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18:胸に空いた穴
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立ち上がったブラックヴィマーセは、ショーケウに手を貸し、死角から来た新型機ジューゲルの攻撃を庇う。
背中に数発喰らったところで、ショーケウがガトリング砲で敵を返り討ちにした。
ジューゲルが仰向けに倒れてゆくと、その後ろからガルヒルが突撃してくる。
それを、ナイトフェザーの砲撃が射抜いた。
「ブラックヴィマーセ、まだやれるかい?」
オリヴィンの声に、ラジービは頷く。
「ありがとう。気力が回復したよ」
「感謝はファリーダにしなよ。脚の速いアタシに、助けに行ってやってくれって言ったの彼女だからサ」
「そうだったのか……。そうだ、タイダリアスは――」
言いかけていると、警告音が鳴った。
ブラックヴィマーセは上体を屈め、ジューゲルの攻撃を躱す。
撃ち返して敵機の動きを鈍らせてから、急接近と共に斬撃で倒した。
ナイトフェザーも上空に舞って、インメルマンターンでガルヒルの背後を取り撃つ。
その最中オリヴィンが答えた。
「あの後エリア・パルに要塞戦艦が来て、やむなく撤退したんだ。カーミヤを沈めた相手に今の状態じゃ分が悪すぎた」
「カーミヤ……やはり……」
「だから来るのはもうすこし遅れるよ!」
「――ならそれまで持たせるのみよ!」
ブラックヴィマーセは弾切れしたクレイショットガンを、迫りくるゼノフォースに投げつけた。
ゼノフォースはショットガンをはじき、マチェットに持ち替える。
刀にスイッチして、ブラックヴィマーセは駆け出した。
「ショーケウの援護をたのむ! 重要参考人だ!」
「コピー!」
ナイトフェザーが反転し、ショーケウを囲むジューゲルに空対地射撃を始めた。
間合いに入ったブラックヴィマーセは刀を横に薙ぐ。
ゼノフォースはそれをマチェットで受け流し、全身を横にひねった。
そして左手を振り、近くの家屋を叩く。
家の壁がはじけ飛んで、瓦礫の散弾がブラックヴィマーセを襲った。
機体を壊すようなダメージは無いが、視界を遮られる。
ブラックヴィマーセが土埃を払い除けていると、ゼノフォースが追撃してきた。
斬り上げる剣閃が来て、ブラックヴィマーセの右マニピュレーターに被害が出る。
薬指と小指が、ほとんど根本から切断された。
それでもブラックヴィマーセは半ば苦し紛れにカウンターを放つ。
刃筋を通せない振り下ろしだったが、ゼノフォースを間合いから離脱させた。
ゼノフォースは地面をえぐりながら後方に滑り、倒れた再生ズワルトを踏んで制止する。
出方を待つ間もなく、ゼノフォースは動いた。
再生ズワルトの手に握られたまま破損したライフル――その銃剣部分を引きちぎって、投げてくる。
ブラックヴィマーセはそれを避け、同時に突っ込んでくるゼノフォースに備えようとした。
その時だった。
背後で破壊音がして、
「しまった!」
オリヴィンの声が聞こえた。
投擲は最初からナイトフェザーを狙っていたのか。
気を取られていると、ゼノフォースが刺突を仕掛けてきた。
ブラックヴィマーセはあえて左掌を貫かせ、ゼノフォースの突進を全身で受け止めると、ロックアップして動きを封じる。
「オリヴィン! 脱出を――!」
ラジービが言っているうちに、ナイトフェザーは家屋群の中に突っ込んで、瓦礫に埋没した。
空には、バスタークランプから出た煙の痕跡のみが残っていた。
ラジービはゼノフォースを睨みつける。
「ガヴォートきさまァ!」
「卑怯だなどとは言うなよ! ラジービ!」
ゼノフォースがマチェットを手放し、強引に右手のロックを解いてきた。
そして掌底がブラックヴィマーセを襲う。
人体でいう腹部にあたる箇所――機関部を打たれ、ブラックヴィマーセは胴を折り刀を手落とした。
完全に縛から解放されたゼノフォースは、ブラックヴィマーセの後頭部を掴み、廃墟の壁面に顔を叩きつける。
中のラジービも、内装に頭をぶつけそうな勢いで揺さぶられた。
どうにか抗おうとするも、二撃目が来た。
ブラックヴィマーセの前頭部がコンクリートを砕き、折れて歪んだ鉄筋が右カメラアイを突き潰す。
ゼノフォースの叩き付けは何度も繰り返され、ブラックヴィマーセもラジービも極限まで打ちのめされた。
が、ブラックヴィマーセは脚を踏ん張り、叩きつけに抗う。
