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第一章
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「なに、心配はいらぬ。転移先は旧王城の中だ、コアの間まではさほど距離がない。しかもこの日の為に、国でも一、二を争う腕の持ち主が集まってくれている」
えっ、こんな王子に?
「信じられないかな? だが、ボクには分かる。彼らが敵か味方か。その為のスキルをボクは持っているからね」
そのスキルの名も『危機察知・極』であるとか。
自分に対し、害意を抱いている者がいるとすぐに分かるんだとか。
しかし少々効果が強すぎで、実際の危機の時には恐怖で身が竦んで動けなくなるとか。
「なので、ボクは戦闘には役に立たないからあしからず」
うん、それはもう見た目ではっきりと分かっております。
オレは左右をがっしりとした兵士に押さえ込まれ、そのまま魔方陣のある部屋まで連れて行かれる。
「ちょっと、だからオレのカードは……」
「黙っていろ」
オレの背中に硬い物が押し当てられる。
ちょっと王子様、この方達、ほんとに味方なんでしょうか?
転移魔方陣の間はすでに発動状態の様で、その魔方陣は光り輝いている。
「さあ、王子こちらへ」
「うむ」
王子が魔方陣に乗り、続いてオレとオレを取り巻く兵士さんもそこに乗る。
その瞬間、オレと王子が魔方陣から蹴りだされた。
「なっ、なにを!?」
ああ、やっぱり味方じゃなかったようですね……
オレは周りを見渡す。
そこは先ほどまでの綺麗な王宮の部屋ではなく、血糊があちこちにこびりついて、壁も天井もボロボロになっている汚い部屋であった。
王子が慌てて魔方陣へ駆け寄る。
だが、その上に乗っている兵士達は蜃気楼のようにすり抜けてしまう。
「こっ、これはなんの真似だ!」
「バカな弟だ、手間が省けて良かったよ」
「なっ、ま、まさか……兄、上……そんなっ、ボクのスキルにはなにもっ!」
兵士さんの一人が顔に手を持っていき、指でトントンと頬を叩く。
「仮面だよ、感情を封鎖する仮面。だからお前の危機察知にひっかからないんだよ」
「そ、そんな物が!?」
「そもそも、おかしいと思わなかったのか? 国でも一、二を競う兵士達がお前に肩入れするなど」
「ほんとにめでたい王子様だな。あのような無様な様を晒しておきながら、王となろうとするなど」
なんでもこの王子様、危機察知のスキルで食事に毒物が入っている事を事前に気づいたのだが、恐怖で色々出てしまったらしい。
しかもその場が、長女の成人の儀で、各国の重鎮を招いた場であったそうな。
食事の毒物に付いては秘密裏に処理されたのだが、王子の醜態についてはフォローがなかったそうな。
「なっ、君は、同じようにバカにされた事があって、一緒に見返してやろうって!」
「ププッ、そんな作り話、信じちゃったんですか?」
だんだんと王子様がかわいそうになってきた。
しかしあいつらひどすぎじゃね? ちょっと腹が立ってきた。
「おい、そこのドラゴンスレイヤー」
誰だよオレのドラスレをバカにする奴は。ドスンといくんぞ、ドスンと。
「助かりたいか?」
そう言って、赤黒いチョーカーを投げつけてくる。
これは……奴隷契約の?
「この転移魔方陣は一方通行だ。こちらからそっちへは行けるが、そちらからこちらへは来られない」
頑張れば歩いて帰って来られない距離ではないが、その間にいるモンスターを二人でなんとか出来るかな。と、別の兵士がニヤニヤしながら言ってくる。
「これを付けたら迎えに来てくれたりするのでしょうかね」
「いいや、お前についてはその必要がない。二年前、王宮に来た時に鎖を繋げさせてもらった」
そう言って一つの輪っかの様な物を取り出す。
「この魔道具は特定の人物を即座に呼び寄せる事が出来る。即ち、私の意思で、いつでもお前をここへ呼び寄せることが可能だということだ」
なるほど、ソレを使って、店から王宮まで呼び寄せた訳ですね。
つーかいつの間に。やっぱ王族は信用ならないな。
「女の方は不良品だったようですぐに切れてしまったようだがな」
それはたぶん、ラピスをカードに戻した時に解除されたんだろうな。
「その奴隷のチョーカーは特別品だ。ソレをしている限り、私の命令には逆らえなくなる。さあ、どうする」
これ見よがしに3枚のカードを見せつける。
「これが無ければ、お前も困った事になるだろう」
「………………」
オレは足元にあるチョーカーを拾い上げる。
そしてオレはそのチョーカーを――――付き返すのだった。
「なんの真似だね?」
「このチョーカーとそのカード、交換といきませんか?」
「そこに残ると?」
王子様が涙と鼻水に濡れた顔をオレに向けてくる。
汚いんでちょっと離れてくれませんかね?
