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第1章
泡沫の夢⚠️
しおりを挟む身体が沈み込むような柔らかなベッドに、エリアスはそっと降ろされた。
逃げるように視線を逸らす間もなく、ヴォルフの手がバスローブの裾から滑り込んでくる。 大きく、熱い手が、素肌を直接這い上がってきた。
「……っ!」
「君の肌は、どこも熱いな」
低く囁かれ、唇が重なる。 背中を撫でられ、脇腹を愛撫されるだけで、エリアスの身体はビクリと跳ねた。
怖い。けれど、それ以上に恐ろしいほどの快感が押し寄せてくる。
ただ触れられているだけなのに、頭が真っ白になりそうだ。
ヴォルフの手は止まらない。
はだけた胸元に顔を寄せ、エリアス自身も触れたことのない突起に、舌を這わせた。
「ひ、あ……ッ!?」
鋭い電流が走った。 片方は湿った舌先で執拗に転がされ、もう片方は親指と人差し指で摘まれ、強弱をつけて弄られる。
そこが愛撫される場所だなんて、知らなかった。 吸い上げられ、引っ張られるたびに、腰の奥が疼き、脳髄が痺れる。
「あ、や、だめ……っ、声が……!」
口を塞ごうとしても、ヴォルフの手がそれを許さない。
快感の波状攻撃に、エリアスの身体は弓なりにしなり、あっけなく限界を迎えた。
「あ、あッ、ぁああーッ!」
目の前が明滅し、エリアスは胸への刺激だけで達してしまった。
ビクビクと痙攣し、荒い息を吐いて呆然とするエリアス。
しかし、ヴォルフは休ませてはくれなかった。 力の入らないエリアスの両足を割り開き、その間に顔を埋める。
「――!?」
直後、温かい口腔が、白濁したばかりのエリアスの自身を丸ごと飲み込んだ。
信じられない光景に、エリアスは喉を引きつらせた。
「ひっ、あ!? ヴォ、ルフ、……!?」
汚い、駄目だ、と止めようとするが、ヴォルフの舌が裏筋を絡め取り、喉奥で真空のように吸い上げる。
敏感になっている先端を弄られ、エリアスはわけがわからなくなった。
背中が浮き上がり、シーツを鷲掴みにする。 もう、声を上げることしかできない。 快感の濁流に飲み込まれ、エリアスは再び、ヴォルフの口の中へと全てを吐き出した。
「はっ、ぁ……あ……っ」
激しい絶頂の余韻に、涙が溢れて止まらない。 ヴォルフは口から離れると、当たり前のようにそれを飲み込み、濡れた唇でエリアスの目尻の涙を優しく拭い取った。
「泣かなくてもいい。綺麗だったぞ」
エリアスは霞む視界で、ヴォルフを見つめた。 そのアイスブルーの瞳は、熱く、甘く、ただ自分だけを映している。
(……ああ)
今夜だけ。 今夜だけは、彼が自分を見てくれている。
それがどうしようもなく嬉しくて、そして胸が引き裂かれるほど虚しい。
一生の思い出にするのだ。 瞬きをするのも惜しい。この光景の全てを、記憶の宝石箱に閉じ込めておきたい。
ヴォルフは震えるエリアスの髪を愛おしげに撫でながら、もう片方の手を後ろへと伸ばした。 エリアスがビクリと肩を揺らす。 けれど、そこはすでに準備ができていた。 オメガの本能が、アルファを受け入れるために愛液を溢れさせ、蜜で濡れそぼっていたからだ。
「……こんなに濡れている」
「っ!」
指摘され、エリアスは顔から火が出るほど赤くなった。
恥ずかしい。心はこんなに冷静さを保とうとしているのに、身体は正直に彼を求めてしまっている。
ヴォルフはエリアスを抱き上げると、自身の腰の上に跨らせるようにして、対面座位の体勢を取った。
密着した胸と胸。 再び深いキスが落とされ、その間に、ヴォルフの指が後ろへと沈み込んでいく。
「ん、ぅ……っ」
痛みはなかった。 すでに濡れている蕾は、ヴォルフの指を喜んで受け入れ、蠢くように絡みつく。 広げられ、中の弱い部分を擦られるたびに、甘い痺れが腰から脳へと突き抜ける。
「……は、ぁ、ヴォルフ……っ」
エリアスはヴォルフの肩に縋り付いた。 今まで味わったことのない快楽。
濃厚なアルファのフェロモンと、口移しされた唾液に、理性が溶かされていく。 喘ぎ声が止まらない。 自分が自分でなくなっていくような感覚。
それでも、エリアスは必死に意識を繋ぎ止めた。
流されてはいけない。
覚えていなければ。
彼の体温を、指の動きを、優しいキスの味を。
(今夜だけは……)
明日からは、冷たい他人行儀な関係になるとしても。
この瞬間だけは、貴方の本当の妻でいたい。 愛されているのだと、錯覚していたい。
エリアスは涙に濡れた瞳で、目の前の愛しい男を見つめ続けた。
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