7 / 279
プロローグ
レベル7
しおりを挟む
「それがだねえ、少々まずいことになってしまってね」
「まずいこと?」
おやっさんはため息を付くとラピスの方を見やる。
「どうやら貴族のおえらさんに見初められてしまったようでねえ」
「「ええっ!」」
オレとエクサリーが同時に声を上げる。
いやしかし、妥当といえば妥当かもしれない。
どっからどう見ても、非の打ち所のない美女。
ちょっとばかし変わった耳としっぽが付いていようが、むしろそれがいいと言う感じでもある。
髪は虹色という、非常に珍しい色をしており、それは幸せを呼ぶ、と言われている、アイリスブラッド種のモンスターに通じるものがあり、それだけでも貴族は喜ぶであろう。
オレがもし貴族であり、こんな綺麗なお姉さんが下町の片隅で埋もれていたなら、どんな大金を使ってでも手に入れたいと思うかもしれない。
「でも貴族ってあの壁の中から出て来ないでしょ。どうやってラピスの事を知ったの?」
「そういやそうだな」
この国は、実は非常に危険な場所に作られている。
この国の初代王様も例に漏れず、天啓のスキルの持ち主であった。
だがまあ、よその国を奪うことをよしとせず、モンスターがひしめく、魔境を開拓していったのである。
で、その王様が居る間は良かったのだが、ふと気づけば強力なモンスターに囲まれたど真ん中。
ちょっと街から足を伸ばせば、致死級のトラップがごときモンスターが沸いて出る。
どの街も、高い硬い城壁を作り上げ、有力者どもはそこに篭ってしまいましたとさ。
そういう訳なんで、この国では城壁の外に有る宿場街まで、貴族が降りてくる事はめったにない。
「別に実際に見た訳じゃなくとも、ちょっと毛色の違う女が居るってよ、じゃあ俺ちょっくら呼びつけてみるわ、みたいな感じかも知れん」
「なにそれ、そんな奴らにうちのラピスはあげれないわよ」
その人殺しそうな目つきやめてもらえませんでしょうか。
怖いんでちょっと落ち着いてください。
「別に殺そうなんて思ってないし……」
エクサリーはちょっとショックを受けた表情で、目元をしきりにもんでいる。
「それ断るとまずいんでしょうか?」
「んーどうかなあ、直接言って来た訳じゃないし……とりあえず断っても問題ないんじゃないかな?」
「もしかして商会長から言ってきたんじゃ? それだとそっち方面から圧力かけるぞって意味じゃない?」
なるほど、えげつない真似をなさる。
こんな小さなお店、商会から追い出されれば仕入れすら満足に出来なくなるだろう。
だからと言って、ラピスを差し出すのは問題外だ。
貴族のお手つきなんてなってみろ、例のパンデミックまっしぐら。
1カ月足らずで突然10人以上の子供が出来て……さらにその翌月プラス10人……慌てるだろうなぁ、ちょっと見てみたい気分も、いやいやダメだ駄目だ。
うちのラピスはあげられません!
「事情を説明してみる?」
「それはダメッ!」
突然声を荒げるエクサリー。
「あっ、その……クイーズのスキルはとっても特殊だから……それこそクイーズが……」
なんだか赤くなって俯くエクサリー。
そんなエクサリーの頭を、ポンポンと軽く叩きながらおやっさんが言ってくる。
「そのスキルはあまり人に言わないほうがいい気がするぞ。なんとなくだけどな」
そうなのかな? オレの故郷ではゴミスキルだの、たったそれだけで何が出来るだの、さんざんな言われようだったんだが。
個人的には神スキルだとは思っているがな!
「しかしまいったな、商会には結構な借金もあるし、今すぐ耳を揃えて返せって言われるとどうしようもない」
「なんで借金が?」
「ああ、前に事業に失敗した時にな」
そういや最初の頃に、昔はそこそこ大きい商団を率いていたとか言ってたな。
それで色々やらかして、今のように小さなお店まで落ちぶれたとか。
最悪、オレとラピスがここを出て行くしか手がないのかも知れない。
とはいえ、オレの所有権はおやっさんが握っているから、勝手に出て行くと逃亡奴隷になり、捕まったら鉱山行きだ。
それとなくおやっさんに相談してみるか。
エクサリーの居るとこではちょっと……今も心配そうな目つきでこちらをチラチラ見ている。そんな事言ったら即効反対されそうな感じだ。
などと悩みながらラピスと二人っきりになった夜、
「その全てを解決する方法を、このラピスが提案致します」
それまで無言を貫いていたラピスが突然立ち上がって発言する。
「ようは、お金があれば全て解決するのでしょう?」
「いやまあ……その通りかもしれないが」
そのお金がないのよ?
そんなラピス、それがどうしたかという態度でこう言う。
「なければ稼げば良いのでしょう」
その通りだよ? いやその通りなんだけどね? あっ、なんか嫌な予感がしてきた。
「ちょうどいいものが、通りに張り出されているじゃありませんか!」
「えっ!?」
通りに張り出されているもの……えっ、もしかしてアレ!? えっ、アレは無理だろう? いやいやほんと無理ですよ?