えっ、こんな王子に?
「信じられないかな? だが、ボクには分かる。彼らが敵か味方か。その為のスキルをボクは持っているからね」
そのスキルの名も『危機察知・極』であるとか。
自分に対し、害意を抱いている者がいるとすぐに分かるんだとか。
しかし少々効果が強すぎで、実際の危機の時には恐怖で身が竦んで動けなくなるとか。
「なので、ボクは戦闘には役に立たないからあしからず」
うん、それはもう見た目ではっきりと分かっております。
オレは左右をがっしりとした兵士に押さえ込まれ、そのまま魔方陣のある部屋まで連れて行かれる。
「ちょっと、だからオレのカードは……」
「黙っていろ」
オレの背中に硬い物が押し当てられる。
ちょっと王子様、この方達、ほんとに味方なんでしょうか?
転移魔方陣の間はすでに発動状態の様で、その魔方陣は光り輝いている。
「さあ、王子こちらへ」
「うむ」
王子が魔方陣に乗り、続いてオレとオレを取り巻く兵士さんもそこに乗る。
その瞬間、オレと王子が魔方陣から蹴りだされた。
「なっ、なにを!?」
ああ、やっぱり味方じゃなかったようですね……
オレは周りを見渡す。
そこは先ほどまでの綺麗な王宮の部屋ではなく、血糊があちこちにこびりついて、壁も天井もボロボロになっている汚い部屋であった。
王子が慌てて魔方陣へ駆け寄る。
だが、その上に乗っている兵士達は蜃気楼のようにすり抜けてしまう。
「こっ、これはなんの真似だ!」
「バカな弟だ、手間が省けて良かったよ」
「なっ、ま、まさか……兄、上……そんなっ、ボクのスキルにはなにもっ!」
兵士さんの一人が顔に手を持っていき、指でトントンと頬を叩く。
「仮面だよ、感情を封鎖する仮面。だからお前の危機察知にひっかからないんだよ」
「そ、そんな物が!?」
「そもそも、おかしいと思わなかったのか? 国でも一、二を競う兵士達がお前に肩入れするなど」
「ほんとにめでたい王子様だな。あのような無様な様を晒しておきながら、王となろうとするなど」
なんでもこの王子様、危機察知のスキルで食事に毒物が入っている事を事前に気づいたのだが、恐怖で色々出てしまったらしい。
しかもその場が、長女の成人の儀で、各国の重鎮を招いた場であったそうな。
食事の毒物に付いては秘密裏に処理されたのだが、王子の醜態についてはフォローがなかったそうな。
「なっ、君は、同じようにバカにされた事があって、一緒に見返してやろうって!」
「ププッ、そんな作り話、信じちゃったんですか?」
だんだんと王子様がかわいそうになってきた。
しかしあいつらひどすぎじゃね? ちょっと腹が立ってきた。
「おい、そこのドラゴンスレイヤー」
誰だよオレのドラスレをバカにする奴は。ドスンといくんぞ、ドスンと。
「助かりたいか?」
そう言って、赤黒いチョーカーを投げつけてくる。
これは……奴隷契約の?
「この転移魔方陣は一方通行だ。こちらからそっちへは行けるが、そちらからこちらへは来られない」
頑張れば歩いて帰って来られない距離ではないが、その間にいるモンスターを二人でなんとか出来るかな。と、別の兵士がニヤニヤしながら言ってくる。
「これを付けたら迎えに来てくれたりするのでしょうかね」
「いいや、お前についてはその必要がない。二年前、王宮に来た時に鎖を繋げさせてもらった」
そう言って一つの輪っかの様な物を取り出す。
「この魔道具は特定の人物を即座に呼び寄せる事が出来る。即ち、私の意思で、いつでもお前をここへ呼び寄せることが可能だということだ」
なるほど、ソレを使って、店から王宮まで呼び寄せた訳ですね。
つーかいつの間に。やっぱ王族は信用ならないな。
「女の方は不良品だったようですぐに切れてしまったようだがな」
それはたぶん、ラピスをカードに戻した時に解除されたんだろうな。
「その奴隷のチョーカーは特別品だ。ソレをしている限り、私の命令には逆らえなくなる。さあ、どうする」
これ見よがしに3枚のカードを見せつける。
「これが無ければ、お前も困った事になるだろう」
「………………」
オレは足元にあるチョーカーを拾い上げる。
そしてオレはそのチョーカーを――――付き返すのだった。
「なんの真似だね?」
「このチョーカーとそのカード、交換といきませんか?」
「そこに残ると?」
王子様が涙と鼻水に濡れた顔をオレに向けてくる。
汚いんでちょっと離れてくれませんかね?
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