ジャンヌ・ダルクがいなくなった後

碧流

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真の王

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その日はすぐに訪れた。

シャルル、マリー、皆が揃った中、白いドレスを着たジャンヌが頭を垂れている。
シャルルはわざと貴族の群衆に紛れていた。

(…ジャネット…)マリーは心の中で呟いた。
豊かだった髪は短く切られ、真っ白だった肌は小麦色になり、華奢だった身体は逞しく見える。

宮中の美からはかなり外れていた。
その姿に、安堵する自分に驚いた。

(わたくしはなんてことを!?)

その時、宰相が厳かに告げた。

「ドンレミ村のジャンヌよ。その方が神の啓示を受けたとは真か?」

ジャンヌは頭を垂れたまま答えた。
 「はい。私の前に、大天使ミカエル様、聖女カタリナ様、聖女マルガリタ様が現れ仰ったのです。『イングランド軍を駆逐して王太子シャルルをランスへと連れていきフランス王位に就かしめよ』と。」

「それを証明するものはあるか?」

「いいえ、ございません。ただお声が聞こえます。」

「なるほど…ならば、この中から王太子を見極めよ!さらば、そなたの話を詳しく聞こうではないか。」

ジャンヌは面を上げた。

貴族一人一人を見回し、1人を強く見つめた。
肌にはそばかすができ、髪は男のように短い。
唇は荒れ、薔薇色の頬は見る影もなかった。

…しかし、彼女は凛々しく美しかった。

見つめた男性から目を逸らさずに歩み寄り、足元に跪き、頭を垂れた。

「高貴なる王太子よ、神がわたしをあなたのもとに遣わされました。
フランスを救い、ランスであなたを戴冠させるために。」


男性、シャルルは手を挙げて宣言した。

「見よ!彼の者は余を一目で見極めた。余こそが神に認められた王である!」

大広間にいた者は、ざっと一斉に跪いた。
マリーもひざまずく。

「余はこの者に命じる。軍旗を持ち、イングランド軍を駆逐せよ!ジャンヌ、そなたには、騎士爵を授け、軍旗と甲冑、白いマントを授ける。神の御下、存分に働くがよい!」

みながどっと歓声を上げた。

…茶番だ…

マリーは思った。

神の啓示は6年前御前会議で作ったではないか…
あの時みなで…

ふと思い出す。

…本当に?

あの時、シャルルは詳細は言わなかった。
付き添った者も愚直な下級貴族を選んだ。

私たちの意図を汲んだものはいないはず… 

ならば何故?

マリーは高揚した顔でシャルルを見あげるジャンヌを見た。
信じきった瞳。
演技ではない。



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