベロ噛んじゃった!」

「どれ、治してやる」


 アデ先生が蒼白した様子で倒れる。
 白目を剥いて気絶してしまったようだ。


「すまないが起きてくれ」


 頬を揉んで起こす。


「へあ? 何で私こんなところに?」

「記憶まで飛んだか。すまない。次からはもっと優しく連れてくるように言うよ」

「この大蛇なんだが、バーサーカーから聞いたところによると正体は人間の女の子らしい。助けてやりたいんたが、表層に魔方陣が無くてな、中にあるのかもしれないが呪いが解けないんだ」


「えっと……、えっとね……」


 まだおぼつかない足取りでアデ先生が大蛇の体を調べる。

 表面触ったり、鱗を剥がしたり、そうしていると、アデ先生が木の棒を探してしきて、大蛇の肛門にその枝を突っ込んだ。

 大蛇は暴れだし、この世の終わりとでも叫ばんばかりに、苦しみ暴れだす。

 そうして、アデ先生は木の棒で肛門を突き続けているのだが、突如、ボコッと肛門の辺りが膨れ上がり、中から木の像のようなものを排泄した。

 途端に大蛇は縮み、10歳くらいの裸の女の子になった。
 酷いことに、その少女はお尻から血を流して倒れていた。

 急いで私の上着を被せ、お尻の回復を行う。


「どうして元の姿に戻ったんだ?」

「通常、生き物の体に魔方陣を刻むのは結構大変なことなの。生き物本来の治癒能力もあるしで、魔方陣を維持するだけでも大変なの。だから、排泄されないような大きなものを飲み込ませたりして、体内に魔方陣のある物を送り込むの」


「だが、この木の像大きさは女の子の大きさよりもふた回りは大きいぞ飲み込むことはできないだろ?」


 私がそう聞くと、アデ先生は得意気な顔をした。


「最初の魔方陣は、治癒能力によって消えてしまったけど、蛇かなにかに姿を変えられた時に、木の象を飲み込まされたってのが答えよ。木材は体液を吸って、体の中で消化されずに膨らむことが多いから排泄もされづらいの」


「なるほどな。やはり、アデ先生は頼りになるな」

「もっと誉めてくれてもいいのよ?」


 鼻を高くして誇らしげなアデ先生がちょっと可愛く見えてきた。


「私はそんなところにも、惚れているのだろう。さて、一旦、この子を村に連れ戻すとしよう。木の像については、無くならないといいが、アデ先生も一緒に帰ろう。子供たちが心配だ」


「分かった」
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