ラジービは気づいたのだ。左掌にゼノフォースのマチェットが刺さったままだと。
ブラックヴィマーセはマチェットを引き抜き、全身を旋回させて斬りかかる。
斬撃は容易に受け止められたが、パワーズウイングの全力稼働で空に逃れて、離脱には成功した。
そのはずだった。
建物の死角から、ジューゲルが手を伸ばし右足首を掴んでくる。
「邪魔をするな!」
ラジービは半ば逆上し、ジューゲルの頭部を蹴る。
蹴りはクリーンヒットして、敵機の頭を胴体にめり込ませた。
同時に、右脚が膝からちぎれ、部品と流体を散らす。
そのまま間合いを離そうとして、左足首を掴まれた。
まさか、とラジービは思う。
パワーズウイングの速力にゼノフォースのフライトユニットが追いつけるはずがないというのに。
彼は己の目を疑ったが、ありえない光景がそこにあった。
ゼノフォースは文字通り、腕を伸ばしていた。
前腕部が倍近い長さとなり、ブラックヴィマーセを放さない。
引き剥がそうとする前に、ゼノフォースは脚を開いて踏ん張り、伸長した腕をしならせてブラックヴィマーセを地面に叩きつけた。
すさまじい衝撃が機体とラジービの全身に響く。
それは、ブラックヴィマーセのシステムを強制シャットダウンさせ、ラジービの意識をも落とした。
◇
ショーケウは雑草まみれのもと田園地帯、そのど真ん中で回転しながらガトリング砲を乱射し、敵機の部隊をどうにか全滅させる。
砲身が湯気を立てるのが視界の端に見え、その向こう側で倒れるブラックヴィマーセに目を見開いた。
「ラジービ!?」
リーユイはサブモニターでブラックヴィマーセの状態を確かめる。画面には、NO SIGNALの文字が表示されていた。
ゼノフォースがマチェット片手に、こちらを向く。
ショーケウはまたガトリング砲を構えたが、眼前の敵は攻めてこない。
どういうつもりなのかと訝しんでいると、ゼノフォースは不意に首をもたげた。
そしてリーユイは、
「は……?」
思わず声が出た。
ゼノフォースの両腕が伸び、胴体は前傾姿勢になる。と同時に、両膝が逆方向に曲がりながら大腿部の中ほどが折れて新たな膝を形成する。
最後にフェイスカバー下部が頭頂を越えて後頭部に回り込み、冷却機構と思しき構造物が露出した。
その構造物はむき出しになった歯牙のようである。ヒト型を逸脱したシルエットと相まって、機械でできた怪物と呼ぶにふさわしい姿だった。
「まさにモンスターマシン……」リーユイは無理に笑みを浮かべる。「上等じゃんか!」
ゼノフォースの突進に合わせて、ショーケウはガトリング砲をブッ放した。
弾幕が放射状に広がり、地面を穿った弾が土砂を舞い立てる。
けれど一発も中らなかった。
異形と化したゼノフォースは黒い砲弾さながらの直進速度でショーケウと間合いを詰めると、マチェットを薙いだ。
その一閃で、ガトリング砲がやられた。砲身を刃が断ち、衝撃で本体との接続部が折れ曲がる。
使い物にならなくなった武器をゼノフォースへと投げ捨て、ショーケウは回り込んで離脱しようとした。
だがゼノフォースはこちらが投げたガトリング砲を受け止め、投げ返してくる。
ショーケウの胴にガトリング砲の残骸がぶつかった。
リーユイは短い悲鳴を上げ、追撃を避けながら代わりの武器を探す。
真っ先に目についたのは、ブラックヴィマーセの使っていた刀だった。
倒れている所からすこし離れた地点に突き立っている。
フライトユニットをフルパワーで噴射させ、ショーケウはそちらへ急ぐ。
ゼノフォースは追ってきた。当然のことだ。
ヒト型では出せない走行速度で、一旦大きく開いた距離はあっという間に縮まる。
だが、ショーケウの左手はブラックヴィマーセの刀を掴んだ。
翼の向きを変え、ビルの壁を蹴ってゼノフォースのいる方へ翻る。
すさまじい荷重に、リーユイは歯を食いしばりながらも一太刀浴びせた。
ショーケウの斬撃はゼノフォースの背面に傷をつける。
一方でショーケウもコクピット付近に刃が入り込んでいた。
ゼノフォースが続けて左手を伸ばし、装甲を剥がしてくる。
表面装甲だけでなく、内部機構も一部持っていかれた。
リーユイ自身にダメージは無かったものの、サブモニターが緩衝フルードの漏洩を警告する。
ショーケウが足を着いた瞬間、大きなショックがリーユイを突き上げた。
まずい、と判断した彼女は空へ逃れる。
ゼノフォースもフライトユニットを展開してきた。
二機は空中戦に移行する。空にはもう他のライドールや、ガルヒルの姿は無かった。
ショーケウはターンしてゼノフォースと向き合い、斬撃を放つ。
刃がぶつかって、リーユイに横揺れの衝撃がダイレクトに伝わった。
ショーケウは姿勢を崩すも、空中でブレーキをかけて次に備える。
ゼノフォースの二撃目を躱し、刀を逆手に持つ。
刺突であればさほど揺さぶられないはずだ。
斬撃が来て、ショーケウは刀を突き出す。
マチェットの刃が刀身を滑り、ゼノフォースの姿勢を乱した。
好機。
ショーケウはフライトユニットの噴射と手足を振った力でゼノフォースの背に回り込んで、コクピットを貫こうとした。
が、その時ゼノフォースの腕がショーケウのフライトユニットを鷲掴みにした。
対処する前に、右の翼が引きちぎられる。続けて左の翼も中ほどから断たれ、空を飛ぶだけの斥力を奪われる。
落下するショーケウは、なんとか衝撃を最小限にしようと姿勢を整えようとする。
ゼノフォースは、攻撃してこなかった。
そして、ショーケウは田園地帯に着地する。
大地を揺るがし、機体の足元にはクレーターができていた。
土埃が煙幕めいてショーケウの姿を隠すが、まもなく落ち着く。
やがて、銀色の機体は力なく後ろに倒れ、土手に背を叩きつけて沈黙した。
一瞬だけだった。リーユイの全身に激痛が走ったのは。
息が苦しくて、いやな臭いがする。
コクピット内は暗く、時折火花が落ちて目の前をわずかに照らす。
視線の先にある自分の左腕は、ねじれて折れ曲がり、血で真っ赤になっていた。
左腕だけでなく、右腕も、両脚も、たぶん背骨や肋骨も同じ状態だ。
それなのに、痛みは鈍くて、むしろ痺れのほうが大きい。
かろうじて目玉だけが動く。
息ができなくなってきた。
すると、コクピットハッチがライドールの手で引き剥がされ、外の光がどっと射し込む。
ハッチが投げ捨てられる重い音の後に現れたのは、ゼノフォースだった。ヒト型に戻っていて、手にはライフルを持っている。
ゼノフォース――ガヴォートは、しばらくリーユイを見つめていた。
もしかして、と彼女は思う。
裁判にかけるために、あえて保護して、治療を受けさせてくれるかな。
意識が遠のく。
ゼノフォースが銃を構えた。
リーユイの目は涙を流しながら、瞳孔を広げてゆく。
最期に見えたのは、銃口からほとばしる閃光だった。
◇
ガイツ・ガヴォートは、テロリストの少女の介錯を終え、息を吐き出す。
結局、実行部隊の人間は誰一人として生かして捕らえることはできなかった。
だが――。
ゼノフォースはブラックヴィマーセに顔を向ける。
まだラジービは生きているはずだ。
動き出そうとした次の瞬間、センサーが警告音を発した。ブラックヴィマーセとは別方向だ。
そちらに向き直ると、高エネルギー反応の後に、ディープパープルのガルヒルが瓦礫を吹き飛ばした。
「ナイトフェザー!」
生きていたのか、と銃を構える前に敵機が砲撃してきた。
それはゼノフォースの右腕を消し飛ばし、ライフルごと粉砕する。
ガヴォートは舌打ちしながら、二撃目を回避しながら、敵機を視た。
ナイトフェザーのバスタークランプは後部を喪失している。あの状態では長くは持つまい。
案の定、三発目の砲撃を試みようとしたところで砲の基部から火を噴き、ナイトフェザーはクランプをパージした。
が、素体となってもナイトフェザーは機銃で攻めてくる。
ゼノフォースは左腕を振り上げてガードし、走り出した。
自機も敵機も、これ以上の戦闘継続は難しい。
ガヴォートはそう判断して、フライトユニットを展開する。
空へと飛び立って、ナイトフェザーを振り切ろうとした。
ナイトフェザーは機銃を撃ちながら追ってくる。
銃撃を躱しながら、ゼノフォースは相手の弾切れまで粘る。
一分も経たないうちに、ナイトフェザーの銃撃は途絶え、離れてゆくのが見えた。
ガヴォートは後部モニターでそれを目の当たりにして、すこし安堵しながらベルシェゴルへと急いだ。
◇
ラジービは意識を取り戻して、口の中に血の味を感じる。
彼は自分がほとんど宙吊り状態であることから、ブラックヴィマーセがうつ伏せに倒れているのに気づいた。
フットレストに足をかけて踏ん張り、フェイスガードを外す。
機体のシステムを再起動させて診断モードを立ち上げた。
メインモニターに次々と赤色の警告アイコンが表示される。
ラジービは顔をしかめたままだったが、予想通りだし、エンジンの起動はできそうだ。
システムが完全に立ち上がると同時に、ナイトフェザーから通信が入った。
「――ラジービ! たのむよ応答してくれ!」
「オリヴィン――」
彼は応えた。
「わたしはどのくらい……いや、それよりショーケウは――リーユイは?!」
「……ごめんよ……」
彼女の返事で、ラジービは察する。
エンジンを動かし、ノイズだらけの視界でショーケウの姿を探した。
ショーケウは、やや離れた斜面に身を放り出すような姿勢だった。稼働インジケーターに光は無い。
ラジービは、ショーケウの胸部を見て言う。
「……コクピットハッチが脱落してる……」
「あれは――」
「やられる寸前で脱出したのかも……」
ブラックヴィマーセの体を起こす。
その最中、オリヴィンが言った。
「違うんだ、あのコはもう……」
「この目で確かめるまでは――」
パワーズウイングを噴かそうとしたが、フライトユニット側のシステムがまだ落ちたままだ。
ブラックヴィマーセは指の欠けた腕を伸ばし、ショーケウに向かって這ってゆく。
「よせ、ラジービ……」
オリヴィンの言葉は、ラジービの頭に入ってこなかった。ただリーユイの安否を確認したい一心で、ブラックヴィマーセを動かしていた。
ショーケウのすぐ近くまで来たところで、コクピットの周囲に溶融した跡を見とめる。
ラジービは機体を降り、ふらつきながらショーケウのボディに足をかけた。
彼が目撃したのは、機体の背面まで空いた大穴と、溶けて、焦げて跡形もなくなったコクピットだった。
リーユイの死体らしきものは見当たらない。
ラジービは穴を覗き込む。
たぶん、熱で蒸発してしまったのだろう。そうでなければ本当に脱出して――。
思っていると、ペダルとフットレストの近くに靴を見つけた。
布製の短靴……リーユイが履いていたものだ。
なぜ、靴だけがここに? と拾い上げると、その異様な重さに背筋が凍った。
靴じゃない。足だ。
ラジービはうなだれて、コクピットの壁面に身を傾ける。岩のような凹凸には、まだ微かに熱が残っていた。
半ば放心状態のまま、彼はブラックヴィマーセへと戻る。
リーユイのわずかばかりの亡骸を抱えながら、仲間と交信する。
「オリヴィン……タイダリアスは……?」
「もう近くまで来てる。……飛べるか?」
「たぶん……」
「無理そうなら、待ってなよ」
「……ショーケウを回収したい」
「ああ……タイダリアスも反対しないだろうさ……」
「ありがとう」
ブラックヴィマーセを動かし、ショーケウの脇に両腕をくぐらせる。
そしてパワーズウイングを噴かした。
次の瞬間、ブラックヴィマーセの左腕が肘からちぎれた。
一気にバランスを崩したブラックヴィマーセは、ショーケウに覆いかぶさるように落ちる。
ラジービもショックでリーユイの足を落としてしまった。
モニターに叩きつけられた足は、断面からわずかに血を出し画面を汚す。
「……ごめん……」
彼は呟いて、しっかりと足を抱きしめる。
ブラックヴィマーセは残った右腕を、ショーケウの胸の穴に突っ込み、背中へと通した。
改めてパワーズウイングの噴射で、機体を持ち上げる。部品がいくつか脱落した。
ショーケウは力なく頭と四肢を垂らし、ぶらぶらと揺れながら運ばれていく。
惨めな気分だった。
ナイトフェザーと共にタイダリアスと合流すると、格納庫直通のカタパルト付近でピースキーパー2とエメラルドラインが控えていた。
ブラックヴィマーセは二機の誘導と介助で、どうにか艦内に収容してもらい、ショーケウと隣り合う形で床に横たわる。
ラジービは機体から降りて、ファリーダやカラモスらと顔を合わせた。
「……大丈夫かい……? ラジービ……」
「わたしは……けど……」
カラモスにそう答えると、ラジービは視線を落とす。
ファリーダが同じ方を見た。
「それは……靴――」
言いかけて、彼女の顔から血の気が引く。
カラモスも同じ反応だった。
その場にいる皆が、ラジービにかける言葉を失くしていた。
自室に戻り、ラジービはリーユイの靴を洗う。
ブラシで丁寧に汚れを落とすが、どれだけ丹念にやっても血の跡は消えなかった。
水気を落とし、机に敷いたタオルの上で自然乾燥を待つ。
壁に背を委ねて彼女の小さな靴を見つめていると、その脇に架けたギターケースが見えた。
ラジービは眉間にしわを寄せ、歯を食いしばる。
目頭が熱くなってきた。
不意に、リーユイが弾くギターの旋律が頭の中に流れてきて、拳を強く握りしめる。
それとは裏腹に、脚からは力が抜けていき、彼は床にずるずるとしゃがんだ。
彼女の在りし日の姿が脳裏によぎり、涙が溢れる。
止めようとしても止まらない。
誰も見ていないのに、ラジービは両掌で顔を隠し、嗚咽を抑えようとする。
けれど、悲しみはラジービを囚えたまま、涙に溺れさせていた。
背中に数発喰らったところで、ショーケウがガトリング砲で敵を返り討ちにした。
ジューゲルが仰向けに倒れてゆくと、その後ろからガルヒルが突撃してくる。
それを、ナイトフェザーの砲撃が射抜いた。
「ブラックヴィマーセ、まだやれるかい?」
オリヴィンの声に、ラジービは頷く。
「ありがとう。気力が回復したよ」
「感謝はファリーダにしなよ。脚の速いアタシに、助けに行ってやってくれって言ったの彼女だからサ」
「そうだったのか……。そうだ、タイダリアスは――」
言いかけていると、警告音が鳴った。
ブラックヴィマーセは上体を屈め、ジューゲルの攻撃を躱す。
撃ち返して敵機の動きを鈍らせてから、急接近と共に斬撃で倒した。
ナイトフェザーも上空に舞って、インメルマンターンでガルヒルの背後を取り撃つ。
その最中オリヴィンが答えた。
「あの後エリア・パルに要塞戦艦が来て、やむなく撤退したんだ。カーミヤを沈めた相手に今の状態じゃ分が悪すぎた」
「カーミヤ……やはり……」
「だから来るのはもうすこし遅れるよ!」
「――ならそれまで持たせるのみよ!」
ブラックヴィマーセは弾切れしたクレイショットガンを、迫りくるゼノフォースに投げつけた。
ゼノフォースはショットガンをはじき、マチェットに持ち替える。
刀にスイッチして、ブラックヴィマーセは駆け出した。
「ショーケウの援護をたのむ! 重要参考人だ!」
「コピー!」
ナイトフェザーが反転し、ショーケウを囲むジューゲルに空対地射撃を始めた。
間合いに入ったブラックヴィマーセは刀を横に薙ぐ。
ゼノフォースはそれをマチェットで受け流し、全身を横にひねった。
そして左手を振り、近くの家屋を叩く。
家の壁がはじけ飛んで、瓦礫の散弾がブラックヴィマーセを襲った。
機体を壊すようなダメージは無いが、視界を遮られる。
ブラックヴィマーセが土埃を払い除けていると、ゼノフォースが追撃してきた。
斬り上げる剣閃が来て、ブラックヴィマーセの右マニピュレーターに被害が出る。
薬指と小指が、ほとんど根本から切断された。
それでもブラックヴィマーセは半ば苦し紛れにカウンターを放つ。
刃筋を通せない振り下ろしだったが、ゼノフォースを間合いから離脱させた。
ゼノフォースは地面をえぐりながら後方に滑り、倒れた再生ズワルトを踏んで制止する。
出方を待つ間もなく、ゼノフォースは動いた。
再生ズワルトの手に握られたまま破損したライフル――その銃剣部分を引きちぎって、投げてくる。
ブラックヴィマーセはそれを避け、同時に突っ込んでくるゼノフォースに備えようとした。
その時だった。
背後で破壊音がして、
「しまった!」
オリヴィンの声が聞こえた。
投擲は最初からナイトフェザーを狙っていたのか。
気を取られていると、ゼノフォースが刺突を仕掛けてきた。
ブラックヴィマーセはあえて左掌を貫かせ、ゼノフォースの突進を全身で受け止めると、ロックアップして動きを封じる。
「オリヴィン! 脱出を――!」
ラジービが言っているうちに、ナイトフェザーは家屋群の中に突っ込んで、瓦礫に埋没した。
空には、バスタークランプから出た煙の痕跡のみが残っていた。
ラジービはゼノフォースを睨みつける。
「ガヴォートきさまァ!」
「卑怯だなどとは言うなよ! ラジービ!」
ゼノフォースがマチェットを手放し、強引に右手のロックを解いてきた。
そして掌底がブラックヴィマーセを襲う。
人体でいう腹部にあたる箇所――機関部を打たれ、ブラックヴィマーセは胴を折り刀を手落とした。
完全に縛から解放されたゼノフォースは、ブラックヴィマーセの後頭部を掴み、廃墟の壁面に顔を叩きつける。
中のラジービも、内装に頭をぶつけそうな勢いで揺さぶられた。
どうにか抗おうとするも、二撃目が来た。
ブラックヴィマーセの前頭部がコンクリートを砕き、折れて歪んだ鉄筋が右カメラアイを突き潰す。
ゼノフォースの叩き付けは何度も繰り返され、ブラックヴィマーセもラジービも極限まで打ちのめされた。
が、ブラックヴィマーセは脚を踏ん張り、叩きつけに抗う。
ラジービは気づいたのだ。左掌にゼノフォースのマチェットが刺さったままだと。
ブラックヴィマーセはマチェットを引き抜き、全身を旋回させて斬りかかる。
斬撃は容易に受け止められたが、パワーズウイングの全力稼働で空に逃れて、離脱には成功した。
そのはずだった。
建物の死角から、ジューゲルが手を伸ばし右足首を掴んでくる。
「邪魔をするな!」
ラジービは半ば逆上し、ジューゲルの頭部を蹴る。
蹴りはクリーンヒットして、敵機の頭を胴体にめり込ませた。
同時に、右脚が膝からちぎれ、部品と流体を散らす。
そのまま間合いを離そうとして、左足首を掴まれた。
まさか、とラジービは思う。
パワーズウイングの速力にゼノフォースのフライトユニットが追いつけるはずがないというのに。
彼は己の目を疑ったが、ありえない光景がそこにあった。
ゼノフォースは文字通り、腕を伸ばしていた。
前腕部が倍近い長さとなり、ブラックヴィマーセを放さない。
引き剥がそうとする前に、ゼノフォースは脚を開いて踏ん張り、伸長した腕をしならせてブラックヴィマーセを地面に叩きつけた。
すさまじい衝撃が機体とラジービの全身に響く。
それは、ブラックヴィマーセのシステムを強制シャットダウンさせ、ラジービの意識をも落とした。
◇
ショーケウは雑草まみれのもと田園地帯、そのど真ん中で回転しながらガトリング砲を乱射し、敵機の部隊をどうにか全滅させる。
砲身が湯気を立てるのが視界の端に見え、その向こう側で倒れるブラックヴィマーセに目を見開いた。
「ラジービ!?」
リーユイはサブモニターでブラックヴィマーセの状態を確かめる。画面には、NO SIGNALの文字が表示されていた。
ゼノフォースがマチェット片手に、こちらを向く。
ショーケウはまたガトリング砲を構えたが、眼前の敵は攻めてこない。
どういうつもりなのかと訝しんでいると、ゼノフォースは不意に首をもたげた。
そしてリーユイは、
「は……?」
思わず声が出た。
ゼノフォースの両腕が伸び、胴体は前傾姿勢になる。と同時に、両膝が逆方向に曲がりながら大腿部の中ほどが折れて新たな膝を形成する。
最後にフェイスカバー下部が頭頂を越えて後頭部に回り込み、冷却機構と思しき構造物が露出した。
その構造物はむき出しになった歯牙のようである。ヒト型を逸脱したシルエットと相まって、機械でできた怪物と呼ぶにふさわしい姿だった。
「まさにモンスターマシン……」リーユイは無理に笑みを浮かべる。「上等じゃんか!」
ゼノフォースの突進に合わせて、ショーケウはガトリング砲をブッ放した。
弾幕が放射状に広がり、地面を穿った弾が土砂を舞い立てる。
けれど一発も中らなかった。
異形と化したゼノフォースは黒い砲弾さながらの直進速度でショーケウと間合いを詰めると、マチェットを薙いだ。
その一閃で、ガトリング砲がやられた。砲身を刃が断ち、衝撃で本体との接続部が折れ曲がる。
使い物にならなくなった武器をゼノフォースへと投げ捨て、ショーケウは回り込んで離脱しようとした。
だがゼノフォースはこちらが投げたガトリング砲を受け止め、投げ返してくる。
ショーケウの胴にガトリング砲の残骸がぶつかった。
リーユイは短い悲鳴を上げ、追撃を避けながら代わりの武器を探す。
真っ先に目についたのは、ブラックヴィマーセの使っていた刀だった。
倒れている所からすこし離れた地点に突き立っている。
フライトユニットをフルパワーで噴射させ、ショーケウはそちらへ急ぐ。
ゼノフォースは追ってきた。当然のことだ。
ヒト型では出せない走行速度で、一旦大きく開いた距離はあっという間に縮まる。
だが、ショーケウの左手はブラックヴィマーセの刀を掴んだ。
翼の向きを変え、ビルの壁を蹴ってゼノフォースのいる方へ翻る。
すさまじい荷重に、リーユイは歯を食いしばりながらも一太刀浴びせた。
ショーケウの斬撃はゼノフォースの背面に傷をつける。
一方でショーケウもコクピット付近に刃が入り込んでいた。
ゼノフォースが続けて左手を伸ばし、装甲を剥がしてくる。
表面装甲だけでなく、内部機構も一部持っていかれた。
リーユイ自身にダメージは無かったものの、サブモニターが緩衝フルードの漏洩を警告する。
ショーケウが足を着いた瞬間、大きなショックがリーユイを突き上げた。
まずい、と判断した彼女は空へ逃れる。
ゼノフォースもフライトユニットを展開してきた。
二機は空中戦に移行する。空にはもう他のライドールや、ガルヒルの姿は無かった。
ショーケウはターンしてゼノフォースと向き合い、斬撃を放つ。
刃がぶつかって、リーユイに横揺れの衝撃がダイレクトに伝わった。
ショーケウは姿勢を崩すも、空中でブレーキをかけて次に備える。
ゼノフォースの二撃目を躱し、刀を逆手に持つ。
