【完結】銀色の商人と贋作の妻

真大(mahiro)

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第1章

本能の熱⚠️


言葉による愛の告白だけでは足りないとでも言うように、ヴォルフは抱擁を解くと、再びエリアスの唇を塞いだ。

先ほどの慰めるようなキスとは違う。
角度を変え、舌を絡ませ、エリアスの全てを飲み干そうとするような、深く熱い口づけだった。

「ん……っ、ふぅ……!」

エリアスの背筋が痺れる。
けれど、もう怖くはない。
エリアスもまた、ヴォルフの背中に腕を回し、あの夜のように――いいや、あの夜以上に大胆に、自分から唇を押し付けて求めた。

もっと、もっと。
ヴォルフは長旅で疲労困憊のはずなのに、彼を休ませたくないという我儘な欲求が止まらない。
エリアスの積極的な反応に、ヴォルフは嬉しそうに喉を鳴らして笑った。
そして唇を離すと、そのままエリアスの耳元へと顔を埋めた。

「ぁ……っ!」

湿った舌が、耳殻をねっとりと舐め上げる。
ただ触れるだけではない。
敏感な場所を知り尽くしたように、舌先で弾き、吸い付き、明らかに「感じさせる」ための愛撫だった。

「ひ、ゃ……ヴォルフ、だめ、そこ……」

情けない声が漏れてしまう。
気持ちいい。何をされても、頭がおかしくなるほど気持ちいい。

初めて抱かれたあの夜もそう思ったが、心が通じ合った今は、感度が桁違いだった。
まるで全身が性感帯になったかのように、どこを触れられても電流が走る。

「可愛いな、エリアス」

低く囁かれながら、執拗に耳の裏を舐められる。
ゾクゾクとした快感が背骨を駆け抜け、それだけでイッてしまいそうになる。
ヒート中でもないのに、自分はどうしてしまったのだろう。

いや、違う。
薬も使わずに耐え抜いたヒートの熱が、まだ体内に燻っていて、目の前の「番」となるべき男を認識した途端に、爆発的に燃え上がったのだ。

あの孤独な部屋で味わった、身を引き裂くような地獄の熱ではない。
ただ純粋に、目の前の愛するアルファを求め、一つになりたいと願う、甘く切実な本能の熱。

エリアスは初めて、自分の身に起こるこの衝動を「幸福」だと感じた。

「……っ、凄い香りだ」

ヴォルフが顔を上げ、切羽詰まった表情でエリアスを見つめた。
その瞳孔は開ききり、荒い息をついている。

「エリアスの、ヒート中の濃いフェロモンが……理性が飛びそうだ」

普段は理知的で冷静なヴォルフが、欲望に喘いでいる。
自分を前にして、余裕をなくしている。
その事実がたまらなく嬉しくて、エリアスはヴォルフの首に腕を巻きつけ、自分から唇を寄せた。

「んっ……ちゅ、あ……」

深く、互いの口腔内を貪り合うようなキス。
唾液を交換する水音が部屋に響き、それが余計に羞恥心と興奮を煽る。
身体の芯が疼き、奥が潤んでいくのが分かった。

唇を離した時、二人の間には銀色の糸が引いていた。
ヴォルフは燃えるような瞳でエリアスを見つめ、掠れた声で問いかけた。

「……エリアス。私こそ疲れているはずなのに、君を前にするとどうしようもない」
「ヴォルフ……」
「君に無理はさせたくない。だが……このまま抱きたい。いいか?」

紳士的な問いかけとは裏腹に、その身体は欲望で張り詰めていた。
エリアスは何度も、何度も頷いた。
無理なんかじゃない。自分も、同じことを望んでいるのだから。

「抱いて、ください……」

エリアスは潤んだ瞳でヴォルフを見つめ、震える声で囁いた。

「私を……貴方のものに、してください……」

その言葉が、最後の理性の糸を切った。

「――っ!」

ヴォルフは獣のように唸ると、噛み付くような勢いでエリアスにキスをした。
そのまま、抗う隙も与えずにベッドへと押し倒される。

「あっ、んん……っ!」

シーツに沈み込む背中。
覆いかぶさるヴォルフの重みと熱。
大きな手が身体中を撫で回し、衣服の下へと入り込んでくる。

深く、甘く、そして激しいキスに溺れさせられながら、エリアスは至福の海へと沈んでいった。
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