28 / 279
第二章
レベル28
しおりを挟む
「た、たった一日でこんなに……」
「この調子で一週間稼げれば……いっきに数か月分の稼ぎになるッスよ!」
「カシュアのレベルも順調に上がっていますからね。この調子なら最終日にはこの倍は硬いでしょうね」
「マジっすか!」
さすがはトリプルSなアンデッドタウン。出るわ出るわ、ワラワラと。
そんなアンデッドが落とす魔石と言う奴が、結構な高値で売れる。
ちょっと素早そうな奴はラピスが片付けて、弱そうな奴から順にカシュアの正面に誘導する。
最初は薪割り機がごとく、ただ振り下ろすだけだったカシュアも、徐々にスキルの使い方に慣れてきたのか、後半は積極的に攻撃に参加していた。
さすがはアンデッド特効だけあり、次々と現れるゾンビやガイコツを打ち倒していく。
良く見てみると、剣が触れた場所が光の粒子になって消えていっている。
まさしくバターを切るがごとし、だな。
そんなカシュア、有頂天になってオレの肩を叩いてくる。
「見ててくれたかね、ボクの勇姿を! ん、そういえば今日は君の勇姿を見かけなかったかな? まあいい、君の分までボクが稼いで見せようじゃないか!」
ウザッ。
一応オレだって、迂回して3人娘に向かって来てた奴を始末してたよ!
「そうか、そうだな……じゃあ明日は今日の倍はお願いしようかな」
「えっ?」
オレの分まで稼いでくれるんだろ? だったら倍はいかないとな。
「そうですね……倍々目指しましょうか。明日はもうちょっと奥まで行って……後、3匹は同時でも大丈夫ですよね」
「ええっ!?」
無理ムリムリ! 絶対ムリ! って涙目でラピスに縋り付くプリンセス。
まあ、倍は冗談だけど、今日の終わりぐらいのペースで最初から行けば、かなり稼げるとは思うな。
「ちょっとちょっと、先ほどの事は謝るから、ラピス君を止めてくれないかな?」
いや、さすがにラピスも倍々は冗談だろ?
「彼女が冗談を言うと? アレは本気の目じゃないかね!?」
「まあ、ラピスがやれるって言うんならやれるんじゃないかな?」
「そこにボクの無事は入っているのかな?」
ないんじゃない?
「お前にいい言葉を授けようではないか」
「おおっ!」
「口は災いの元」
そんなぁって膝から崩れ落ちるプリンセス。まあ、頑張れ。
「それにしても、相変わらず脆い家屋だな。もしかしてまだコアが転がっているのか?」
「さすがにそれはないかと。でも、どこか排水路にでも落ちたのかもしれませんね」
王様骸骨に恨まれていそうだなぁ。
なるべく王城には近づかないようにしよう。
そんなこんなで一週間、稼ぎに稼ぎまわって、さあ帰ろうかってなった日の事だ。
「…………少し、話があります」
3人娘が深刻そうな顔をしてオレの元に集まる。
「アポロ、そんなに急がなくても」
「大事な事、スキルあれば、もっと強くなれる」
珍しくアポロが饒舌だな。
普段はめったにしゃべらないんだが。
「…………サヤラ、お願い」
でも説明はサヤラに頼むんだね。
サヤラは一つため息を付いた後、観念したような表情になる。
「まずは、私達の置かれた立場から説明させてもらいます。いいよね、アポロ」
「…………クイーズは信用できる」
まあ、なんとなく想像は付くけどな。
ティニーはまあ、普通だが、残りの二人が異常である。
一人は希少なスキル持ち、もう一人は金持ちが使う特殊な武器。そしてそれの製造方法を知っている。
「私達、というより、アポロが……元は貴族だったんです」
スキルは遺伝する。
いやスキル自体ではなく、スキルを持って生まれてくる可能性がだ。
スキル持ちの子は大抵スキル持ち。
レアスキル持ちの子はレアスキルを持って生まれやすい。
即ち、貴族のような裕福な人間は、そういったスキル持ちを伴侶として選ぶ事が多い。
必然、貴族の子はかなりの確率でスキルを持って生まれて来る事になる。
平民からレアスキルが出るのはめったにない。
アポロが貴族であろうことはその面からも大体想像はついていた。
それは気づいていた、だが、サヤラの語る言葉は思ったよりオレに衝撃を与えるものであった。
「アポロは元々、この国と敵対する、隣国の小さな辺境の領主だったのです」
ほうほう、この国と敵対する隣国とな……嫌な予感がしてきた。
「それがその国では数年前に政変がありまして」
なんでも、お国のトップレベルの偉い貴族様が王家を巻き込んで問題を起こしたらしい。
そしてその問題を起こした偉い貴族の長男が失脚する事になり、その弟が跡を継ぐことが決まったのだが。
それまで長男の取り巻きをしていた連中が、スワッこりゃまずいってごとき、弟の取り巻きに鞍替えしたそうな。
で、それまで弟の取り巻きをしていた連中を、あれやこれやの政略で追い落としていったらしい。
中には、無実の罪を着せられて辺境に飛ばされた貴族も居たとのこと。
で、そんな辺境に飛ばされた貴族にとっては災難ではあるが、それよりももっと災難な連中が居る。
それは、元々その辺境を治めていた貴族だ。
玉突き状態で領主の身を追われ、平民に落とされたりしたようなのだ。
で、その平民に落とされた貴族っていうのが……
「アポロの両親なのです」
「この調子で一週間稼げれば……いっきに数か月分の稼ぎになるッスよ!」
「カシュアのレベルも順調に上がっていますからね。この調子なら最終日にはこの倍は硬いでしょうね」
「マジっすか!」
さすがはトリプルSなアンデッドタウン。出るわ出るわ、ワラワラと。
そんなアンデッドが落とす魔石と言う奴が、結構な高値で売れる。
ちょっと素早そうな奴はラピスが片付けて、弱そうな奴から順にカシュアの正面に誘導する。
最初は薪割り機がごとく、ただ振り下ろすだけだったカシュアも、徐々にスキルの使い方に慣れてきたのか、後半は積極的に攻撃に参加していた。
さすがはアンデッド特効だけあり、次々と現れるゾンビやガイコツを打ち倒していく。
良く見てみると、剣が触れた場所が光の粒子になって消えていっている。
まさしくバターを切るがごとし、だな。
そんなカシュア、有頂天になってオレの肩を叩いてくる。
「見ててくれたかね、ボクの勇姿を! ん、そういえば今日は君の勇姿を見かけなかったかな? まあいい、君の分までボクが稼いで見せようじゃないか!」
ウザッ。
一応オレだって、迂回して3人娘に向かって来てた奴を始末してたよ!
