銀色の商人と贋作の妻

真大(mahiro)

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第4章

生命を宿すための熱

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翌朝、目覚めた時から、エリアスの身体は鉛のように重く、芯からじりじりと焼かれるような熱さと気怠さに包まれていた。
まだ完全に理性が吹き飛ぶほどのヒート期間に入ったわけではない。けれど、その境界線はすぐそこまで迫っていた。

その熱に浮かされながらベッドで浅い呼吸を繰り返していると、昼過ぎ頃、ヴォルフが帰宅した。
寝室に入ってきた彼は、エリアスの潤んだ瞳と紅潮した頬を見て、すべてを悟ったように頷いた。

「……ただいま、エリアス。今日、ヒートに入るだろうと思って、仕事を切り上げて帰ってきたよ」

ヴォルフはポケットから小瓶を取り出し、サイドテーブルに置くと、熱い身体のエリアスを軽々と横抱きに抱き上げた。

「誘発剤も用意した。……行こうか」

向かう先は、もう分かっていた。
前のヒート期間、七日間誰にも会わずに、食料も水も完備された空間で二人きり、ただひたすらに愛し合った、あの「ヒート期間専用」としてヴォルフが用意した部屋だ。

廊下を進むにつれ、ヴォルフから発せられるアルファのフェロモンが濃くなっていくのを感じる。
ヒート期間を迎えようとしている番のオメガに呼応し、彼もまた本能を刺激されているのだ。
その濃厚な香りに包まれるだけで、エリアスの身体は疼き、たまらない気持ちになる。

(……これからの七日間は)

エリアスはヴォルフの首に腕を回し、熱い吐息を漏らした。
これからの七日間は、前よりもさらに濃厚な時間になるだろう。
理性を忘れきって、お互いに溺れて、壊れてしまうくらいに求められ、愛されたい。

そしてその愛の時間を経て、無事にヴォルフの子どもを授かりたい。
そう強く願いながら、久しぶりにその扉をくぐる。
使用人たちの手によって清掃され、きちんと清潔に保たれたその部屋へ。

ヴォルフの手によってベッドに寝かされた瞬間から、エリアスはもう分かっていた。
身体が燃えるように熱く、喉が猛烈に渇く。
でもそれは、水を求めているのではない。
愛しいアルファの、番の体液を求めて乾いているのだ。

「……っ、ヴォルフ……」

エリアスのとろとろに溶けた顔と、渇望する瞳を見て、ヴォルフもエリアスが完全にヒート期間の入り口に立ったことを察したようだった。

「……飲めるかい?」

ヴォルフは小瓶の蓋を開け、その液体を自らの口に含んだ。
そして、エリアスに覆い被さり、口づけと共に誘発剤を流し込んでくれた。

「ん……ッ、ん……」

苦い薬の味などしなかった。
その時に味わったヴォルフの唾液と、絡み合う舌の感触だけで、意識が白く飛ぶくらいに興奮してしまう。
ゴクリ、と喉を鳴らしてそれを受け入れる。
一度ヒート期間を迎えられない期間があった反動なのか、それとも愛が深まったせいなのか。

今回のヒートは、自分でもおかしいくらいに乱れてしまいそうだと、エリアスは確信しながら、貪るようにヴォルフの唇を受け入れた。
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