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131 星くんside
しおりを挟む「おじゃましまーす!」
元気に挨拶をしたかと思えばそーっと慎重に靴を脱ぐさくらちゃんがかわいくて思わず笑ってしまう。部屋に入ればなぜかさくらちゃんは笑っていて不思議に思い聞いてみる。
「え?なんで笑ってるの?」
「だってこんなに豪華な家なのに星くんの部屋散らかっててなんか安心しちゃって!全部完璧だと緊張しちゃうから少しホッとした!」
えへへと照れた顔で笑うさくらちゃんにドキッと心臓が鳴る。きっと椎名くんには他にも俺の知らないようないろんな顔を見せているのだろう。それが羨ましくてすごく悔しい。
「今日はまだ散らかってないほうなんだけど!」
いつもこんな感じだけど冗談を言ってみればおもしろそうに笑ってくれるからこのまま秘密にしておく。
「お菓子とジュース持ってくるから少し待ってて!」
ゲーム機を渡してリビングに行き深呼吸をする。初めて会って名前を褒めてくれた時はかわいい子だなと思っていただけだったのにその日気づけばずっとさくらちゃんのことを考えていた。
たまに学校で会えば「星くんだ!」って名前を呼んで駆け寄ってくれるさくらちゃんのことを好きになっていることも椎名くんと付き合っていることにもすぐに気づいた。
「おまたせ!さくらちゃんはリンゴジュースのほうが好きだったよね!」
きっとさくらちゃんの頭の中は椎名くんのことだけで俺のことなんて眼中にない。いつだって椎名くんのことを嬉しそうに話している。
「ん~、今日はカフェオレにする!」
「……え?」
一瞬何かを考えていたさくらちゃんはカフェオレを手にする。
「あっ、ごめんね!星くんはカフェオレのほうがよかったよね!やっぱり俺リンゴジュースにする!」
まさかカフェオレを選ぶと思っていなかったから戸惑っているとさくらちゃんは勘違いをしたのか謝まってくる。
「いや、さくらちゃんはカフェオレね!」
強引に渡したのにニコッと笑ってくれるところにまた胸が苦しくなる。それでも俺を選んでくれた気がしてたまらない。
「あっ!星くん!これガチャ引けるよ!それに武器もこっちのほうが良いしこのステージに回復薬は必須だよ!」
カフェオレを飲みながらなぜか怒っているさくらちゃんはやっぱりおもしろい。
「あははっ!さくらちゃんすごいスパルタだ!」
「そりゃそうでしょ!俺がどれだけこのゲームに費やしてきたと思ってるの?」
フンッとドヤ顔なところもかわいくて俺の気持ちは増えていくばかりだ。
「俺もゲーム持ってくればよかった~、、そしたら星くんと通信できたのに、、」
拗ねているのか次は唇を尖らせてそんなことを言う。コロコロと変わる表情に釘付けで目が離せない。
「じゃあまた今度持ってきてよ!その時に一緒にやろ!」
難しい顔をしてなにか考えているさくらちゃんはチラッと俺のことを見る。
「通信だったら家が離れててもできるから今日の夜じゃだめ?」
断る理由なんてないのにそんなことを恐る恐る聞くところもかわいい。
「全然!俺はいつでもいいよ!」
「よかったー!星くん部活で忙しいからせっかくの休みの日に誘うのもどうかなーって思ったんだけど、、」
「あははっ、全然忙しくないから!それにさくらちゃんの誘いなら断らないって!」
どれだけ忙しくて疲れていたとしてもさくらちゃんと少しでも繋がっていられるのならそれでいい。
「あーっ!!星くんこのボス戦はこっちの装備で行かないと!!これじゃ絶対負けちゃうよー!」
たかがゲームだとしてもこうやって俺の名前を呼んでくれて視界に映っていられることが嬉しい。さくらちゃんからすればきっとただの友達なんだろうけど今はそれで充分だ。
「そう?でもこっちのほうがかっこよくない?」
「絶対だめ!!かっこよさなんていらない!」
どうやらこのゲームに本気らしくプンプンしている。
「ねぇ!星くんここ座って!」
さくらちゃんは床をポンポンと叩くけどそんな近くに座ってしまえば俺は絶対にゲームに集中できない。隣になんて座れなくて少し離れて座れば近づいてくるさくらちゃんにもうお手上げだ。
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