刺突であればさほど揺さぶられないはずだ。
斬撃が来て、ショーケウは刀を突き出す。
マチェットの刃が刀身を滑り、ゼノフォースの姿勢を乱した。
好機。
ショーケウはフライトユニットの噴射と手足を振った力でゼノフォースの背に回り込んで、コクピットを貫こうとした。
が、その時ゼノフォースの腕がショーケウのフライトユニットを鷲掴みにした。
対処する前に、右の翼が引きちぎられる。続けて左の翼も中ほどから断たれ、空を飛ぶだけの斥力を奪われる。
落下するショーケウは、なんとか衝撃を最小限にしようと姿勢を整えようとする。
ゼノフォースは、攻撃してこなかった。
そして、ショーケウは田園地帯に着地する。
大地を揺るがし、機体の足元にはクレーターができていた。
土埃が煙幕めいてショーケウの姿を隠すが、まもなく落ち着く。
やがて、銀色の機体は力なく後ろに倒れ、土手に背を叩きつけて沈黙した。
一瞬だけだった。リーユイの全身に激痛が走ったのは。
息が苦しくて、いやな臭いがする。
コクピット内は暗く、時折火花が落ちて目の前をわずかに照らす。
視線の先にある自分の左腕は、ねじれて折れ曲がり、血で真っ赤になっていた。
左腕だけでなく、右腕も、両脚も、たぶん背骨や肋骨も同じ状態だ。
それなのに、痛みは鈍くて、むしろ痺れのほうが大きい。
かろうじて目玉だけが動く。
息ができなくなってきた。
すると、コクピットハッチがライドールの手で引き剥がされ、外の光がどっと射し込む。
ハッチが投げ捨てられる重い音の後に現れたのは、ゼノフォースだった。ヒト型に戻っていて、手にはライフルを持っている。
ゼノフォース――ガヴォートは、しばらくリーユイを見つめていた。
もしかして、と彼女は思う。
裁判にかけるために、あえて保護して、治療を受けさせてくれるかな。
意識が遠のく。
ゼノフォースが銃を構えた。
リーユイの目は涙を流しながら、瞳孔を広げてゆく。
最期に見えたのは、銃口からほとばしる閃光だった。
◇
ガイツ・ガヴォートは、テロリストの少女の介錯を終え、息を吐き出す。
結局、実行部隊の人間は誰一人として生かして捕らえることはできなかった。
だが――。
ゼノフォースはブラックヴィマーセに顔を向ける。
まだラジービは生きているはずだ。
動き出そうとした次の瞬間、センサーが警告音を発した。ブラックヴィマーセとは別方向だ。
そちらに向き直ると、高エネルギー反応の後に、ディープパープルのガルヒルが瓦礫を吹き飛ばした。
「ナイトフェザー!」
生きていたのか、と銃を構える前に敵機が砲撃してきた。
それはゼノフォースの右腕を消し飛ばし、ライフルごと粉砕する。
ガヴォートは舌打ちしながら、二撃目を回避しながら、敵機を視た。
ナイトフェザーのバスタークランプは後部を喪失している。あの状態では長くは持つまい。
案の定、三発目の砲撃を試みようとしたところで砲の基部から火を噴き、ナイトフェザーはクランプをパージした。
が、素体となってもナイトフェザーは機銃で攻めてくる。
ゼノフォースは左腕を振り上げてガードし、走り出した。
自機も敵機も、これ以上の戦闘継続は難しい。
ガヴォートはそう判断して、フライトユニットを展開する。
空へと飛び立って、ナイトフェザーを振り切ろうとした。
ナイトフェザーは機銃を撃ちながら追ってくる。
銃撃を躱しながら、ゼノフォースは相手の弾切れまで粘る。
一分も経たないうちに、ナイトフェザーの銃撃は途絶え、離れてゆくのが見えた。
ガヴォートは後部モニターでそれを目の当たりにして、すこし安堵しながらベルシェゴルへと急いだ。
◇
ラジービは意識を取り戻して、口の中に血の味を感じる。
彼は自分がほとんど宙吊り状態であることから、ブラックヴィマーセがうつ伏せに倒れているのに気づいた。
フットレストに足をかけて踏ん張り、フェイスガードを外す。
機体のシステムを再起動させて診断モードを立ち上げた。
メインモニターに次々と赤色の警告アイコンが表示される。
ラジービは顔をしかめたままだったが、予想通りだし、エンジンの起動はできそうだ。
システムが完全に立ち上がると同時に、ナイトフェザーから通信が入った。
「――ラジービ! たのむよ応答してくれ!」
「オリヴィン――」
彼は応えた。
「わたしはどのくらい……いや、それよりショーケウは――リーユイは?!」
「……ごめんよ……」
彼女の返事で、ラジービは察する。
エンジンを動かし、ノイズだらけの視界でショーケウの姿を探した。