「そうか、そうだな……じゃあ明日は今日の倍はお願いしようかな」
「えっ?」
オレの分まで稼いでくれるんだろ? だったら倍はいかないとな。
「そうですね……倍々目指しましょうか。明日はもうちょっと奥まで行って……後、3匹は同時でも大丈夫ですよね」
「ええっ!?」
無理ムリムリ! 絶対ムリ! って涙目でラピスに縋り付くプリンセス。
まあ、倍は冗談だけど、今日の終わりぐらいのペースで最初から行けば、かなり稼げるとは思うな。
「ちょっとちょっと、先ほどの事は謝るから、ラピス君を止めてくれないかな?」
いや、さすがにラピスも倍々は冗談だろ?
「彼女が冗談を言うと? アレは本気の目じゃないかね!?」
「まあ、ラピスがやれるって言うんならやれるんじゃないかな?」
「そこにボクの無事は入っているのかな?」
ないんじゃない?
「お前にいい言葉を授けようではないか」
「おおっ!」
「口は災いの元」
そんなぁって膝から崩れ落ちるプリンセス。まあ、頑張れ。
「それにしても、相変わらず脆い家屋だな。もしかしてまだコアが転がっているのか?」
「さすがにそれはないかと。でも、どこか排水路にでも落ちたのかもしれませんね」
王様骸骨に恨まれていそうだなぁ。
なるべく王城には近づかないようにしよう。
そんなこんなで一週間、稼ぎに稼ぎまわって、さあ帰ろうかってなった日の事だ。
「…………少し、話があります」
3人娘が深刻そうな顔をしてオレの元に集まる。
「アポロ、そんなに急がなくても」
「大事な事、スキルあれば、もっと強くなれる」
珍しくアポロが饒舌だな。
普段はめったにしゃべらないんだが。
「…………サヤラ、お願い」
でも説明はサヤラに頼むんだね。
サヤラは一つため息を付いた後、観念したような表情になる。
「まずは、私達の置かれた立場から説明させてもらいます。いいよね、アポロ」
「…………クイーズは信用できる」
まあ、なんとなく想像は付くけどな。
ティニーはまあ、普通だが、残りの二人が異常である。
一人は希少なスキル持ち、もう一人は金持ちが使う特殊な武器。そしてそれの製造方法を知っている。
「私達、というより、アポロが……元は貴族だったんです」
スキルは遺伝する。
いやスキル自体ではなく、スキルを持って生まれてくる可能性がだ。
スキル持ちの子は大抵スキル持ち。
レアスキル持ちの子はレアスキルを持って生まれやすい。
即ち、貴族のような裕福な人間は、そういったスキル持ちを伴侶として選ぶ事が多い。
必然、貴族の子はかなりの確率でスキルを持って生まれて来る事になる。
平民からレアスキルが出るのはめったにない。
アポロが貴族であろうことはその面からも大体想像はついていた。
それは気づいていた、だが、サヤラの語る言葉は思ったよりオレに衝撃を与えるものであった。
「アポロは元々、この国と敵対する、隣国の小さな辺境の領主だったのです」
ほうほう、この国と敵対する隣国とな……嫌な予感がしてきた。
「それがその国では数年前に政変がありまして」
なんでも、お国のトップレベルの偉い貴族様が王家を巻き込んで問題を起こしたらしい。
そしてその問題を起こした偉い貴族の長男が失脚する事になり、その弟が跡を継ぐことが決まったのだが。
それまで長男の取り巻きをしていた連中が、スワッこりゃまずいってごとき、弟の取り巻きに鞍替えしたそうな。
で、それまで弟の取り巻きをしていた連中を、あれやこれやの政略で追い落としていったらしい。
中には、無実の罪を着せられて辺境に飛ばされた貴族も居たとのこと。
で、そんな辺境に飛ばされた貴族にとっては災難ではあるが、それよりももっと災難な連中が居る。
それは、元々その辺境を治めていた貴族だ。
玉突き状態で領主の身を追われ、平民に落とされたりしたようなのだ。
で、その平民に落とされた貴族っていうのが……
「アポロの両親なのです」
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる