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第3章
暴かれた性
しおりを挟むカイエンを奪還した翌日。
定例の御前会議が開かれたが、その席にレオナルドの姿はなかった。
カイエンが獄中から獅子騎士団によって奪還されたという事実は、とっくに国中に広まっているものだと思っていた。
だが、番にされて初めて、ユリウスがルシエルに連れられて会議に出席した時、その場に漂う空気はいつもと変わらなかった。
その重大な報告は、ここにいる臣下たちにすらまだ広まっていないのだと肌で感じた。
おそらく、父であるローゼンタール公爵らが情報を完全に統制し、握り潰しているのだろう。
いつも通り、会議が始まる。
ルシエルは、少しでも判断に迷う議題が出ると、隣に立たせたユリウスに逐一意見を求める。
ユリウスは感情を殺し、それに機械的に答える。
その茶番のような繰り返しが続いた後だった。
不意に、ルシエルがユリウスの腰を強く抱き寄せた。
会議中に身体を触られることなど日常茶飯事であるため、臣下たちも特に反応せず、また始まったかと視線を逸らそうとした。
だが、ルシエルは彼らに向かって高らかに宣言した。
「皆、報告がある。……俺は、このユリウスと結婚する」
その言葉に、会議室が静まり返った。
次の瞬間、どよめきが広がる。
「け、結婚でございますか?しかし、恐れながらローゼンタール卿は……同性、しかもアルファであらせられますが……」
一人の臣下が、恐る恐る声を上げた。
すると、ルシエルはニヤリと笑い、さらりと言い放った。
「ユリウスはオメガだ。私も一昨日、知ったのだがな」
言いながら、ルシエルはユリウスの顎を乱暴に掴んで横を向かせ、その銀髪をかき上げて首の後ろを晒させた。
「見ろ。この証を」
そこには、くっきりと、狂気的なほど強く歯を立てられたと分かる、赤黒い噛み跡があった。
血が滲み、腫れ上がったその痕。
それがオメガとアルファが結ばれた証、「番の儀式」の痕跡であることは、貴族である臣下たちが見れば一目瞭然だった。
アルファの名家であるローゼンタール家の、あの美しい嫡男が、実はオメガだった。
その事実への驚きよりも先に、彼らの脳裏に浮かんだのは「納得」と、卑しい「劣情」だった。
この十年間で、どこか妖艶で、毒々しいほどの美しさを手に入れていったユリウス。
白磁のような透き通る肌、長身でありながら男を誘うような華奢で細い腰つき。
臣下たちの劣情さえも密かに煽り続けていたその姿が、アルファではなく、快楽を与えるために存在するオメガだったからだとしたら。
全ての答えが与えられたようだった。
臣下たちは改めて、ルシエルの腕の中で震えている美しいユリウスを見た。
今までは「堕ちたアルファ」として見ていたが、今は違う。「王の愛玩具であるオメガ」として、値踏みするように視線を這わせる。
昨夜も酷く貪られた際についた赤い鬱血痕が、首筋や鎖骨に散らばっているのさえ、オメガであると知って見た方が、より扇情的で生々しく映った。
「近いうちに結婚式を挙げる。日程が決まったらまた皆に知らせる。……以上だ」
ルシエルが一方的に告げた。
臣下たちは、無意識にユリウスをいやらしい目で見つめていたことにハッとし、慌てて体裁を繕うように口々に声を上げた。
「お、おめでとうございます、殿下!」
「臣下一同心より祝福いたします!」
広間に響く、空虚な祝福の言葉。
ユリウスは俯いたまま、大勢の前で晒し者にされ、性別も、夜の情事の痕もすべて暴かれた屈辱に唇を噛んだ。
だが、もはや抗議する気力も残っていない。
ただ心を殺し、嵐が過ぎ去るのを待つように、その場に立ち尽くしていた。
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