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第二章
姫野怜亜セドリック王子と婚約する
しおりを挟む長く続く大理石の廊下を宰相ハウゼンと横並びに歩く怜亜。背後からはコツコツと近衛兵たちの乾いた足音が聞こえてくる。
廊下の壁には豪華な絵画が並び、柱を通り過ぎるたびに真っ白な彫刻が今にも動き出しそうな勢いでこちらを見てくるような気がした。
「そういえば、まだお名前を伺ってはおりませんでしたな」
「私ですか?⋯⋯私は怜亜⋯⋯です」
「レイア様ですか⋯⋯良いお名前ですな
。しかしレイア様はお美しい! さすがは異世界の大国の王女殿下ですな、ガハハハハ⋯⋯」
怜亜はその下品な笑い方に眉をひそめながら思った。
私は王女なんかじゃない⋯⋯でもそんなこと、もうどうだっていい。日本に二度と帰れないなんて⋯⋯どうしよう、パパ、ママ⋯⋯。
宰相ハウゼンが立ち止まり怜亜も立ち止まった。目の前には金の装飾が施された重厚な扉がある。直ぐに扉の前にいた衛兵が扉を開けると二人の女性が控えており、それを見た宰相ハウゼンが愛想笑いをしながら顔を怜亜に向けた。
「ここがレイア様のお部屋です。ここからはこの侍女たちがレイア様のお世話をいたします」
二人の侍女が怜亜に挨拶すると宰相ハウゼンはホッとした様子で再び怜亜に愛想笑いの顔を向けた。
「レイア様、先に身支度をお済ませください。その間にこちらでヴィクトリア王妃陛下との謁見の準備をいたしますので」
「はい⋯⋯」
宰相ハウゼンが二人の侍女の方を向く。
「では、頼んだぞ」
「かしこまりました」
宰相ハウゼンと近衛兵団の兵士達は来た廊下を戻っていった。
ドアが閉まると途端に侍女たちが、はしゃぎ始めた。
「レイア様、異世界とは一体どんなところなんですか?」
「レイア様、この異世界のお召し物、とても素敵ですね!」
はしゃぐ侍女たちは部屋の奥へと怜亜を案内し怜亜は大きな鏡の前の椅子に座らされた。
「ではお着替えの為お召し物をお預かりいたします。何かお持ちでしたらお出しください」
怜亜は持ち物を探す。
「あれっ!? ないわ! 私のスマホも何もかもが無くなってる」
「そうですか、では何もお持ちではないのですね、あとからお荷物が届くのでしょうか」
そう言われながら制服を脱がされていく怜亜。
ふとため息をつき思う。もうダメ、泣きそう⋯⋯。
その間にもテキパキと侍女の一人は怜亜の髪の編み込みを始め、もう一人の侍女は格式高い上品なドレスを手際よく広げて見せたあと怜亜のメイクに取り掛かった。編み込みが終わりメイクも終わると怜亜はその格式高い上品なドレスを着てローヒールを履いた。
褒め称える二人の侍女のはしゃぐ声が聞こえる中、鏡の中の自分の姿を見ながら怜亜は別のことを考えていた。
ミシェル君、どうしてるかな⋯⋯私悪いこと言っちゃった⋯⋯せっかく心配してくれたのに。出来ることならミシェル君とスマホで写真撮りたかったな⋯⋯ああ、私の大切なスマホは今どこにあるの?
怜亜がそうやって勇者ミシェルとスマホで写真を撮る場面を強くイメージした次の瞬間、怜亜は手の中に何か硬いものが入っているのを感じた。小石かな? 怜亜はそう思いながら自分の手を広げて見ると、どこか見覚えのある物だった。
あれ? これって、スマホのカメラレンズかな?
怜亜が思う通り、それは間違いなくスマホの小さなカメラレンズだった。
それからしばらくしてヴィクトリア王妃に謁見した怜亜は、セドリック王子と婚約し、その事は国の内外に向けて大々的に発表されたのであった⋯⋯。
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