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012 1章:エピローグ

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 使者の転移スキルによって、その日の内に国王と会うことになった。
 煌びやかで広大な謁見の間で、国王とのご対面だ。

「余が国王のルイス・ジマリオ18世である」

 玉座に座る白髪の巨漢が名乗った。
 その巨漢こそが、この国の最高権力者ルイス国王だ。

「悪いが俺は今時の若者なんでね、礼儀は持ち合わせていないよ」

 俺の左右に突っ立ってるお偉いさん共が「不敬な」と憤る。
 しかし、肝心のルイス国王は「かまわぬ」と気にしていなかった。
 流石は国王だ。器が違う。

「で、俺に何の用かな?」
「余の為に浴場をこしらえてもらいたい」
「専用の風呂が欲しいわけだな」
「さよう。必要な素材はこちらで用意しよう。もちろん、相応の報酬も用意する。金でも、爵位でも、奴隷でも。なんだっていい。そなたの希望を出来る限り叶えよう。それでどうじゃ?」

 素晴らしき好条件である。
 俺が金に興味ないことも理解しているようだ。
 かといって爵位は欲しくない。そんな物は犬にでもくれてやれ。
 奴隷も自分で買えば済む話だ。というか、奴隷っていたんだな。

「なら俺に国王の座を譲っちゃくれねぇか?」

 ジョークを飛ばしてみた。
 左右の官吏共が顔面を真っ赤にして発狂する。
 中には真っ青にして気を失いかけている者も。
 一方、国王は豪快に笑っていた。

「流石にそれは無理じゃ。他ので我慢してくれぬか?」

 国王の余裕に感服する。
 怒ることもなければ、動じることもない。
 堂々たる王者の風格があった。

「気に入ったよ、国王様」

 本当はオートベンダーを設置させてもらう予定だった。
 で、入浴料は1億ゴールドだ。
 金なんざいらないが、金に付随する経験値が欲しかった。
 しかし、国王の人柄が気に入ったので、考えを変える。

「風呂はタダで作ってやるよ。最高のやつをな」
「タダじゃと? それでは余の面目が立たぬではないか」
「なら俺が困った時に助けてくれよ。そういう仲でいようぜ」
「本当いらぬのか? 金も、地位も、名誉も、奴隷も」
「必要になったら自力で手に入れるさ。で、どうだい?」

 俺がニヤリと笑うと、国王も同じように笑った。

「よかろう。じゃが、形だけの金銭は受け取ってくれぬか?」
「面目の問題だな? いいぜ、1000万程度包んでおいてくれ」
「話が早くて助かる」
「それはこっちの言葉さ」

 そんなわけで、1000万ゴールドを貰って国王専用の浴場を作った。
 1000万なんて減ったかどうかも分からない端金なので、実質無料だ。
 〈オートポータル設置D〉を習得することになったが気にしない。
 必要経費だ。

「温泉王、国王陛下の浴場を作ったってよ」

 今回の一件は、たちまち大陸中に広まった。
 誰もが温泉王アレンの名を知っている。
 老若男女問わず、この大陸に俺の名を知らぬ者はいなかった。
 もはや名前が一人歩きしている状態だ。

「温泉王って知ってるか?」

 と適当な人間に尋ねてみる。

「アレンって奴だろ? 知ってるぜ」

 と返ってくる。
 だが、俺がそのアレンだとは大半が知らない。
 前の世界なら歴史の教科書に載ること間違いなしのレベルだ。

「身体が鈍ってもいかんから、適度に狩りでもしておくか」

 もはや狩りをする意味がないけれど、暇なので狩場へ向かうのだった。

 ◇

 ある日、俺は奴隷商館に来ていた。
 国王との会話により、この世界に奴隷制度があることを知ったからだ。
 RLOには奴隷なんて存在しなかった。

「ささ、温泉王様、お好きな奴隷をお選びくださいませ」

 ホームである辺境都市ツバルだと、顔も知られている。
 この世界では18歳の若造だというのに、高級な奴隷商館でVIP待遇だ。

「なるほど、これが奴隷か……」

 ソファに座る俺の前に、10人の奴隷が並んでいる。
 ハイクラスの奴隷商館というだけあり、全ての奴隷が素晴らしい。
 顔、スタイル、服装……全てに品がある。

「奴隷って普段はどういう扱いを受けているんだ?」
「ウチでは人権を尊重して大変丁寧に扱っておりますよ」
「人権を尊重しているのに物扱いなんだな」
「そ、それは、その……」
「からかっただけさ、気にしないでくれ」

