ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

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接敵! クレイジーサイコレズ!

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 一夜明け、私はアデ先生と共に、あのバーサーカーと話をしようとする。
 が、魔族というものは、個体差がないのか、私の目が悪いのか、個体ごとの詳細な判別がつけられず、見つけるどころか、何度も同じ相手に話しかけてしまう始末。

 仕方なく、昨日助けた少女の家に訪ねるが、少し話をしようとして、今度は、休みの旦那と回復した娘を含めて、家族総出で出迎えられてしまった。

 最初は娘が可愛らしくお辞儀をして、母親が折角だからと、お茶を出してくれる。
 お構いなくと言う私なのだが、アデ先生に、相手の気づかいや感謝を受け入れることが礼儀だと諭され、私は素直に受け入れることにした。

 ふと見ると、アデ先生が目を輝かせていたが、私は気にしないことにした。信じるのも必要なことだろうと思ったのだ。

 アデ先生が女の子の顔を覗き込む。


「お名前はなんていうの?」

「マオリ」

「マオリちゃんってお名前ね。可愛いわね」


 アデ先生が、マオリの腕を握って、微笑む。


「ところで、君はどうして、あんな大蛇に?」

「えっと……。変んな女の人がいて……」

「変な女の人?」

「うん……」

「どこでその人を見たの?」

「森の中で遊んでて……」


 マオリちゃんは、もじもじと喋り、要領を得ない。
 しかし、まあ、四五六歳のこのくらいの子なら、これも当然だろうと、私もゆっくりと聞いていく。

 どうにも、話を整理していくと、他の子と森の中で遊んでいたら、女の人からお菓子をもらったらしい。
 それで気を許して、もっとお菓子をもらえると言われてついて行ったら、そこで記憶が飛んだそうだ。


「じゃあ他に、その女の人を見たっていう他に遊んでた子と、どんな女の人か詳しく教えてもらえるかな?」

「えっと……」


 マオリちゃんが話を整理できるまで、私も時間が許す限り、ゆっくりと話しを聞いていく。
 そうしていると、他の目撃者の情報と、当時の女の姿を知ることができた。

 マオリちゃんが子供なので証拠としてはあまり強くないが、集まればなんとやらだ。
 紫色の髪か……。染めているのだとしたら、今頃、別の髪色になっているかもな。
 
 そうして、他にも目撃情報を探るが……。知っているはずの子供たちは、なぜか女の姿を覚えていなかった。


「子供だから勘違いしたとか?」

「それも考えたのだがどうだろうな。まあ、とにかく、その女という奴とバーサーカーを探していこう」

「そうだね」

 
 地道に一人ひとり目撃情報の聞き込みをしていくが、なにせ数が多すぎる。小さい場所とはいえ、300人相当も当たっていたら日も傾き始めていた。しかも、結局何も情報は得られなかった。
 
 アデ先生はくたくたになっているし、人通りも少なくなってきたので、今日の聞き込みはこれで終えることにした。

 今のうちに、召喚獣の鳥を放ち、周囲に怪しい動きがないか探らせておく。
 こういうときに、アレクサンダーは元人間なので、何かあったときには知能があるので使い道がある。
 意思疎通ができるということは、それだけで便利だろう。報告もちゃんとやってくれる。

 鳥といっても、梟なので、夜目は効くはずだ。朝になったら鷲にでも姿を変えて、件の女を探させるとしよう。

 さて、私も眠くなってきたので、ベッドに入るとしよう……。


ーーーーー


 なんだか、寝苦しくて、眠りから覚めてしまった。
 どうにもなにかが私の上に乗っかっているような気がする。幽霊ではないと思いたいが、恐る恐るうっすらと目を開けると、やはり、何かが乗っかっていた。

 暗くて分からないが、髪が長く、女のようだった。

 護身用にベッドの裏に張っておいた召喚のスクロールに手を伸ばそうとするが、口を塞がれ、腕を掴まれてしまった。

 そして、べっとりとした液体が私に降りかかった。

 女の体が私にのしかかり、今度は私は必死に枕元にあるナイフを取り出そうとするが、急に女の力が弱くなった。

 女の体を押し飛ばすと、ごろんと床に転がった。それから急いで明かりをつけると、血まみれになった女の体がカーペットに転がっていた。

 後から武者が入ってきて、


「申し訳ありません。中に入られてしまいました」

「なんだこの女は?」

「怪しい女が周りをうろうろしていたもので、話しかけると、攻撃を受けたので戦っていました。話を聞きたかったので、加減して戦っていたら、ここまで入り込まれてしまったのです」

「つまり、もう瀕死の体でここまできたということか」


 女の体を椅子に縛り、体を回復させて、血まみれになった服を着替えていると、女が目覚めたようで身をよじり始めた。


「あちゃー。捕まっちゃったか」

「君はどうして攻撃をしてきたんだ?」

「そりゃあ、怪しい奴がいたら攻撃するか逃げるかするっしょ? 私は攻撃しただけ」

「まあ、確かにな」

「はあ? まじで言ってんの?」


 そう怒る女はこの世界にしては珍しく紫色の長い髪の毛をしている。血に染まって黒く変色してはいるが、私から見ても綺麗な髪をしている。
 顔は、化粧が濃すぎて、チークだの、アイシャドウだの、ギャルっぽい見た目をしているのがなんとも惜しい。
 まあ、前世から私はギャルは好きなのだが、こう怒りっぽいと相手をするのもめんどくさくなっていた。


「そら、先制攻撃をした方が有利だからな。さて、君はどうしてこんな夜中にウロウロしていたんだ?」

「そんなの、レイプされるために決まってんじゃん」

「はあ?」

「だって、私強い男の人に組み敷かれるのが大好きなんだもん」


 そう言う女は、あざとそうに舌を出して自分可愛いですよアピールを始める。
 
 こんな女も世の中にはいるのだろうと、そう思うが、それでは武者を攻撃してきた理由と被らないような気がした。


「そうか。だが、攻撃してきた理由はなぜだ?」

「そりゃあ、怪しいから」

「だが、君は性交渉が目的で出歩いていたんだろう?」

「それはそうだけど……」

「それに、私に乗っかってきた理由はなんだ?」

「えっと……」


 女は困っているのか、誤魔化そうとしているのか、頬をぷくっと膨らませると、不満そうにツンとした態度を取り始めた。
 昔の私だったらこれを可愛いと思っただろうが、今の私は女であるせいか、眠いせいか、逆にコイツを引っぱたいて市中引きずり回しの刑に処してやりたいとも思い始めていた。


「さっさと話してくれ。私も眠いんだ」

「そしたらあ、私にチュウをしてくれたら何か話せるかも」

「はあ?」


 コイツは何を言っているんだ? そう思っていると、アデ先生も起きてきて、辺りの血の惨状を見て固まってしまった。


「何が起きたの?」

「夜中にこの女が乗っかってきて起こされたのでな。今なんでここに来たのか聞いているとこだ。すまない。起こしてしまって」

「そう……」


 アデ先生は、ことも無さげにそう言うが、その内面はきっと莫大なストレスを抱えているだろう。
 この人は自分のストレスを決して表に出さない人なのだから、こんな冷静なフリをしていられるのだ。

 この女を見れば、そんな私たちの関係を知らないのも当然だが、一人不貞腐れた態度を取っていた。


「さて、あまり私をイライラさせないでくれ。この人は大切な人なんでな。この人に迷惑はかけたくない」

「えー? でもー? 私には関係ないしー?」

「話さないなら話さないで良い。それなら、黙らせておくだけだ」

 そう言って、私が召喚のスクロールを広げると、この女もようやく私が本気だと言うことを理解したのか、顔をひきつらせ始めた。
 けれども、私にはそんな真相は今はどうでも良いので、とっとと召喚獣に変えてしまおうとすると、


