悲劇のヒーローになりたい

ぴす

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悲劇のヒーローごっこ

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悲劇のヒーローになりたい

人は幸せな方向に向かおうとすれば そうなれる筈なのに
悲劇的な結末を望む人が多いらしい。

何かで見た、

気のせいかもしれない。

でもハッピーエンドよりは 悲劇的な結末な方が 同情を誘えるし
ストーリー的には印象に残るのかもしれない。

こんな捻くれた始まり方をしたけど
そんな俺も悲劇のヒーローになりたい

勿論、悲劇的な事が起きて欲しいわけではない

少し嫌な事が有れば 「自分は不幸なんだ!!」とでも思わなければやってられないからである。


最近 自分の「じいちゃん」が死んだらしい

自分の「母親」の「親」である

「らしい」と言うのも 

自分が産まれる前に 「他に好きな人が出来たから別れて欲しい」と、
俺の「ばあちゃん」と別れたらしい

「俺」は小さい頃に数回会ったことはあるが

正直「他人」だとしか思えない

そんな「じいちゃん」が
借りていたアパートで「孤独死」していたらしい

「らしい」と言うのも 実際ウチの家族は誰も会っていないからである

他の女が出来て別れたのに「孤独死」と言うのも不思議かもしれないが

その女は とうの昔に病気で死んだらしい

「らしい」ばかりで申し訳ないが
正直あまり「じいちゃん」に興味がないから 詳しい事がわからない




正直「じいちゃん」が死んでしまった事

孤独死をしていた事については何も思わない

だって「興味」が無いから


だが 「興味」が無いで済まされないのがこの世の中 
そして 「興味」が無いで「許してくれない」のが法律である

どうやら「じいちゃん」はその女との間に子供が居るわけでもなく
他に身内がこの世に居ないらしい


孤独死をすると 発見が遅れ 体が腐敗し始めるらしいのだが

運の悪い事に 「じいちゃん」が死んでいた場所が アパートなのである


何が運が悪いかと言うと

体が腐敗すると その体液が床などに染み込むのである

臭いも相当な物のようで

コレが素人で掃除できるレベルのものでは無いらしく

その手の掃除専門の「特殊清掃」と言う物が存在するレベルなようで

それまた特殊な物のため その掃除を依頼するのにはとてもお金がかかる上に

床や壁などに体液が付いてしまっていたら リフォームしないと

次の人にその部屋を貸すことが出来ない為

リフォームをしなくてはならない

勿論、リフォームも安い訳がない

そして1番の問題は
「その費用は誰が払うのか」だ。

身内が他に居ない以上、
その費用を払うのは 俺の家である

正確には「俺の母」になるのだ

俺の家は母子家庭

母、俺、妹、祖母。
一軒家にその4人で暮らして居た

妹は去年 彼氏と同棲する為に大阪へ引っ越した

つまり今は3人暮らし

俺も妹も成人していて

普通に暮らしていれば お金に死ぬほど困るなんて事は無い

母もトラックドライバーをして居て

死ぬほどお金がないと言うわけでは無い

が、貯金をたらふく貯めるほど稼いでいるわけでは無いと思う

勿論俺も貯金などしていない

多趣味な為 少々のお金を家に入れ
ほとんどを趣味に費やしている

勿論「ほとんど」と言ってもたかが知れている

そんな「平凡」な日常に突如突きつけられた「高額な請求」

正直まだ詳しい金額は知らないが

想像するだけでも莫大な金額になる事は間違いない


一体俺達家族の何が悪かったのだろうか?

母は突如突きつけられた「請求」に まだ金額もわからないのに 焦りヒステリックを起こし始めている

祖母も俺も 勿論「母」とは家族なわけで 協力できる事は全てしたい

が、やはり「安心しろ」なんて言える金は持ち合わせて居ない


どうすれば良いのだろうか

俺まで焦りだす

焦ると言うより どうして良いのかわからず 正直頭が回らない

元から頭は良く無いので 考えても仕方が無い

だが仕方がないでは済まされそうもない


随分の昔に勝手に出て行った「じじい」が 「勝手に」死んで

その金を「俺たち」に払えと言うのだから
市役所の奴らもひどい物だ

奴らも仕事なのだろう
法律の通りに動いている

法律も同情はしてくれない

コレは仕方が無いのだろうが

正直「俺たち」からしたら 赤の他人の為に 高額な請求をされ

それを「払わざるおえない」状況を突きつけられているのだ


なんて不幸なんだ

実際この程度 お金さえあれば
法律にさえ強ければ
どうって事ないのかも知れない


この「俺」でさえ 
「どうにかなるのでは?」と思ってしまう

だけど 俺が思っているよりは簡単な話では無いと思う

自分に自信が無いから言い切れない

「何かあった時の為に貯金しておけ」

よくばあちゃんに言われてきた

何があるかもわからない未来の為に

今したい事を我慢ができる訳がない

物欲に勝てない だって強欲だから

それに何かあっても「何とかなる」と無駄な確信があったから

今まで貯金などした事が無い

たまに気まぐれで貯金をしてみても すぐに使ってしまう

実際 今突然「何か」が起きているが
何も出来ない事がわかった

コレが自分が怪我をした 家族に不幸が起きた

なんて事なら 全て自分が悪い
自業自得なのだろうが

「他人」の為に金を「強制的に」払わせられる事になるなんて

どう考えても「自業自得」でなんて終わらせられない

一体俺の何が悪い

母だって悪く無い


祖母も悪くないし妹も悪く無い


悪いのは勝手に死んだ「じいちゃん」だ

おそらく「病死」らしい

そんなの知ったことか

どうせろくに財産などもないだろう

金さえ有れば 遺産で金を払えるのだ
もし全額それで払えるのなら「じいちゃん」の事も許してやる

だがもし金も無く「ただ死んだ」だけだったら呪い殺してやる

…………もう死んでるんだった

せっかく平凡に暮らせて居たのに

突然 「他人」の為に大金を支払う事になった俺たちがどれだけ不幸かわかるか

全くもって納得が出来ない

もし「じいちゃん」が生き返るのなら
怒鳴りつけてやりたい

だが死人に口なし

いくら怒鳴ろうと足掻こうと泣こうと喚こうと

じいちゃんの元には届かないし

金は払わなくてはならない

本当に納得がいかない

確かに今まで貯金しなかった俺も悪いかもしれない

だからってこんなのあんまりだ

勿論こんな事 他人からしたら面白くも無い話だと思う

だがこうして文字に書き起こすだけでも

ストレスが発散されるし

まるで物語の「主人公」になった気分になれる

そしてここまで読んでくれた読者のおかげで
「主人公」になった気分のまま

「自分は悲劇のヒーローなんだ!」と訴えかけられるのだから

文字は面白い
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