その通りに張り出されて居るものは……
『ドラゴン討伐隊大募集!!』
であった。
「まずいこと?」
おやっさんはため息を付くとラピスの方を見やる。
「どうやら貴族のおえらさんに見初められてしまったようでねえ」
「「ええっ!」」
オレとエクサリーが同時に声を上げる。
いやしかし、妥当といえば妥当かもしれない。
どっからどう見ても、非の打ち所のない美女。
ちょっとばかし変わった耳としっぽが付いていようが、むしろそれがいいと言う感じでもある。
髪は虹色という、非常に珍しい色をしており、それは幸せを呼ぶ、と言われている、アイリスブラッド種のモンスターに通じるものがあり、それだけでも貴族は喜ぶであろう。
オレがもし貴族であり、こんな綺麗なお姉さんが下町の片隅で埋もれていたなら、どんな大金を使ってでも手に入れたいと思うかもしれない。
「でも貴族ってあの壁の中から出て来ないでしょ。どうやってラピスの事を知ったの?」
「そういやそうだな」
この国は、実は非常に危険な場所に作られている。
この国の初代王様も例に漏れず、天啓のスキルの持ち主であった。
だがまあ、よその国を奪うことをよしとせず、モンスターがひしめく、魔境を開拓していったのである。
で、その王様が居る間は良かったのだが、ふと気づけば強力なモンスターに囲まれたど真ん中。
ちょっと街から足を伸ばせば、致死級のトラップがごときモンスターが沸いて出る。
どの街も、高い硬い城壁を作り上げ、有力者どもはそこに篭ってしまいましたとさ。
そういう訳なんで、この国では城壁の外に有る宿場街まで、貴族が降りてくる事はめったにない。
「別に実際に見た訳じゃなくとも、ちょっと毛色の違う女が居るってよ、じゃあ俺ちょっくら呼びつけてみるわ、みたいな感じかも知れん」
「なにそれ、そんな奴らにうちのラピスはあげれないわよ」
その人殺しそうな目つきやめてもらえませんでしょうか。
怖いんでちょっと落ち着いてください。
「別に殺そうなんて思ってないし……」
エクサリーはちょっとショックを受けた表情で、目元をしきりにもんでいる。
「それ断るとまずいんでしょうか?」
「んーどうかなあ、直接言って来た訳じゃないし……とりあえず断っても問題ないんじゃないかな?」
「もしかして商会長から言ってきたんじゃ? それだとそっち方面から圧力かけるぞって意味じゃない?」
なるほど、えげつない真似をなさる。
こんな小さなお店、商会から追い出されれば仕入れすら満足に出来なくなるだろう。
だからと言って、ラピスを差し出すのは問題外だ。
貴族のお手つきなんてなってみろ、例のパンデミックまっしぐら。
1カ月足らずで突然10人以上の子供が出来て……さらにその翌月プラス10人……慌てるだろうなぁ、ちょっと見てみたい気分も、いやいやダメだ駄目だ。
うちのラピスはあげられません!
「事情を説明してみる?」
「それはダメッ!」
突然声を荒げるエクサリー。
「あっ、その……クイーズのスキルはとっても特殊だから……それこそクイーズが……」
なんだか赤くなって俯くエクサリー。
そんなエクサリーの頭を、ポンポンと軽く叩きながらおやっさんが言ってくる。
「そのスキルはあまり人に言わないほうがいい気がするぞ。なんとなくだけどな」
そうなのかな? オレの故郷ではゴミスキルだの、たったそれだけで何が出来るだの、さんざんな言われようだったんだが。
個人的には神スキルだとは思っているがな!
「しかしまいったな、商会には結構な借金もあるし、今すぐ耳を揃えて返せって言われるとどうしようもない」
「なんで借金が?」
「ああ、前に事業に失敗した時にな」
そういや最初の頃に、昔はそこそこ大きい商団を率いていたとか言ってたな。
それで色々やらかして、今のように小さなお店まで落ちぶれたとか。
最悪、オレとラピスがここを出て行くしか手がないのかも知れない。
とはいえ、オレの所有権はおやっさんが握っているから、勝手に出て行くと逃亡奴隷になり、捕まったら鉱山行きだ。
それとなくおやっさんに相談してみるか。
エクサリーの居るとこではちょっと……今も心配そうな目つきでこちらをチラチラ見ている。そんな事言ったら即効反対されそうな感じだ。
などと悩みながらラピスと二人っきりになった夜、
「その全てを解決する方法を、このラピスが提案致します」
それまで無言を貫いていたラピスが突然立ち上がって発言する。
「ようは、お金があれば全て解決するのでしょう?」
「いやまあ……その通りかもしれないが」
そのお金がないのよ?
そんなラピス、それがどうしたかという態度でこう言う。
「なければ稼げば良いのでしょう」
その通りだよ? いやその通りなんだけどね? あっ、なんか嫌な予感がしてきた。
「ちょうどいいものが、通りに張り出されているじゃありませんか!」
「えっ!?」
通りに張り出されているもの……えっ、もしかしてアレ!? えっ、アレは無理だろう? いやいやほんと無理ですよ?
その通りに張り出されて居るものは……
『ドラゴン討伐隊大募集!!』
であった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる