奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される

葉空

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奴隷商人と皇太子

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玲於と一緒に寝たら、久しぶりに悪夢を見なくて済んだ。目が覚めても彼が目の前にいるため、心は穏やかだったと思う。

今何時なのか、確認するために時計を探すと朝の4時を指していた。さすがにラドリエン帝国に帰った方が良いと思い、身体を起こそうとすると、また身体はベッドに沈み込む。

「どこ行くの?」

眼を擦り少しあどけなさが残る様子で聞かれて、鼓動が高鳴る。

「帰らないと。」
「やだ。」

再びぎゅっと手に力を込めると、足も絡ませてくる。動けないように優しい拘束をしてくれる彼が嬉しかった。でも、玲於も別れないといけないことが分かっているというように瞳は揺れていた。

「空杜、向こうではどう?」
「んー、楽しいと思うよ。こっちの方が大好きだけど、あっちも好き。」

「そっか。2人とも勉強は上手く出来てる?」

「うん。呑み込みは早いって言われたよ。でも、兄ちゃんはレベルが違う。もうね、魔力を上手く使えるようになってるんだ。しかも、入れられた血の量からしては、ありえないレベルに強いらしいよ。抑える方は高技術がいるらしくて、まだ難しそうだけど…。やっぱ、兄ちゃんは凄いや。」

嬉しそうに笑うと玲於が頭を撫でてくれた。俺は玲於の手を握り締め、指を1本1本絡めた。

「玲於は?」
「俺はかつてないほど真面目に働いてるよ。ウィルとカールが感動して泣きそうになってた。」

クスクスと玲於は思い出すように笑う。それだけで、彼らのこれまでの苦労が窺える気がした。

「あっ、今は婚約の手続きも進めてるよ。」
「婚約?」
「そう。俺と空杜の。」
「え?」

思わず固まってしまうと、玲於は腑に落ちない表情をする。

「…もしかして、嫌だった?」
「そんなわけないだろ!ただ、急で驚いて…」
「それなら、良かった。余計な虫がつかないように牽制しとかないといけないからね。まあ、今すぐとはいかないんだけど…」

玲於は空いた手で遊ぶように髪を弄り出す。彼はこの真っ黒な髪を綺麗だと言ってくれる。この色の良さが俺には分からないが、彼がそう言ってくれるならこの髪色も悪くないと思った。

「別に良いよ。こんな状況だから無理なの分かってるし。でも、俺、…玲於がそこまで考えてくれてるのが嬉しい。」

素直に気持ちを言うと玲於は嬉しそうに目尻を下げる。俺は顔を近付けて玲於にキスをした。そして、離れると少し寂しさを含んだ笑みを浮かべる。

「…もうそろそろ帰るね。」
「うん、またね。」

今度は玲於からキスをしてくれた。俺は玲於から離れると地面に足をつけた。どうやってここに来たのかは分からないが、なんとなく予想は付いていた。夢の中で、あの黒い男は欲望を欲していた。きっと、あれが俺に混ざった血の主なのだろう。

俺は目を閉じて願った。ラドリエン帝国に割り当てられた部屋に帰りたいと。すると、身体が何かに包まれる感じがする。そっと目を開けると何やら黒い霧みたいなものが、自分を覆い隠そうとしていた。最後に玲於の姿を映すと、視界は暗闇に覆われた。

次に気が付いた時には、既に見慣れた部屋に戻っていた。俺は身体を確かめるように見る。どこも痛くはないが、初めて力を使ったのだから不安になったのだ。どこも異常がなくてほっとすると、俺は再びテラスに出た。

昨夜とは違いこの景色がどこか明るく見える。空が明るいのだから当たり前だが、そういうことではなくて気持ち的に明るく見えるようになったのだ。

「彼氏から婚約者か…」

そう思うと勝手に口元がニヤける。一度断ったことだったが、実は少し後悔していた節があった。今更、婚約者にして欲しいと言えるはずもなくて、残念に感じていたことだった。

「俺も頑張ろう!」

両手を上に伸ばして身体を伸ばす。力を抑制出来るようになって、早く彼の元に戻りたいと強く思った。生きてずっと玲於の傍に居るんだと心に決めると、突然胸が痛くなった。

「ーーっ……」

胸を押さえて痛みに堪えていると少ししてから治った。不定期に胸が痛くなるため、医者に診てもらったら特に異常は見られなかった。環境が大きく変わったことによるストレスではないかと言われたので、多分そのせいだろう。

一様、身体を休めようと考えて、ベッドに足を向ける。でも、先程まで玲於と2人でいたので1人で寝ることは寂しく思った。だから、俺は部屋から出て少し離れた兄ちゃんの部屋に向かった。既に彼は起きていたが、自分が一緒に寝て欲しいと言うと嬉しそうに許可してくれた。

2人でベッドの中で少しばかり眠った。その後の目覚めも居心地が良いものであった。
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