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第8話 浜辺までドライブデート

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 8月14日の午前5時。

 飛鳥は目を覚まし、藍色のカーテンを少し開いて外の天気を確認する。

 雨は降っていない。

 世界はまだ真っ暗だ。

 飛鳥はベッドから立ち上がり、部屋着からTシャツと短パンに着替えて鞄を斜めがけして出かけた。

 鞄の中にはサンドイッチとおにぎりが2人分入っている。

 前回のデートではご飯を食べ損ねてしまったが、同じ失敗は繰り返さないのが飛鳥だ。今回はリベンジだ。

 アパートを出て駐車場に向かうと、ピンクの車からクラクションが鳴った。

 飛鳥はクラクションのしたピンクの車に近寄る。

 ピンクの車の運転席には既に優衣が座っていた。

 前回のデートでもそうだったが、普段は白衣を着ている優衣がプライベートな装いをしていると、それだけで飛鳥はドキドキしてしまう。

 飛鳥は車の中に入って、シートに座るとシートベルトを装着した。

「それじゃ、行こっか♪」

 2人が乗った車は発進した。

 飛鳥のことは初診の頃から理解している優衣は、飛鳥が無口でも気にしない。

 2人の間には沈黙の愛がある。

 高速道路を走り、サービスエリアでトイレに行った後、2人はお土産コーナーを見て回る。

 ひととおり見てから2人は車に戻った。

 飛鳥は鞄のおにぎりを思い出す。

「そういえば、優衣。お腹空いてない? おにぎりとサンドイッチ作ってきたんだけど、良かったら食べる?」

 優衣が心底嬉しそうな顔をした。

「食べる! 食べる!」

 飛鳥がおにぎりとサンドイッチを渡すと、優衣はもりもり食べてくれた。

 優衣は間食して水筒のお茶を飲んでからこう言った。

「すっごく美味しかったよ、飛鳥! やるじゃん!」
「ありがと、優衣」

 優衣はCDを入れて音楽を流す。

「ヒーリング効果のある曲を集めてみたから、良かったら聴いてね♡」
「ありがとう、優衣」

 浜辺で車を降りた2人は陽の光にきらきらきらめく海を一緒に眺めた。

 優衣が気を利かせてアイスクリームを買ってきてくれた。

 2人は海の家でアイスクリームを食べながら海を眺める。

 優衣は海を眺めながら聞く。

「飛鳥はどうして私を好きになってくれたの?」
「わたしは、優しくて、明るくて、前向きで、こころが強くて、気の利く性格で、絶対怒らない人だったら男女関係なく恋愛対象で、優衣はその条件をすべてを突破してくれる人だと悟ったから」

「飛鳥、」優衣が飛鳥をまっすぐ見つめる。

「私だって、弱いとこいっぱいあるよ。飛鳥が思っているほど私のこころは強くはないよ。それでも良いの?」

 飛鳥は照れ隠しなのか、海のほうを向いたまま答える。

「それでも、優衣はわたしにとってかけがえのない読者でもあるから、好きだよ」

 飛鳥の顔が赤くなる。

 2人はアイスを完食した。

 優衣が先に立ち上がる。

「遊ぼう、飛鳥♡」


 日が暮れる頃、優衣の運転で東京へ帰る。

 高速を降りてから国道を走り、自宅近くのコンビニの駐車場に車を停めた優衣は、既に遊び疲れて寝ている飛鳥にキスをした。
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