『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらエロいお姉さんになりました。

ぬこぬっくぬこ

文字の大きさ
34 / 279
第二章

レベル34 大神殿オクタバレス

しおりを挟む
 アポロが驚いたような、まん丸な目で二人を見送る
 そして振り返ってオレをジッと見つめてきた。
 オレはそんなアポロの頭に手を当てる。

「包帯を、はずしてみてもらえないか?」

 フルフルと首を振るアポロ。
 しかし、だいぶ考えこんだ後、ゆっくりと包帯をはずしていく。
 その包帯が外れた後は……痛々しいほどの傷跡が残っている。
 オレはそっとその傷跡に触れる。

 ビクンッとアポロが震える。

「別に隠さなくたっていい。この傷は二人の為に付いたものだろう」

 アポロ達が持っていた資金は、あの二人のスキル開放の為のお金だ。
 そして、アポロ自身の武器なんて知れている。
 きっとアポロは、あの二人の為に必死の抵抗をしたのだろう。

「傷は男の勲章だって言う奴がいる。でもそれは少し違う。誰かの為に負った傷は、男だろうが女だろうが関係ない、隠す必要のない誇りある勲章なんだ」
「…………クイーズ」

 やっとしゃべってくれたな。
 ウルウルと目に涙を湛えてオレを見上げてくる。
 その時だった。

「あらあら、女の子なのに顔に傷なんてつけちゃって。もっと自分を大切にしなくちゃダメですよ」

 突然現れた女性がアポロの顔に手を当てる。
 そしてその手が離れた後は、傷一つ無い、かわいいアポロの顔が、そこにはあった。

「えっ、……?」

 アポロはまだ何がおこったのか分かっていない。
 オレの驚く顔を見てなにかを察したぐらいだ。

「あなたは……?」
「フフッ、君が史上最年少のドラゴンスレイヤーちゃんね。お噂は予予伺っています、本日は二人も同時にスキル解放の料金をありがとうございます」

 そう言って頭を下げてくる。
 いやいや、こちらこそ受けていただいてありがとうございます。
 オレも慌てて頭を下げる。

 しかし、あのドラスレ、こんなとこまで噂が広がっていたのか。まさしく黄金看板だな。もう誰にも(笑)なんて言わせはしない!

「あ、あの、今、アポロの傷を……」
「フフッ、これはサービスです。今後とも当神殿をご贔屓にお願い致しますわ」

 そう言って微笑む妙齢の女性。
 しちゃうしちゃう! ご贔屓にしちゃう! ありがとうございます!
 オレは再び頭を下げる。

 それでは私は仕事がありますので、と言って去って行く。

 カッケー!
 名も告げず、サッと人助けをして去って行く!
 なんたるヒーロー!

 オレ、ファンになっちゃいます!

「…………あの、クイーズ?」
「治ったんだよ! アポロのその顔の傷が!」
「えっ!?」

 アポロは急いで中庭の噴水に駆け寄る。
 そして溜まっている水に顔を映し……

「…………ほんとに……治って」

 そのまま涙を零しながら小さく嗚咽を漏らす。
 オレはそんなアポロの頭をそっと優しくなでる。

「良かったな」
「……うん、うん……あ、お礼」

 お礼はちゃんとオレが言っといたから。またここに来る事もあるだろう、その時でも改めてお礼を言うといいよ。

「……うん」

 暫くして、神殿から二人が出てくる。
 そしてアポロの顔を驚愕の表情で見る二人。
 思わず駆け寄ってきて、三人抱き合って泣き出す始末。

 オレがもの凄く不信がられて見られている。
 えっ、オレが泣かしている事になってるの?
 あっ、ちょっと待って、通報するのはカンベンしてください。

 あっ、衛兵さんがやって来た。
 マジ通報したのか!?
 違う! オレはやってない! え? 泣いてる原因は誰が作ったかだって、あ、オレかもしれない?
 ちょー! ちがー! そういう意味じゃないッスー!

 どうやら、からかわれていたようで、神殿でスキルを貰ってああやって泣く人は結構いるんだとか。
 そうならそうと言ってくださいよ、もう。

「ところでスキルはなんだったんだ?」
「あ、そうだ! 二人とも凄いのが出ましたよ!」

 ほうほう。

「まず私、なんと、この銃剣にもっともふさわしいスキル、その名も……」

『弾丸練成!』

 ポロポロポロって、サヤラの目の前にいくつもの弾丸が精製される。
 おおっ、こりゃすげえ。これで撃ち放題じゃないか!
 サヤラの武器の弱点は弾切れがある、そしてその弾を作るのが大変である、という2点。
 それさえ無ければ、飛び道具としては最高の性能である。

 ん? でもこの弾丸なんか違って……

「次にうちッス! ちょっと地味だけど、これがあるとないのでは大きな違いになるっす!」

『必中!』

 ティニーが矢を放つ、その矢は狙いたがわす、ヒラヒラと落ちる一枚の葉っぱを貫く。
 おおっ、凄いじゃないか!
 必中とは、飛び道具の飛距離が許す限り、必ず命中させる事が出来る。
 ただし、スキルが軌道に影響する所以か、威力は低下するらしい。

「威力に付いては……解決済みッス」
「私が練成で魔法銃の弾が作れるなら、ティニーの分まで用意が出来ますから」

 なるほど。弓よりも威力の有る魔法銃に持ち代える訳か。
 必中のスキルを発動すれば、熟練を要すると言われる魔法銃もなんなく当てる事が出来ると。

「あれ? これ……私の魔法銃の弾丸と違う?」

 ふと、地面に落ちた弾丸を拾ったサヤラが呟く。
 その手にあったものは――――鈍色に輝く細長い――ライフルの鉄の弾丸であった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...