「タンマ! タンマ!」

「なんだ?」

「話すから!」

「じゃあ、私が準備を終える前に話せ」

「その召喚獣マジで強かったんだって! あれ以上されたら本当に死んじゃう!」

「心配するな。お前を殺すわけではなく、お前をその召喚獣に作り変える。お前は一生、私の所有物だ」

「私は! あなたのことが好きだから夜這いをかけにきたの!」


 そう叫ばれたりしてしまったものだから、子供たちが、しょぼしょぼする目をこすりながら起きてきてしまった。


「次からは叫ぶな」

「そしたら、あんたのか知らないけど、召喚獣が邪魔で、攻撃したけど、返り討ちにあって命からがら、一目見ようとあんたのところまで這ってきたの」

「そうか。別に敵意があるわけじゃないのか」

「……」


 私の顔もここまで来ると確かに呪いだな。こうまで周りを狂わせてしまうと、私の方が悪い気がしてくる。


「ねえ、アーシャちゃん。その女の子。マオリちゃんが言ってた子じゃない? 紫色の髪の毛だし」

「そういやそうだな」


 女は相変わらず、ムスッとしている。が、悪さをしていたのであれば、もっとしっかり話を聞く必要がある。


「女の子を大蛇に変えた覚えはあるか?」

「なーい」

「そうか」


 一度、女を小鳥に作り変えて、明日、この女の詳しい取り調べをすることにした。

 血まみれのカーペットを変えて、子供たちを寝かしつけて、ようやく私もアデ先生と一緒に寝る。


ーーーーーー


 翌朝。どうしても口を割らない女に、マーラの能力を使わせる。が、それでも中々口を割らず、どうにか吐き出させたものといえば、女の家の場所くらいのものだった。直接言葉で聞けずとも、家というものは証拠の集まりであり、あらゆる犯行にかかわるものが出てくる。

 また女を縛り上げて、その女の家に押し掛けると、そこで、人間の皮らしきものが干されている異様な工房を目にした。

 男か女かも分からない、髪の毛の付いた人の皮が、なめされている途中で放置されていたり、人形のように綿を詰められている途中で放置されていたりと、およそ、正気の沙汰とは思えない光景がそこにはあった。


「なんだこれは?」

「えっとお。偽物だよ?」

「偽物?」

「そうにせもの」


 皮の1枚を手に取って触ってみるが、まだ新鮮なのか弾力がある。これが、人間の皮かどうかは科学的に断定はできないが、やはり、これは人間の皮とみて間違いないだろう。

 奥に入っていけば、フックに吊るされた肉塊から、血抜き作業の途中であったりと、内臓が種類別に分けられたりと、私でさえ吐きそうになる光景が広がっていた。


 アデ先生が、外へ、走っていく。


「さて、今の私は、君を殺すべきかどうか迷っている。釈明はあるか?」

「そんなのないないょ?」

「とにかく、お前は人か魔族を殺したな?」

「うーん。殺したっていうかー、協力してもらったっていうかー」


 はっきり態度を示さない女の肩に、魔法で作り出したナイフを突き立てる。


「誤魔化すな。私は真剣なんだ」

「あはっ。その顔素敵。やっぱり私が惚れただけある」

「話さないなら話さないで良い。お前を拷問にかけて全てを聞き出すまでだ。お前、子供にも手を出したな?」

「うーん。どうだろ? 従うのは好きだけどー。痛いのはやだなー」


 そう言った女の背中から、蛸のような触手がにょろにょろと伸びてきた。

 私は咄嗟に距離を取り、武者を呼び出す。

 女の影がずうっと上に伸びてきて、そこから無数の目玉が開いてギョロギョロと私を覗く。

 まるで、あの時の、悪魔を呼び寄せた時のような、ひやりとする気配を背筋に感じた。


「武者。手加減が無理ならそのまま殺せ。こいつはおそらく悪魔だ」

「承った」


 武者の刀が触手を切り飛ばす。
 そして、一気に距離を詰め、女の腹に刀を突き立てる。

 が、女はケラケラと笑いだす。


「そう。私は魔女。被虐の魔女っていうの。痛いのは、やーっぱり大好き」
 
 
 

 
 
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