 適当な雑談をしながら、俺は悩んでいた。
 奴隷を買うべきか、買わないでおくべきかを。
 元々は買う予定などなかった。
 しかし、見ていると欲しくなってきたのだ。

「どれになされますか? 温泉王様」
「うーん、そうだなぁ……」

 奴隷を買ったとして、何をすればいいのだ?
 何かしたいことはないだろうか。
 色々と考えている内に面倒臭くなったので――。

「全部買おう」
「えっ」
「この場にいる奴隷を全部買うと言ったんだ」

 とりあえず10人の奴隷全てを買うことにした。

「で、では、合計で5億ゴールド頂くことになりますが……」
「5億だな? いいぜ」

 とんでもない額だが、問題はなかった。
 俺の所持金は既に100億を突破しているのだから。
 安い買い物だ。

 ◇

 それからしばらく、俺は奴隷達と過ごした。
 奴隷達は俺を喜ばす術を心得ていて、実に素晴らしかった。
 風呂に入ったり、全裸で抱き合ったり、欲望の限りを尽くしたものだ。

 それはそれで楽しかった。
 だが、1ヶ月もすれば飽きてしまった。

「お前達はお前達の道を歩むといい」
「よろしいのですか? ご主人様」
「いいさ。十分に楽しんだ。達者でな」

 俺は奴隷達を解放した。
 全員に1000万ゴールドを握らせ、サヨナラバイバイだ。

「やべぇ……退屈だ……」

 なんでも出来るからこそ、何もする気が起きない。
 贅沢な悩みだが、非常に厄介でもあった。

「環境を変えるか」

 俺は引っ越しを決意した。
 初心者用であり、辺境都市のツバルを発つ。
 目的地は――別の大陸だ。
 他の国が支配しているから、俺の知名度も及ばないはず。

 スキル〈軍艦建造〉を習得する。
 最高の素材を使って、自動操縦の潜水艦を作った。
 艦に乗り込み、操縦室に行き、目的地を隣の大陸に指定。
 移動開始のボタンを押すと、潜水艦が静かに動きだした。

「さらば、ヤマト王国」

 かくして、俺は新天地に向かうのだった。
 俺のことを誰も知らない土地で、新しくやり直す為に。



【名前】アレン
【レベル】197
【戦闘系アクティブスキル】
テイミング/ヘイスト/ヒール/マジックシェル/ステルス/
周辺探知/下僕収納/ガーディアン召喚/

【戦闘系パッシブスキル】
脚力強化/脚力強化・改/腕力強化/腕力強化・改/総合能力強化
視覚強化/視覚強化・改/聴覚強化/聴覚強化・改/看破/
状態異常耐性/状態異常耐性・改/毒耐性/毒耐性・改/窃盗阻止/
麻痺耐性/麻痺耐性・改/魔法強化/魔法強化・改/犯人特定/
自然治癒力向上/自然治癒力向上・改/炎耐性/炎耐性・改/下僕強化/
ガーディアン強化

【生産系アクティブスキル】
弓矢製作/軍艦建造/兵器製作/衣装製作/高速分解/
蛇口製作/施設建築/箱物製作/オートベンダー設置/

【生産系パッシブスキル】
生産物連携/生産品質向上/生産品質向上・改/生産効率向上/生産効率向上・改/

【その他系アクティブスキル】
ポータル設置A/B/C/D/E/
オートポータル設置A/B/C/D/飛行/
ライセンス契約

【その他系パッシブスキル】
交渉術/飛行強化/CT短縮/CT短縮・改/
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