ショーケウは、やや離れた斜面に身を放り出すような姿勢だった。稼働インジケーターに光は無い。
ラジービは、ショーケウの胸部を見て言う。
「……コクピットハッチが脱落してる……」
「あれは――」
「やられる寸前で脱出したのかも……」
ブラックヴィマーセの体を起こす。
その最中、オリヴィンが言った。
「違うんだ、あのコはもう……」
「この目で確かめるまでは――」
パワーズウイングを噴かそうとしたが、フライトユニット側のシステムがまだ落ちたままだ。
ブラックヴィマーセは指の欠けた腕を伸ばし、ショーケウに向かって這ってゆく。
「よせ、ラジービ……」
オリヴィンの言葉は、ラジービの頭に入ってこなかった。ただリーユイの安否を確認したい一心で、ブラックヴィマーセを動かしていた。
ショーケウのすぐ近くまで来たところで、コクピットの周囲に溶融した跡を見とめる。
ラジービは機体を降り、ふらつきながらショーケウのボディに足をかけた。
彼が目撃したのは、機体の背面まで空いた大穴と、溶けて、焦げて跡形もなくなったコクピットだった。
リーユイの死体らしきものは見当たらない。
ラジービは穴を覗き込む。
たぶん、熱で蒸発してしまったのだろう。そうでなければ本当に脱出して――。
思っていると、ペダルとフットレストの近くに靴を見つけた。
布製の短靴……リーユイが履いていたものだ。
なぜ、靴だけがここに? と拾い上げると、その異様な重さに背筋が凍った。
靴じゃない。足だ。
ラジービはうなだれて、コクピットの壁面に身を傾ける。岩のような凹凸には、まだ微かに熱が残っていた。
半ば放心状態のまま、彼はブラックヴィマーセへと戻る。
リーユイのわずかばかりの亡骸を抱えながら、仲間と交信する。
「オリヴィン……タイダリアスは……?」
「もう近くまで来てる。……飛べるか?」
「たぶん……」
「無理そうなら、待ってなよ」
「……ショーケウを回収したい」
「ああ……タイダリアスも反対しないだろうさ……」
「ありがとう」
ブラックヴィマーセを動かし、ショーケウの脇に両腕をくぐらせる。
そしてパワーズウイングを噴かした。
次の瞬間、ブラックヴィマーセの左腕が肘からちぎれた。
一気にバランスを崩したブラックヴィマーセは、ショーケウに覆いかぶさるように落ちる。
ラジービもショックでリーユイの足を落としてしまった。
モニターに叩きつけられた足は、断面からわずかに血を出し画面を汚す。
「……ごめん……」
彼は呟いて、しっかりと足を抱きしめる。
ブラックヴィマーセは残った右腕を、ショーケウの胸の穴に突っ込み、背中へと通した。
改めてパワーズウイングの噴射で、機体を持ち上げる。部品がいくつか脱落した。
ショーケウは力なく頭と四肢を垂らし、ぶらぶらと揺れながら運ばれていく。
惨めな気分だった。
ナイトフェザーと共にタイダリアスと合流すると、格納庫直通のカタパルト付近でピースキーパー2とエメラルドラインが控えていた。
ブラックヴィマーセは二機の誘導と介助で、どうにか艦内に収容してもらい、ショーケウと隣り合う形で床に横たわる。
ラジービは機体から降りて、ファリーダやカラモスらと顔を合わせた。
「……大丈夫かい……? ラジービ……」
「わたしは……けど……」
カラモスにそう答えると、ラジービは視線を落とす。
ファリーダが同じ方を見た。
「それは……靴――」
言いかけて、彼女の顔から血の気が引く。
カラモスも同じ反応だった。
その場にいる皆が、ラジービにかける言葉を失くしていた。
自室に戻り、ラジービはリーユイの靴を洗う。
ブラシで丁寧に汚れを落とすが、どれだけ丹念にやっても血の跡は消えなかった。
水気を落とし、机に敷いたタオルの上で自然乾燥を待つ。
壁に背を委ねて彼女の小さな靴を見つめていると、その脇に架けたギターケースが見えた。
ラジービは眉間にしわを寄せ、歯を食いしばる。
目頭が熱くなってきた。
不意に、リーユイが弾くギターの旋律が頭の中に流れてきて、拳を強く握りしめる。
それとは裏腹に、脚からは力が抜けていき、彼は床にずるずるとしゃがんだ。
彼女の在りし日の姿が脳裏によぎり、涙が溢れる。
止めようとしても止まらない。
誰も見ていないのに、ラジービは両掌で顔を隠し、嗚咽を抑えようとする。
けれど、悲しみはラジービを囚えたまま、涙に溺れさせていた。
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